ウエイトリフティング日本代表「タンク村上」こと村上英士朗選手。これまでに日本記録を16度更新した日本一の重量挙げ選手が夢見る、初めてのオリンピックの舞台とオリンピアンの育成。2つの夢の実現へ、日本一の力持ちの今を追った。
「オリンピックの切符は世界で10枚」

太ももの太さは90センチ、体重135キロ。
強靭なフィジカルを戦車にたとえ「タンク村上」と呼ばれる富山市出身の村上英士朗選手(28)。
ウエイトリフティング日本代表 村上英士朗選手:
「一見地味に見えるけれど爽快感があって、気持ちよく持ち上がった時は場外ホームランみたいな感覚になるんですよね」
バーベルを頭の上まで一気に持ち上げる「スナッチ」と、一度肩まで引き上げ全身の反動で持ち上げる「クリーン&ジャーク」の2種目の合計で競うウエイトリフティング。
村上選手は、これまでに16回、日本新記録を樹立しているが、まだオリンピックの舞台には手が届いていない。

現在は、東京のナショナルトレーニングセンターを拠点に、1968年のメキシコオリンピック銅メダリスト三宅義行さんが監督、その娘で2012年のロンドンオリンピック銀メダリストの宏実さんがコーチを務めるチームで練習を重ねている。
ウエイトリフティング日本代表 村上英士朗選手:
「1つもミスがないようにしなくてはいけない。1%でも落ちたら記録がだいぶ違ってくる。跳躍力が重要になってくる。そのバネを出せるような練習をしなければ」
オリンピックの切符を掴むことができるのは、6試合の選考大会を終えた時点で、世界トップ10の記録を打ち立てること。

村上選手は、己の肉体を極限までどう使うか、とことん向き合っている。
「子どもたちが戦える場所を」
村上選手には、オリンピックのほかにもう1つ「夢」がある。
ウエイトリフティング日本代表 村上英士朗選手:
「これからウエイトリフティング場を作ろうと思いまして改築工事を行っています」

ウエイトリフティングは、重たいバーベルを床に落とすため専用の床材が必要で、競技ができる場所が限られている。父の協力のもと住宅を改装し、地元富山の選手が集える専用ジムを計画し、この冬に完成した。
通称「タンクジム」は、元日に発生した能登半島地震の影響はなく、年末年始はこの場所で地元の仲間たちと汗を流した。
ウエイトリフティング日本代表 村上英士朗選手:
「一番は地域の子どもたちが夢に向かって戦える場所を作りたいなって。富山のウエイトリフターコミュニティができて、やがてはオリンピックに出る選手が出たら良いなと思う」
「4年に1度の一瞬へ」」
村上選手は、12月にカタールで行われた選考大会では、今季自己ベストとなる413キロを上げ、世界12位につけている。
世界10位の記録は419キロ。村上選手が持つ日本記録は425キロ。決して届かない記録ではない。
村上選手に残されたチャンスは、2月3日にウズベキスタンで開幕するアジア選手権と4月にタイで行われるワールドカップの2試合。
ウエイトリフティング日本代表 村上英士朗選手:
「オリンピック出場、世界最強になる」
4年に1度の一瞬へ。タンク村上が初の夢舞台へ、己の限界に挑み続けている。
(富山テレビ)