北海道函館市の名物「スルメイカ」が取れなくなっている。
年々不漁が深刻化していたが、取扱量はついに過去最低を更新。
関係者の模索が始まっている。
愛される函館名物「スルメイカ」
北海道屈指の観光地・函館市。

訪れた人が楽しみにしているもののひとつが。
「こんな新鮮なイカは食べたことない。うまいの一言です」(観光客)

「イカも食べられて、イカも釣れて最高です」(観光客)
「スルメイカ」は観光客にも地元の人にも幅広い世代にわたって愛され続けている。
しかし、この函館名物が大ピンチなのだ。
記録的な不漁 スルメイカが大ピンチ
「(取扱量が)過去最低を更新し、大変厳しい状況になりました」(函館魚市場 平松伸孝 取締役営業部長)
スルメイカ漁は毎年6月から年をまたいで1月まで行われるが、今シーズンの取扱量は317トンにまで落ち込むことが発表された。

統計を始めた2005年以降過去最低で、これまでの最低記録だった2020年の436トンを大幅に下回った。
ピークは2008年の8924トン。
その後、急激に減少の一途をたどり、2023年シーズンの取扱量はピーク時の3%余りに。

「皆さん、加工屋さんから何から大変厳しい状況になっています。毎年回復してほしいなと思いながら、どんどん減っていってしまっていますからこれが急激に回復するのは考えられないと思います」(平松 取締役)
市は補助金制度を導入
記録的な不漁に大泉潤 函館市長は。

「イカの不漁が水産加工の事業者の方にも大変影響を与えている。とにかく支援の必要性を強く認識している」(函館市 大泉潤市長)
函館市ではスルメイカを扱う水産加工業者を対象に2018年度から「魚種転換支援事業補助金」制度を導入している。
加工業者がイカ以外の原料で商品を作る場合、設備投資に最大500万円までの助成が受けられるのだ。

補助金制度を利用した函館市内の加工場「ミキヤ」。

5年前に市の補助金制度を利用し「高速裁断機」を導入した。
新商品のエイヒレ
新商品として選んだのは、エイヒレ。

「リスクヘッジの観点からエイヒレに挑戦。エイヒレを焼いて裁断してという取引先や社長からのお話しをいただいていて、函館市の制度導入のタイミングだったので」(ミキヤ 芳村進 社長)

完成したのは、エイヒレジャーキー。

スーパーやドラッグストア、居酒屋などを中心に出荷し、この5年間で累計約5000万円を売り上げるヒット商品になった。
それでも店の主力商品は現在もスルメイカで作ったあたりめ。

函館でスルメイカがとれなくなり、高い原料に頼らざるを得ない。

「(加工された)北海道産のスルメイカの原料が(10年前)1キロ1500円くらいだったんですよ。いま6000円超えましたからね」(芳村 社長)
「北海道産」へのこだわり
北海道産のスルメイカはこの10年で価格が約4倍に跳ね上がったが、商品の値上げは出来るだけ抑え、あくまで北海道産のイカにこだわる。
そのワケを聞いた。
「おいしいあたりめを食べたいという消費者ニーズはやはりあるんですよ。そして原料が高騰しているから今まで100円を150円にしますって勝手ですよね。手に取っていただける価格帯で提供するのがメーカーの務めなので」(芳村 社長)
ようやく軌道に乗り始めたエイヒレジャーキーも今後、原料の調達が安定的に続けられるのか、不透明になってきたという。

「ここ1、2年、エイヒレも厳しくなってきている。いま国内ではエイヒレの原料、取り合いが始まっています。だからこれから先、どういうふうに世の中が流れていくかが分からない」(芳村 社長)
「ヤマメ」に注目で活路を模索
函館市でイカの塩辛などを製造している創業110年の老舗「小田島水産食品」。

不漁の影響で一部商品は値上げを余儀なくされた。
注目したのは、ヤマメ。

2023年12月、北大大学院水産科学研究院が工場の一角で養殖を始めた。
「(Q:スルメイカが取れないから?)それもあります。そういうので、養殖というのも大切」(小田島水産食品 小田島隆 代表取締役)
北大大学院は独自で開発したシミュレーション技術で、ヤマメに適したエサの量や水温などを研究し、収益性の高い養殖方法を探っている。

「ヤマメは大きくなると、サクラマス。研究の第一歩なので将来的にも養殖漁業が確立されれば、水産関係にもプラスになるとのではと思う。これからですね」(小田島 代表取締役)
スルメイカの不漁で名物を失いつつある函館市。
海の街の試行錯誤が続いている。