「舟唄」など数々のヒット曲で知られる演歌歌手の八代亜紀さんが、2023年12月30日に死去していたことが9日わかった。73歳だった。2011年3月11日に発生した東日本大震災では避難所を訪問し「心の復興」にも尽力した。いま被災地からも感謝の思いが寄せられている。
災害復興にも尽力 震災被災地にも
この記事の画像(6枚)2011年3月11日に発生した東日本大震災。八代さんはその1カ月半後、津波で大きな被害を受けた宮城県石巻市の小学校に設けられた避難所を訪問した。
当時、避難所で厳しい生活をおくっていた被災者のためにと、自身の故郷である熊本・八代市の特産品「畳」を贈った。「畳製造者の皆さんの愛が詰まっていますから、ゆっくり休んでください」と被災者を労わった。
「亜紀ちゃんこそ頑張って」もらう励ましの声
八代さんが贈った「畳」の数は千枚を超えた。体育館で寝ていた人たちにとって、寝心地が一気に変わった「畳」の存在。被災者からは「今は大変だけど、これから頑張っていこうと思った」と感謝の思いがあふれていた。
一人一人と握手を交わし、「頑張ろう。負けないで頑張ろう」と声をかけたほか、自身の歌をアカペラで披露するなどエールを送り続けた。
その一方、八代さんは「皆さん明るくてやるしかないとおっしゃっていて『踏ん張って』というと『大丈夫。亜紀ちゃんこそ頑張って』と逆に励まされた」と話していた。
被災地から寄せる「感謝」の思い
八代さんの所属事務所は9日、「代弁者として歌を歌い 表現者として絵を描くことを愛し続けた人生の中で常に大切にしていた言葉は「ありがとう」でした。『一人では何も出来ない、支えてくれる周りの皆様に感謝を」という父と母からの教えを八代自身は体現し続けて参りました。療養期間中も傍で支えるスタッフや医療従事者の皆様に「みんなありがとう」と感謝を伝え最期まで八代亜紀らしい人柄が滲み出ておりました。』とコメントを発表。
復興に向けた勇気をもらった石巻市も「2011年の東日本大震災により、多くの被災者が避難所生活を余儀なくされている中、故郷八代市の畳をご持参いただきながら、本市の避難所をご訪問いただき、温かい言葉と笑顔で、被災者を勇気つけていただきました。八代さんの心優しいお人柄と、ありし日のお姿を偲びつつ、安らかな眠りを心よりお祈り申し上げます」とコメントを発表した。
八代さんが贈った畳は、今も石巻市役所の市長室に大切に飾られている。
(仙台放送)