福岡県内に2頭しかいないゾウ「サリー」と「ラン」。実は10年余り前に大げんかし、“不仲のゾウ”として取り上げられていた。現在、2頭のゾウの仲はどうなっているのか?取材した。

福岡・北九州市の“不仲”なゾウ

2023年12月、福岡市の高島市長は記者会見で、福岡市動物園へのアジアゾウの受け入れを発表した。2024年の春、ミャンマー・ヤンゴンから4頭がやってくることが予定されていて、福岡市民の誰もが楽しみに待っている。

ゾウが福岡市に来ることに期待が高まりつつあるが、現在、福岡県内でゾウを見ることができる唯一の場所が、北九州市小倉北区の「到津の森公園」だ。

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1979年、到津の森公園の前身である「到津遊園」時代に、スリランカから2頭のゾウ「サリー」と「ラン」が贈られた。

取材班が、到津の森公園のゾウの歴史について調べていると気になる項目を見つけた。

テレビ西日本が2013年に放送したニュースに「不仲のゾウ、その理由」というタイトルがあった。早速、当時のオンエアを確認してみたところ、「こちらの動物公園では、30年以上にわたり仲の良い2頭のゾウが評判を呼んでいました。しかし現在は1頭の姿しか見ることはできません」とのリポートがあった。どういうことなのか?

2013年当時のニュース原稿
不仲のゾウ その理由
去年(2012年)秋、飼育係の男性が展示場から2メートル下の堀に転落したサリーを発見。自力で堀に入ったとは考えられず、ランが突き落としたとみられています

ニュースは、サリーとランが大げんかし、お互いを傷つけあったため、飼育を別々にするようになったというものだった。当時の関係者による分析では、1歳年上のサリーが体調を崩したのを機に年下のランが「立場の逆転を狙った」とみられている。

あれから約10年…2頭のゾウのいま

放送から10年余りたつが、「いまも仲が悪いままだ」という噂があり、取材班は到津の森公園へ向かった。
レッサーパンダやプレーリードッグなど、かわいらしい動物を通り抜けていった先にいたゾウは…、1頭のみだった。

案内板によると、サリーとランの2頭が交代で出ていると記されていた。2頭のけんかはいまも続いたままなのか?
取材班は、到津の森公園に2年間、毎日訪れ、園内の動物は何でも知っているという男性にゾウの件について聞いてみた。

「到津の森公園」に毎日訪れる男性:
Q.以前、2頭のゾウがけんかしたのは知っていた?)それは…、えっ、けんかしたんですか!?

男性は、2頭のゾウがけんかした事実を知らなかった。それどころか、男性は「きょうは1頭しか出てない。2頭、出る時もあるでしょう」と証言した。
取材班が「10年以上、喧嘩して2頭は一緒に出てないんですよ」と説明すると、男性は「いやいや、いやいや、2頭一緒に出てますって!」と力説。2頭のゾウが運動場に同時に出ているのを見たことがあるというのだ。

結局どっち?飼育員さんに聞いてみた

「2頭、別々」と案内には書かれていたが、いったいどちらが正しいのか?

「到津の森公園」ゾウ担当飼育員の森田有貴さんは「いまの距離感だと2頭が保ちあって仲良くできてるなと思います」と話す。

実は、当時と比べると2頭の関係は良好になっているという。一方で、それぞれ現在は高齢になり、仮にまたけんかをしてけがを負ってしまうと命にかかわるため、念のために別々で行動させているという。

バックヤードにいるゾウを撮影させてもらうと、サリーがランに鼻を絡ませながらじゃれあっていた。仲の良さは確認できたが、2頭一緒に出ている件については…。

「到津の森公園」ゾウ担当飼育員・森田有貴さん:
2頭出てるのを見たことがある人がいる?ああ、あのおじさん。それは、朝一番の9時30分から10時までの間は、運動場で健康チェックがあるんですけど

仲の良い2頭を同時に見られるタイミングは存在していた。30分という限られた時間だが、飼育員立ち会いのもと行われる健康チェックの間は見ることができる状態なのだ。そのトレーニング中に撮られた写真には、2頭が仲むつまじく並んでいた。

「到津の森公園」ゾウ担当飼育員の森田さんは、「いまの距離感で、安心して暮らせているのかなと思います。2頭とも、もう高齢になってきたので飼育環境もサポートの仕方も2頭に合わせて高齢化のケアをしていきたい」と語った。

ゾウの寿命は70年ほどといわれている。サリーとランは現在40代後半で、あと20年ほどは元気な姿を見ることができる。一度けんかをしてしまった2頭だが、時がそれぞれのわだかまりを溶かしたのかもしれない。
きょうも2頭は、来園客に笑顔を届けている。

(テレビ西日本)

テレビ西日本
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