「東京大改革バージョン2の一番の課題でありますけれど、「稼ぐ東京」を進めることであります」
小池知事は再選にむけた第一声で「稼ぐ東京」を強調した。
この記事の画像(6枚)コロナ対策で都の”貯金”が9割減
東京都は新型コロナウイルス対策にすでに1兆820億円をあてている。
通常の予算ではなく、予定外の支出の財源となった“東京都の別ポケット”ともいえる財政調整基金は、2020年3月時点の約9350億円から807億円まで大幅に減った。9割以上を取り崩してしまったことになる。
(注:493億円まで減少するところだったが、歳出の調整で807億円に)
都の”収入”は7000億円減?
出費がかさむ中、では収入はというと、都税収入は8年連続増収で増収、過去最大の5兆6000億円になっている。
しかし、6月26日に開かれた都の財政に関する有識者との意見交換で、みずほ総研の太田智之調査本部経済調査部長は「新型コロナウイルスによる経済的ダメージは甚大。ワクチン、治療薬がない中で感染拡大に留意しながらの活動となるため回復が非常に緩やか、にぶい」と先行きの厳しさを指摘している。
都税収入は企業の法人税の割合が大きいことから景気の影響も大きく受けるので、リーマンショックのときは税収が5兆3000億円から4兆3000億円に1兆円も減った。
ただ、リーマンショックと同じぐらいの経済的ダメージだとしても、リーマンショックの時と違うのは外形標準課税が導入されていることだ。
利益に対してではなく事業規模で課税する外形標準課税なので、ある都の幹部は「リーマンショックと同じダメージが来ても1兆円までは落ちず大体7000億円ぐらいの落ち込みではないか」と見ている。
ただ実際新型コロナウイルスでどこまで税収が落ちるのかは秋口ぐらいにやっと見えてきて正確にわかるのは冬とのことだが、間違いなく税収は減るだろう。
さらに“一極集中の是正”として都から地方に約8400 億円が移される。金額は税収次第だが、来年以降も同じ仕組みでまた都から地方に移されていく。
出費は増えて、収入は減って、都外にお金が移される…
東京都の予算は「一つの国に並ぶ規模」といわれ一般会計だけで7兆円を超える。でも、“別ポケット”の財政調整基金は9割以上使ってしまった。
そこで今度は特定目的基金という“さらに別のポケット”のお金約9000億円も使っていかざるを得ない、と都の幹部はみている。
都債の増発は不可避?
また、それでも足りなさそうで東京都の借金となる都債の発行も増やさないといけないようだ。財政を担当する武市副知事は「都債の増発は不可避」という見方を示している。
東京都はリーマンショック時に5000億円ほど都債を発行していたが、現在は1000億円程度に抑えているので「4000億円程度は無理なく起債ができる」という幹部もいる。
「今のところ都民サービスに影響はない」というのが都庁内の見方だが、新型コロナの影響で税収が減る一方で第二波への備えなど対策費は増える。さらに東京から地方に流れるお金もボディーブローのように効いてくるなか、この先影響がでないとはいいきれない。
バブル崩壊後、平成10年頃は史上最大の実質収支赤字(マイナス1068億円)で、その後の石原都政時代の財政再建期よりは余力はあるとは思うが、東京都は富裕だという状況ではない。来年度予算の立て方が今後の東京の行方を大きく左右するのではないか。
都政への信頼がポイント
前述の会議でみずほ総研の太田智之調査本部経済調査部長はこうも述べていた。
「行政の信頼が高ければ安心して経済活動行われるので政策の効果が出やすい」
行政への信頼が高ければ、給付金を配った場合に貯蓄に回るのではなく「お金を使っていいのでは」という雰囲気を醸成することが出来るのではないか、というのだ。
行政への信頼を高め、都民と一体となって政策効果を高め、最小限の支出で最大限の効果を。財政面でも小池知事は本当に難しい舵取りを迫られている。
執筆:社会部都庁担当 小川美那