イスラエルのネタニヤフ首相が国会で演説中、人質の家族が「解放を優先すべき」と抗議した。イスラエル軍は大規模な軍事作戦で戦いを優位に進めているが、ハマスがゲリラ戦で抵抗を続けているため、戦闘が泥沼化する可能性もある。

人質解放求め家族が抗議

イスラエルのネタニヤフ首相が25日、国会で演説している最中に、人質の家族から「解放を優先すべき」と抗議の声が上がった。

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人質の家族らは、国会で演説をしているネタニヤフ首相に対し、「あなたの娘だったら?」などと書かれた看板を掲げるとともに、「時間がない。今だ!」と人質の解放を優先するよう抗議した。

これに対し、ネタニヤフ首相は「軍事的圧力がなければ、100人以上の人質を解放することはできなかった」と話した上で、今後も人質解放のために作戦を続ける考えを示した。

一方、イスラム組織ハマスは25日、「イスラエル軍が戦闘を止めない限り、人質解放の交渉には応じない」との声明を改めて出している。

こうした中、イスラエル軍は、ガザ地区北部にある病院の捜索の映像を公開した。

病院の敷地内には、10月7日にハマスが襲撃した際に使ったとされる車両が確認でき、武器や血痕などが残されていたとしている。

イスラエル軍は、襲撃の前に戦闘員の集合場所になっていたと分析していて、病院がハマスの拠点として活用されていたと主張している。

このニュースについて、フジテレビ取材センター室長・立石修がお伝えする。

圧倒的な軍事力でハマス壊滅作戦を続けるイスラエルだが、思わぬ落とし穴もあるかもしれない。ハマスの戦い方を見ていく。

イスラエル軍は制圧を強めるガザ地区北部で、司令部があったとするトンネルを発見し、映像を公開した。

トンネルにイスラエル兵が降りていくと、そこには薄暗く長い通路が続いている。このトンネルは2層構造になっており、地下数十mの深さにあるという。

このトンネル内では、武器製造工場も確認されている。さらに、ハマス幹部の自宅につながっていたという。イスラエル軍はこのトンネルを破壊したとのことで、爆発の映像も公開されている。

ハマスがゲリラ戦で抵抗

戦闘開始以降、イスラエル軍は空爆も含め大規模な軍事作戦で、戦いを優位に進めているように見える。

その背景にあるのが圧倒的なイスラエルの軍事力だ。兵士が約17万人、さらに予備役が46万人以上いるとされている。また戦車を1000両以上、最新鋭の戦闘機を含む航空機を350機以上保有している。

これに対しハマスの戦闘員は、2万人から3万人程度とされていて、戦車や航空機は保有しておらず、車両も市販の4輪駆動車やバイクといった民生品が中心だ。

ハマスが制作した、ハマスの武器製造工場内部の映像。これは自動小銃を作っている工程とみられる。精密な機械を使った作業が行われているようだが、あくまで手作業であり、大量の武器を一挙に製造できるようには見えない。壮大な音楽が使われ、惑わされそうになるが、その規模はまるで町工場のようだ。

映像や数字だけを見ると、ハマスは全く太刀打ちできないようにも見えるが、ハマスはゲリラ戦を展開してイスラエル軍を苦しめている。

戦車に近づくハマスの戦闘員
戦車に近づくハマスの戦闘員

25日、ハマスが公開した映像では、爆発物を持ったハマスの戦闘員が、一人で前方にあるイスラエル軍の戦車に近づき、周りの様子をうかがっている。

その後、戦車の後ろに近づき爆発物を設置。戦闘員がその場を離れると、爆弾が爆発した。

戦車や兵員の被害の程度が分からないが、こういった少数の戦闘員による攻撃は頻繁に行われていて、巨大なイスラエル軍も、細かい動きをするハマス側すべてをせん滅することができないでいる。

このような“ゲリラ戦”は、軍事力の圧倒的な差を覆す力がある。

例えば1960年代のベトナム戦争では、強大な軍事力を誇るアメリカ軍が、民間人の格好をしながら奇襲作戦を繰り返す北ベトナム軍に苦しめられ、戦線は泥沼化していった。そして、歴史上初めて、アメリカが敗戦するという事態になった。

中東のメディアによると、イスラエル軍の最大のターゲットであるハマスのガザ地区の最高指導者、ヤヒヤ・シンワル氏は、ガザ地区内で生存しており「この戦いを諦めない」と活発に活動を続けているという。イスラエル軍はまだ“本丸”にたどり着いていない状態だ。イスラエルの軍事作戦が長期化、泥沼化する可能性もある。

「領土諦めても良い」去年の2倍

一方で、長期化するウクライナ戦争でも新たな動きがあった。

ウクライナでは戦争が始まって、2回目となるクリスマスを迎えた。キーウにある教会でミサが行われている映像だ。

実は、12月25日にクリスマスを祝うのは異例のことだった。これまでウクライナ正教会はロシア正教会と同じ「ユリウス暦」という暦にのっとり、1月7日をクリスマスとしてきた。

しかし2023年、それを変更し西側諸国が使う「グレゴリウス暦」という暦に準じて、12月25日に変更した。

これまでは、ロシアと同じ日にクリスマスを祝ってきたのだが、脱ロシアでクリスマスも欧米に近づこうとしている。

しかし、その西側諸国では長引く支援に疲れが出始めているという話も伝えられている。ウクライナで行われた世論調査でも、気になる変化があった。

ウクライナの調査機関によると「平和のために領土を諦めてもよい」と答えたウクライナ人の割合は19%で、2022年5月のほぼ2倍になったという。

こうした状況を見透かしてなのか、アメリカ・ニューヨークタイムズは「プーチン大統領が停戦に向けた協議に関心を示している」と報じた。

ただ、このプーチン大統領の言葉を額面通りは受け取れないと思っている。西側の支援離れやウクライナ国内でのえん戦気分が高まる中、揺さぶりをかけているともみられる。
(「イット!」 12月26日放送より)

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