1日の能登半島地震で震度5強を観測した富山県氷見市では、多くの住宅が損壊した。地震発生直後、2階部分が1階を押しつぶすように倒壊した住宅から3人が救出された。消防が「奇跡」という救出劇。その裏側には、消防隊員の日ごろの努力があった。

「現場に着いたら1階部分がない…」

倒壊した酒店
倒壊した酒店
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午後4時10分、能登半島地震が発生した。震度5強を観測した氷見市の中心部、北大町から1本の通報が入った。「家の中に60代の男女3人がいる」

15分後、氷見消防署の隊員が現場にかけつけると、酒店の1階部分が崩れていた。

氷見消防署消防指令 竹律穏さん
氷見消防署消防指令 竹律穏さん

氷見消防署消防指令 竹律穏さん:
「現場について確認しましたら、家屋の1階部分がない状態。2階部分が地面にある感じで高さがだいたい1メートルくらいの隙間がある状況で現場を確認しました。現場に向かうと119番通報した孫が現場にいて、この中に3人いるということを確認している」

人がいるのは「つぶれた1階部分」ということが分かり、早急な救出が求められた一方、当時、発災直後で余震も懸念され、難しい判断が迫られた。

氷見消防署消防指令 竹律穏さん:
「特別救助隊が高岡からくる救助隊を待って活動方針を決めようと。まず周りの安全確認と付近の住民の安全を確認した。正面から拡声器で声をかけても反応が全くない状態で、隊員を家屋の裏にまわして呼びかけを行った。その途中で中の人から119番通報で高岡の指令センターに『中で生きています』という通報が入って、それがセンターから自分に無線が入っている。それで中が安全だと確認できた」

そして12分後の午後4時37分。高岡消防署から特別救助隊の5人が到着した。

高岡消防署特別救助隊 辻拓朗隊長
高岡消防署特別救助隊 辻拓朗隊長

救助活動にあたった消防士歴15年の高岡消防署特別救助隊の隊長辻拓朗さんは、必要な救助機材を高岡消防署に要請。その間、他の隊員が建物の裏から要救助者と会話ができたことを確認し、正面からではなく背面からの救助に切り替えた。1階部分にいた3人は、偶然つぶれた部分の隙間にいて、会話ができる状態だったという。

「努力が実を結んだ奇跡」

高岡消防署特別救助隊 辻拓朗隊長:
「隙間があって、そこに奇跡的に3人おられたような状態。本当に奇跡だと思います。このような経験はゼロ。倒壊家屋を目の当たりにしたのも初めてだったが、建物救助は過去の災害からもあり得ることだったので訓練は隊でしていた。隊員たちも絶対に助けるというような目をしていたので絶対にあきらめずに助けようと活動した」

倒壊した家屋から救出される男性 提供:高岡市消防本部
倒壊した家屋から救出される男性 提供:高岡市消防本部

60代の男女3人が助け出されたのは通報からおよそ40分後。ケガはなかった。

3人は正月で集まっていたこの家の親族で、富山テレビの取材に対し、「3人とも偶然、道路からみて左側のわずかな隙間ができた部分にいたので助かった。救助頂いた高岡消防の辻さんはじめ、消防の皆さんに感謝したい」と話した。

「我々にゴールはない」

高岡消防署特別救助隊 辻拓朗隊長:
「発災後1回目の出動だったがまだこのような状況があるのではないかと思ったので、救助が終わった後火災もあったりしたので安堵している暇もなくすぐ次に備えていた。日々の訓練が大事だと思うのでそれを怠ることなく我々にゴールはないと思っているのでしっかりと有事に備えたい」

災害が少ないと言われる富山県。続く地震で不安な日々が続く中、訓練を積み重ねてきた消防隊員が県民の大きな支えとなっている。

(富山テレビ)

富山テレビ
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