少子化や教員の働き方改革も加わり、中学や高校の部活動に変化の波が押し寄せている。
 

そこで、学校と指導者をつなぐ新たな取り組みが注目されている。
 

部活動指導に変化の波

札幌市南区の市立札幌啓北商業高校バドミントン部。
 

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練習は、基本週5日。
 

日曜日も顧問の教員が指導に臨む。
 

「休日部活動となると半日という形になるがそれは勤務になるので」(市立札幌啓北商業高校 バドミントン部 三谷 俊介 顧問)
 

休日返上で体育館に立つ顧問歴7年の三谷先生は、普段は「商業」を教える傍ら、バドミントン部の練習メニューも考える日々。
 

競技経験があり、指導にも力が入る。
 

「生徒も部活動を一生懸命やっているので、なるべく指導できるように、空き時間を利用しながら仕事をこなしている」(三谷さん)
 

部活動の顧問は教員にとって“負担”にも

ただ、部活にかかわるすべての教員が競技経験があるわけではない。
 

「元々バレーやっていた。専門的な指導できないのは、つらいといえばつらい」(啓北商業高校 バドミントン部 網谷 和彦 副顧問)
 

札幌市教育委員会の2023年7月の調査で、部活動の顧問を「負担に思うことがある」と答えた中学校教職員は全体の9割にのぼった。
 

理由として「平日の勤務時間を超えた活動」、「休日の活動や引率業務」が最も多く、「専門知識や指導技術の不足」などもあがっている。
 

これに廃部も加わり、部活の選択肢も減少傾向にあるのが現状だ。
 

この状況に保護者は。
 

「先生が忙しいのはわかるけど、子どもの気持ちもわかる。(こどもが)制限されるのはかわいそう」(保護者)
 

「先生が長時間働くのはかわいそう。“外部コーチ”を呼ぶなどしてほしい」(保護者)
 

部活動の“地域移行”を目指す札幌市

そこで、札幌市が目指しているのは、中学の部活動を教員以外の人が指導する「地域移行」だ。
 

この高校では、学校と外部指導者をつなげるシステムの実証実験として、2022年秋から半年間、北海道内のトップ選手による指導や練習試合を取り入れた。
 

生徒の評判は。
 

「全然やったことのないメニューばかりだった。楽しみながら、プロの技術を間近で学べて勉強になった」(参加した生徒)
 

「プロの方と練習してきたことが、まず自分の自信につながった」(参加した生徒)
 

「技術面だけじゃなく、プレー中での考え方や学校の練習でわからないことなどをプロに教えてもらい考え方の幅が広がった」(参加した生徒)
 

強くなりたいという生徒の満足度が高まったことに加え、教員の負担も軽減されたと言う。
 

「平日に来ていただいた時は、自分の業務に専念でき、安心して業務に取りかかれたので、すごく助かった。専門外の先生の負担と考えると、外部の人が来てくれるのは負担軽減になる」(三谷さん)
 

札幌のスタートアップ企業がシステムを開発

このシステムを開発したのが、札幌のスタートアップ企業「BUKARU」だ。
 

プロスポーツ選手のパーソナルトレーナーやスポーツジムを経営する代表の森田敦さん。
 

きっかけは「部活動の指導が忙しく子どもとの時間が持てない」という中学校教員の友人からの相談だった。
 

「学校の先生のこの課題はすごく深刻だと思っていて、指導者と学校で困っている先生の部活動をマッチングできると思い開発した」(森田さん)
 

学校側はアプリで求める指導者像をオファー。
 

これに対し野球やサッカー、陸上など各分野で登録した選手や指導者をマッチングするシステムだ。
 

教員の負担を減らす一方、指導者を確保することで生徒にとっては部活の選択肢が増え、専門的な指導も受けられるメリットがある。
 

「(生徒は)モチベーションがあがって練習の雰囲気もがらっと変わった感じがした。勝利だけがすべてではないが、やはり指導者で生徒も変わる」(森田さん)
 

「社会課題」とも言える状況の解決につながるこの取り組みを札幌市は注目している。
 

「見ている先生がその部活動の知識が無かったり、時間拘束されているというのは大きな社会課題だと思っていたので、スタートアップの力を使ってその社会課題が解決できるのはすごく可能性を感じた」(札幌市 経済戦略推進部 中本 大和さん)
 

今後10年の方向性をまちづくり戦略ビジョンとして示している札幌市の秋元市長も、スタートアップ企業の後押しを進めている。
 

「(第二次まちづくり戦略ビジョンは)いろいろな人が力を発揮できる多様性や、人生100年時代の健康、先端技術を使っていろいろ便利にしていきましょうというマチを目指している計画。いわゆるスタートアップ企業を育てていく環境づくりに取り組んでいる。誰もがチャレンジできる街を目指していきたい」(秋元 克広 札幌市長)
 

今回の新たな取り組みで、学校の原点も垣間見えたようだ。
 

「生徒がやりたいと思ったことは実現させてあげるのが一つの教育だと思う。(教員側も)効率のいい働き方を模索する必要があると思う」(三谷さん)
 

生徒も教員も納得できる新しい部活動の環境作りに期待が高まる。
 

北海道文化放送
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