福岡市東区の門司税関・福岡外郵出張所では、国際線で世界各地から届く膨大な郵便物に不正薬物や危険物などがないか、日々、取り締まりを行っている。中でも特に多いのが、有名ブランドバッグや高級時計などの商標権侵害物品、いわゆる「コピー商品」だ。違法薬物やコピー商品の密輸を水際で防ぐ、取り締まりの最前線を潜入取材した。
わずか3秒！通称「水際の番人」が中身をチェック
福岡外郵出張所の調査官が、経験と知識を元に、発送元の国や梱包状況などから疑わしい郵便物を判断し、仕分けていく。大石調査官は、海外の郵便物からコピー商品を見分ける知的財産調査官、通称「水際の番人」と呼ばれるエキスパートだ。
門司税関 福岡外郵出張所・大石知的財産調査官：
郵便物にコピー商品が入っている可能性があるのか、チェックする作業を行っています。だいたい3秒ぐらいで流していくイメージですかね
1日に膨大な量の郵便物をチェックする必要があるため、1つの郵便物にかけられる時間はわずか3秒ほど。早速、「これ検査、検査！」とチェックが入る。
次にX線で郵便物の中身を確認。二重にチェックする。
門司税関 福岡外郵出張所職員：
今回の場合だと、サンダルが複数入っているので、知的財産侵害物品になるかもしれないなと思います
X線に映ったのは、複数のサンダル。同じ種類の品物が多数入っている場合は、転売目的でコピー商品を輸入している可能性もあるとみて検査を行う。
疑わしい郵便物を仕分けて最終的に行うのが、郵便物の開封作業。実際に見たり触ったりしてコピー商品かどうか確かめるのだ。
中国から届いた小さな郵便物。申告書には、「ブレスレット」と記されていたが、箱を開けてみると…。
大石調査官「高級ブランドの時計が出てきました」
記者「これは本物？」
大石調査官「コピー商品だと思われます。重さが違う気がするので…そういったところも判断基準にしています」
中から出てきたのは、本物なら100万円ほどする高級腕時計だ。
続いて、大きな段ボール箱から出てきたのは、スポーツブランドのコピー商品とみられる衣類の数々。
門司税関 福岡外郵出張所・大石知的財産調査官：
縫製が粗雑であったり、生地が薄かったり、そういった商品については、コピー商品の疑いが強いと思います
さらに、最近、増加傾向にあるというコピー商品が、プレミアが付いて高値で取引される有名ブランドのコラボ商品のニセモノだ。
門司税関 福岡外郵出張所・大石知的財産調査官：
有名ブランド品のスニーカーなんですけど、コラボしている商品になるので、実際に買うとプレミア価格になっているものなので、数十万円する商品かなと。プレミア価格がついていると、入手できないので、どんどんコピー商品が作られている状況にあります
コピー商品とみられるシューズは、申告書によると35ドル、日本円にして約5,000円で購入されたものだった。
門司税関 福岡外郵出張所・大石知的財産調査官：
販売元が信頼できるところなのかというのをしっかり確認していただくところと、こういうプレミアの価格が付いている商品については、かなり安い金額で取引されている場合は、コピー商品ではないかと疑っていただければと思います
輸入した品物が、コピー商品などの知的財産侵害物品と判断された場合は、配達先に届くことはない。以前は、海外事業者からコピー商品を輸入しても、転売などの商業目的でなく、個人利用目的であれば税関で没収されることはなかった。しかし、2022年10月の法改正以降は、個人利用目的でも没収の対象となる。
門司税関 福岡外郵出張所・田中伸良知的財産調査官：
（知的財産侵害物品と認定された場合）最終的には税関で処分することになって、名宛人（受取人）の方には届かない、そういう状況になります
約3万9000点…差し止め数が急増
コピー商品などの知的財産侵害物品の輸入差し止め点数は急増している。2023年上半期の数字で、約3万9,000点、前年比で2倍以上だ。差し止めされた国と地域別で多いのは、中国が5割以上、続いてベトナムが3割ほどとなっている。
門司税関福岡外郵出張所によると「コピー商品は単なる偽物ではない」という。模倣品業者によるコピー商品の販売収益は、反社会勢力の資金源となる可能性があるともみる。
そして税関の仕事は、コピー商品などの取り締まりだけではない。不正薬物の摘発件数も増加していて、2023年上半期は13件と前年比の3倍以上となっている。その背景には、新型コロナウイルスの緩和措置で海外との往来が増え、覚醒剤を持ち込むケースが多くなった。さらに、闇バイトに応募した人が郵便物の「受け子」になるなど、SNSを利用した密輸入という事例もあるということだ。
コピー商品などの国内への流入を防ぐため、税関職員は、きょうも「水際の番人」として目を光らせている。
（テレビ西日本）
