2023年、新潟市内で酒に酔った同僚女性に対し、同意を得ずに淫らな行為をした罪などに問われている元新潟県警幹部の男の初公判が2024年1月11日、新潟地裁で開かれた。

女性が抵抗していたにもかかわらず、なぜ犯行に及んだのか…性犯罪を取り締まる部署も経験していたという元県警幹部の男からはとんでもない理由が語られた。

元県警幹部 同僚女性に淫らな行為など…

不同意わいせつ、不同意性交等、性的姿態等撮影の3つの罪に問われているのは、元新潟県警本部組織犯罪対策課の次長で、現在無職の梅川稔被告(56)だ。

送検される梅川被告
送検される梅川被告
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起訴状などによると、梅川被告は2023年10月6日午後10時20分すぎ、県警内部の飲み会後に新潟市内を走っていたタクシーの車内で泥酔し、抵抗できない20代の同僚女性に対し、同意を得ずにわいせつな行為に及んだ上、そのまま女性の自宅にいき、玄関先で淫らな行為を行い、その様子の一部を撮影した罪に問われている。

被害女性からの相談で発覚した今回の事件。

警察はこれまで梅川被告の認否について明らかにしておらず、初公判で梅川被告が何を語るのか、注目されていた。

女性との関係性・犯行に及んだ経緯

スーツ姿に身を包み、髪を伸ばして、少し伏し目がちで法廷に現れた梅川被告。

初公判の冒頭、起訴事実について問われると…

梅川稔 被告:
間違いありません。被害者の方には申し訳なく思っています。すみません

弱々しい声で起訴内容を認め、被害者への反省の弁を述べた。

その後、検察の冒頭陳述で明らかになったのは、梅川被告と被害女性との関係性や犯行に及んだ経緯だった。

2人は直属の上司と部下の関係ではなく、数回面識があった程度だったという。

被害女性は10月6日に行われた県警内部の飲み会時に梅川被告から二次会にも参加するよう伝えられ、手洗いに行って席に戻ると、参加者の多くは帰宅し、5人で二次会に参加することになった。

一次会からすでに大量の酒を飲んでいた女性は、二次会で泥酔。

その様子を見た別の幹部から梅川被告に「二次会に誘ったのだから、責任持って女性をタクシーで送るように」と話が出たという。

そこで、梅川被告は女性と2人きりでタクシーに乗って帰宅したが、その車内で、梅川被告の女性に対する執拗なわいせつ行為が始まった。

タクシーでわいせつ行為⇒嫌がる女性宅へ

泥酔し、タクシーの車内で寝てしまったという女性。違和感を感じて目を覚ますと、タクシーの車内で梅川被告がわいせつ行為をしていたという。

タクシー車内のドライブレコーダーには、梅川被告がタクシーに乗車してすぐにわいせつ行為をしている様子が記録されていた。

女性は酩酊状態ではあったものの「やめてください」と拒絶の意思を示し、タクシーの運転手に車を止めるよう伝え、途中で下車したものの、梅川被告も一緒に下車。

2人はコンビニエンスストアに行った後、別のタクシーに乗車し、再び女性の自宅方向に向かったものの、そこでも梅川被告によるわいせつ行為は続いたという。

女性宅に到着し、玄関に倒れこんで眠ってしまった女性に対し、梅川被告は淫らな行為をしただけでなく、手に持っていた自身のスマートフォンでその様子を動画で撮影。

一夜明け、女性は記憶があいまいだったものの、タクシーの車内で梅川被告からわいせつ行為を受けていたことを覚えていたため、その日に上司に相談して犯行が発覚した。

なぜ犯行に…「自分でもわからない」

その後、逮捕された梅川被告は警察や検察の調べに対し、「ここ10年で一番酒を飲んでいて、かなり酔っていたことから犯行については覚えていない」「心にスキがあり、今回は女性を性的に見ていて、女性を触ってしまった」「申し訳ないの一言では言えないほど申し訳ない」と容疑を認めていたことが明かされた。

裁判の途中で、自身で撮影した動画やドライブレコーダーなどの映像を約20分にわたり見せられた梅川被告。その後、行われた被告人質問では…

弁護士:
犯行時の記憶はあるか?

梅川稔 被告:
タクシーの車内はほとんど記憶がない。だが、女性宅においては、おぼろげながら記憶がある

逮捕後の捜査途中の段階でも犯行時の映像を見せられたという梅川被告。

しかし、タクシー車内などの記憶がほとんどなかったことから警察や検察の取り調べにどのように答えていくか弁護士とも相談していたという。

弁護士:
あなたは逮捕後に私が接見した際、「捜査一課が捜査を進めるので証拠は揃っている。ただ、本当に記憶がない。記憶がないと答え続ければ否認になるので供述調書を作りましょうか?」と言ってまで自白をしようとしていましたね

梅川稔 被告:
はい

弁護士:
映像を見た感想は?

梅川稔 被告:
ぞっとしたのが正直な気持ち

弁護士:
なぜ犯行に及んだのか?

梅川稔 被告:
正直自分でもわからない。もう数年で満期退職する予定であったし、仕事も順調だった。法律に触れてまで、なぜあんなことをしたのか。自身も刑事でタクシー車内にドライブレコーダーがあることは百も承知なのに、カメラの前でなぜあんなことをしたのかわからない

弁護士:
車内を映したドライブレコーダーには、タクシーの乗車後すぐに犯行に及んでいて、映像だけで見ると梅川被告が酒に酔ってもいないように見える。本当に酔っていたのか?

梅川稔 被告:
ここ10年で一番酔っていた。また、普段から「酒を飲んでも顔に出ない」とか「本当に酔っていたの?」とよく言われていた。今回もどれくらい飲んだのかわからないくらい大量の飲酒をしていたので、かなり酔っていた

弁護士:
これまでに示談が受け入れられず、このまま裁判が進めば実刑判決は濃厚だ

梅川稔 被告:
受け入れるしかない。県警に対しては今回の事件で様々な迷惑をかけた。私が重大な罪を犯して、県民の県警に対する信頼を大きく損なってしまい、反省している

そして、最後に被害者への深い謝罪の言葉を述べた。

梅川稔 被告:
若手職員を粛正、指導する立場の私が被害者を深く傷つけ申し訳なく思っている。本人のみならず、家族や関係者にも深くお詫び申し上げる

「理性のタガが外れて抑えが…」

続いて行われた検察側からの被告人質問では…

検察:
タクシー乗車後、すぐにわいせつ行為を行っている。女性への性的興味がいつから湧いたのか

梅川稔 被告:
本当に思い出せない。どの時点で理性のタガが外れたかわからない。タクシーに乗った直後に触っていることから、車に乗る前から生じていたのではないかと思う

検察:
犯行時の動画には女性がタクシーから下車したり、彼氏の名前を言うなどの抵抗をしていた様子も映っている。こうした抵抗も認識できていなかったか

梅川稔 被告:
タクシーの車内は本当に記憶がない。申し訳ございません

検察:
女性宅での淫らな行為を映した動画では、酔って寝ている女性に対し「大丈夫?」と声をかけながら撮影しているが

梅川稔 被告:
覚えていない。理性のタガが外れて抑えがきかなくなっていたと思う

また、梅川被告はタクシーで自宅に帰った後、翌日の午前8時55分ごろまでに女性との行為を撮影した動画を削除していた。

検察は動画を削除した行為についても指摘。

検察:
その後、家族と過ごしているが、自身が動画を削除しているということは、わいせつ行為をしたことがわかっていて、すぐに自首すべきだったのではないか

梅川稔 被告:
おっしゃるとおり

検察:
言わなければ女性が分からないと思ったのか?

梅川稔 被告:
そんなことはない

検察:
(飲み会の翌日)別の県警幹部から「彼女大丈夫ですか?」と連絡が来た際に「大変でしたよ。連休明けの火曜日に話します」と言っていたが、実際会った時にはどう説明するつもりだったのか

梅川稔 被告:
3連休が明けた火曜日には正直に言うつもりだった

検察:
被害を受けた女性が心療内科に通い、このまま職場復帰ができなければ若手の未来を潰したことになる。その自覚はあるか

梅川稔 被告:
自覚はある

検察:
被害者が示談できない気持ちが理解できるか

梅川稔 被告:
…(黙ってうなずく)

女性は現在休職… 厳しい処罰望む

一方で、被害に遭った女性は刑事を目指し、業務に励んでいて、被害の経緯を知ると「警察官が警察官に対して、普段取り締まっている犯罪を行ったことについては絶対に許せない」と憤りを見せたという。

また、刑事課の上司として性犯罪への心構えや対応の仕方を部下に指導していた立場の梅川被告から被害を受けたことについては「気持ち悪く、当時のことを思い出すと怖い」とつらい思いを語っている。

女性は現在、休職していて、今回の件を思うと復帰を躊躇する気持ちがあり、仕事も続けるか悩んでいるという。

そして、梅川被告にはできるだけ厳しい処罰を望んでいる。

裁判で明るみになった県警幹部による部下への卑劣な犯行。次回の裁判では、被害者代理人からの被告人質問や意見陳述などが行われる予定だ。

(NST新潟総合テレビ)

NST新潟総合テレビ
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