940-。この数字は2020年、福岡県内で殺処分されたネコの数だ。そのうち600匹余りは、生まれて間もなかったという。不幸なネコを減らすために活動するボランティア団体を取材した。

野良ネコの捕獲作業に日々奮闘

福岡・糸島市内で行われた野良ネコの捕獲作業。捕獲にあたっていたのは、糸島市内でTNR活動を行うボランティア団体「イトネコ」のスタッフだ。

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TNR(トラップ=捕獲 ニューター=不妊手術 リターン=戻す)とは、安全に捕獲したうえで不妊去勢手術を施し元の場所に戻すこと。繁殖するのを防ぎ、将来的に殺処分される野良ネコを減らす目的で行われている。

秋に生まれたネコが大きくなるこの時期は特に依頼が多く、毎日のように捕獲に出かけているという。「にゃぅん、にゃぅん」と力なく鳴く子ネコに「あんまり鳴かないで。あんまり鳴かないで」とスタッフが語りかける。

この日、イトネコの代表、波多江さんたちは糸島市市内にある住宅に訪れた。敷地内には10匹以上のネコがたむろしていた。

捕獲は「野良ネコに餌をあげていたら、いつのまにか増えてしまった」との住民からの相談がきっかけだった。

「イトネコ」・波多江暁美代表:
捕獲に、1日から4日はかかったりしますね。最後のネコはもう警戒心だらけなので。

この日、1時間ほどで捕まえたのは9匹。ネコたちが繁殖しないよう去勢手術を行い、数日後にはこの場所に戻す。

「イトネコ」・波多江暁美代表:
捕獲したときに、ケガしている子とか、弱っている子とか、治療のためにこちらに預かって医療にかけます。

春はネコの出産時期

波多江さんは4年前からTNR活動を開始。空き家を改築したこの施設でケガや病気などで弱った野良ネコを保護し、里親探しも行っている。

「イトネコ」・波多江暁美代表:
この子も骨折してたし、10カ所くらいの炎症が皮膚にできる状態で栄養不足だったので、治療を開始して、いま、元気になっています。尻尾も切りました。ちょっと腐っていたので。

イトネコが保護している野良ネコの多くは、もともと家庭で飼われていたネコ。過酷な外の環境で暮らすことができず、ひどい状態で保護することも多いと話す。

「イトネコ」・波多江暁美代表:
外で暮らすネコは病気になったりとか、事故で亡くなったりとかするので、全てのネコを家の中で暮らせるようにしていきたいけど、糸島のいまの現状でこういった野良ネコ、飼い主のいないネコがとても多いので追いつかないんですよ。

2023年、年末までにイトネコに寄せられた野良ネコの捕獲依頼は120匹以上。波多江さんは、2月末までに全てのネコの手術を終えたいとしている。

その理由が、春の出産シーズンに入ってしまうこと。波多江さんは「春にはネコちゃんも出産時期になり、もう子ネコが生まれるので、それまでに、いまの時期に手術しないとまずい」と話す。

福岡県のネコの殺処分数は、子ネコが大半を占めていて、できるだけそのリスクを減らしたいと波多江さんは思っている。

年に2~3回出産できるほどの高い繁殖能力を持つネコ
年に2~3回出産できるほどの高い繁殖能力を持つネコ

ネコは繁殖能力がとても高い動物で、年に2~3回出産できるうえ、1回に4~8匹の子どもを生む。交尾すれば、ほぼ100%妊娠し、メスは生後4~12カ月で繁殖できるようになる。エサをあげるだけで不妊去勢をしないと、ネコは爆発的に増えてしまうのだ。

不妊手術費用 メス1匹1万5000円

「これ以上不幸な猫を増やしたくない」という思いが募る一方で、イトネコのスタッフたちを悩ませているのが費用の問題だ。

「イトネコ」・波多江暁美代表:
9匹で、20万円いくかいかないかくらいですかね。

野良ネコの不妊去勢手術の費用は、一般的にオスが1万円、メスが1万5,000円ほど。依頼がきているネコ、約120匹全てを手術すると、費用は150万円を超える。

「イトネコ」・波多江暁美代表:
自費で出費したりしている状況です。働いたお金のほとんどは活動に投資しちゃっているので、この時点でボランティアじゃなくなってきていますよね。依頼者が、「自分はお金がないから餌だけやる」っていう人もいますし。

野良ネコの不妊去勢の費用をめぐっては、福岡市や北九州市などでは支援が行われているが、福岡県内の多くの自治体では、財源の問題からそれも難しいのが現実だ。

“ネコグッズ”で不幸なネコの助けに

イトネコでは、手術費用や保護費を賄うため寄付を募っているほか、こんな取り組みも行っている。

訪れたのは、糸島市内にあるコンテナショップ。ネコをモチーフにした雑貨を販売している。その名も「猫助けの雑貨店 イトネコ」だ。名前の通り、売り上げの一部を活動費に充てている。

売り上げの一部を活動費に
売り上げの一部を活動費に

店での活動に賛同して商品を購入してくれる人も増えているが、不幸なネコを増やさないようにするには、まだまだ足りないという。

「イトネコ」・波多江暁美代表:
イトネコの出費だけでも60万以上かかってるんですよ。予算がオーバーしてしまっている状況。何とか「野良ネコを増やさないようにしたい」という気持ちで取り組んでいます。

環境省によると「猫は人間によって自然から切り離され、人と暮らすように変えられた動物で、野生で生きることはできない」という。だから波多江さんは「人が責任を持って世話、管理しなければ」と話す。

不幸な猫を増やさないための取り組みが進められている。

(テレビ西日本)

テレビ西日本
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