小池都知事 ”オンライン選挙”で圧勝
東京都内の新型コロナウイルス新規感染者数が増え続け感染の収束が見えない中、私たちの代表を選ぶ「選挙」は「新しい日常」のなかでどうあるべきなのか。
街頭演説なし、個人の選挙事務所なし、オンラインのみ、「当選確実」の速報が流れたあとも「バンザイ」なし、という異例の選挙戦を展開した小池知事。
もちろん、現職の二期目は強い、と言われる首長選だがそれでも366万票獲得というのは小池知事本人も「望外」と言ったほどだ。

その小池知事オンライン選挙とはどういうものだったのか、数字で振りかえると
・You Tube 84本:総視聴回数 11万6,000回
・Twitter直張り4本:総再生回数 68万7,000回
・フェースブック直張り 8本:25万回
・Instagram3本:総再生回数 8万1,000回
合計:約 113万4千回
選挙期間中(6月18日から7月4日)のみで、この数字だった。
ちなみに小池知事は動画の再生回数だけでみると山本太郎候補や宇都宮健児候補に負けている。
その一方で小池知事のオンライン選挙には様々な工夫があった。特に興味深かったのはInstagram(以下、インスタ)、Twitter(以下、ツイッター)LINE、オンライン為書きだった。
インスタのフォロワー数は日本の女性政治家首位
まずはインスタだが、小池知事のフォロワー数は3月27日時点で22172人。日本の女性政治家では第1位となっていて2位は蓮舫氏、3位は今井絵理子だった。
選挙期間中はインスタライブを行いそのたびに1000人単位で登録者が増加、投票日には5万6000人を超え、7月18日現在では5万8000人となっている。
また、選対本部長を務めた都議会議員で地域政党・都民ファーストの会の代表、荒木千陽氏いわく、インスタライブはターゲットを若年層に「アットホームな雰囲気で見ている人との垣根を取り除こう」という狙いから自宅からの配信となったという。

海外の女性政治家ニュージーランドのジャシンダ・アーダーン首相も行い、その親しみやすい感じが好評だったので、それらの事例も参考にしていたと思われる。
インスタライブのアットホームさから、小池知事のペットの犬「そうちゃん」に対して「見たい」というコメントが相次ぐと「そうちゃん」が急遽登場。すると、応援コメントが多く寄せられていた。

また、コメントのなかには「今までの選挙は一方的に演説しているだけのイメージだったが、知事が質問に答えてくださったことをとても身近に感じた」などの好意的なものが多かったという。
「密です!」と手をまえに出して報道陣にソーシャルディスタンスを促す姿や、記者会見での厳しい口調とのギャップが大きかったのだろう。
ツイッター、LINE、フェースブックも展開
対照的に厳しい質問が相次いだのがツイッターだという。
荒木氏は、「あえて批判的な質問も受けたいという狙いで「小池知事に質問」とか「小池知事にきいてみる」ではなく「小池百合子にもの申す」として募集した」とのこと。 結果、多かった質問は公約達成ゼロ、豊洲移転などについてだった。
このツイッターは1万7000以上のツイートが来てトレンド入りしたという。
異色だったのはLINE公式アカウントだ。
「小池ゆりこと友達になろう」と題して、「政策」や「実績」などをメニューとしてだし、自動応答のチャットボットで知りたい情報を探しやすくしてあるほか、友だち登録者の地域、性別、年代似合わせた動画などをプッシュ通知でだしていた。

さらにフェイスブックライブの通知をクリックした登録者には、直前にリマインド通知も出していた。
ただ、あまり知られていないため友達登録数が2100人と少ないことや、チャットボットの自動応答のバリエーションの少なさなど改善点はまだ多いが、そのぶん“伸びしろ”があるやり方だと思われる。
そして、小池知事自身は「リアルに負けないくらいのオンライン選挙をしたい」として都内の62の自治体ひとつひとつに別々の動画メッセージを収録。
思いを込めるため、として4年前の都知事選の街頭演説でまわった順番でネットにアップ。最初は豊島区の池袋西口からスタートしたので豊島区の人へのメッセージ、という具合だった。
また、リアルな気持ちで話してもらいたい、ということで小池知事を支持する都民ファーストの会の都議が自分の選挙区の情報やご当地のモノを持ち寄り、それを見ながら収録したという。
オンラインで応援メッセージ募集
オンラインとリアルを併せ持っていたのが「オンライン為書き(応援メッセージ)」で小池知事が動画を収録する部屋に張られた葉っぱの形をしたメッセージカードだ。
「祈必勝」と書かれ、ホームページから応援メッセージを入力すると印刷できる。

4年前の選挙の時は手書きだったが、今回はオンライン経由。選挙期間中に4300件ほどの応援メッセージが寄せられたそうだ。
さらに“デジタルデバイド対策”として「おはようございます」から「こんばんは」まで小池知事の肉声を録音したものを流しながら選挙カーでは都内を回っていたという。 また、肉声メッセージは数日に1回入れ替えていたそうだ。
そしてこれまでの選挙と同様にはがきは9万5000通、びらは30万枚配布したという。
4年前の選挙は、有権者が次々と緑色のモノを持ち寄り、暗くなると数多くのペンライトが揺らめく、さながらコンサート会場のように“白熱した”選挙だったからか、小池知事は荒木都議に「握手したい、皆さんとふれあいたい、直接話したい、反応をしりたい」と強く話していたが「新しい日常を自ら体現しないといけないからオンラインに徹し、公務優先で」となったという。

小池知事「双方向でできたことが発見」
小池知事に選挙の翌日、オンライン選挙についてきくと
「選挙というのはできるだけ触れ合いを求めて、そして触れ合うことによってそれが選挙にとってプラスの効果があるというのは、これはずっと言われていることであります。
今回、タッチレス、非接触で進めたわけでございますけれども、ある意味、街宣車の上から叫ぶ形の街頭演説よりも、むしろ双方向でのやりとりができたことは発見でした」と話した。
そして、「次、どのような選挙が行われるか存じませんけれども、タッチとタッチレスと、両方で進めていくということになるのではないか」と締めくくった。

選挙のやり方が多様になることで、候補者が様々な発信ができる、これは受け手である有権者にとっては悪いことではなく、新型コロナウイルスの感染が拡がる中、さらに新たな選挙のやり方が増えていくことが望まれる。
執筆:社会部都庁担当 小川美那
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