国連安全保障理事会は、イエメンの反政府組織フーシ派による紅海での商船攻撃の即時停止を求める決議を採択した。フーシ派は反イスラエル・反アメリカを掲げる強大な軍事力を持つ組織で、イランの支援を受けている。

攻撃の背景にはイランの思惑があり、中東の紛争拡大の可能性もある。

乗っ取った日本船が観光地に

紅海などで続く、イエメンの反政府組織フーシ派による商船への攻撃をめぐり、国連の安全保障理事会は、攻撃の即時停止などを求める決議を採択した。

船の操舵室の様子
船の操舵室の様子
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決議は日本とアメリカが起草したもので、フーシ派による商船への攻撃を強く非難したうえで、攻撃の即時停止のほか、2023年11月に拿捕された日本郵船運航の貨物船「ギャラクシーリーダー号」の乗組員らの解放などを求めている。

10日の採決では、ロシアや中国など4カ国を除く11カ国が賛成し、採択された。
フーシ派の攻撃をめぐっては、3日に日本やアメリカなど13カ国が、攻撃の即時停止を求める共同声明を発表していた。

イエメンの武装勢力「フーシ派」が紅海での攻撃を強めている。
ここからは、フジテレビ・立石修取材センター室長がお伝えする。

フーシ派はハマス同様、反イスラエル・反アメリカを掲げる武装組織だが、ハマスより遥かに強大な軍事力を持つ組織。
記憶に新しいのは、2023年11月、イスラエルの富豪が所有し日本郵船が運航する貨物船・ギャラクシーリーダー号を紅海で乗っ取った事件。この時も非常に計画的な攻撃だった。

こうした民間の船舶などへの攻撃は今も続いていて、日本を含む世界中に大きな影響を及ぼしている。

たとえば、日本から船で中東やヨーロッパ地域を結ぶルートは紅海を通るのが最短だが、現在はアフリカの喜望峰を回るルートに変更を余儀なくされている。

非常に遠回りになるため、到着するまで7日から10日近く伸び、輸送コストが上昇するという。

乗っ取られた日本郵船のギャラクシーリーダー号の乗組員25人は、いまだ人質のまま。そして、船自体もイエメンに拿捕されたままだ。

ギャラクシーリーダー号は現在、イエメン西部、紅海に面したアル・サリフという町の沖合に留め置かれていて、フーシ派はこの船を市民に公開し、観光地のような状態になっている。そのため、甲板では写真を撮る市民の姿も見られる。

観光地のように公開している狙いは、何なのだろうか。

フーシ派の広報官は「イスラエルのための輸送船ではなく、イエメン人のためのアトラクション施設になった」と話していて、自らの戦果を強調する材料として使用している。

イスラエルとハマスの衝突をきっかけに、紅海での攻撃を活発化させているフーシ派。
今後、中東でのさらなる紛争拡大につながりかねない存在となっている。

フーシ派は国家規模の軍を持つ

2023年9月に行われたフーシ派の軍事パレードの映像。

弾道ミサイルとみられる大型兵器が確認されるほか、ドローンも多数所有している。
パレード映像には、ボートなどの海上での兵器も数多く確認された。

兵士の数も多く、イスラエルメディアによると数十万人規模の戦闘員がいるという。
2万人から3万人とされるハマスとは比較にならない規模となる。

フーシ派は、2014年にはイランの支援を受けながら、イエメンの首都サヌアを制圧し、事実上のクーデターを遂げている。

その結果、フーシ派はイエメンの政治や軍事の中枢機能を掌握していて、武装組織とはいえ、国家規模の軍を持っている。今後も紅海での攻撃は続くと思われる。

そして、その経済的な影響は日本にも及ぶものと思われる。
イスラエルとハマスの戦闘が続く中、フーシ派のこの動きは、どう考えられるのだろうか。

後ろ盾はイランのため、イランはイスラエルと正面的なぶつかり合いは避けたい。だから、その意を受けるような格好でフーシ派が動いているということだと思われる。

そのため、フーシ派の動きだけではなく、その後ろ側にいるイランの思惑をここからどう読み解くかということが、この問題を考えていく上での1つのキーポイントになる。
(「イット!」 1月11日放送より)

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