日本の食文化を支える貴重な食材二ホンウナギは絶滅危惧種だ。我々が食べる大半はこのウナギの養殖だが、養殖には稚魚の「シラスウナギ」が欠かせない。ここ数年は不漁が続き価格も高騰、密漁や密売が後を絶たないと言う。このシラスウナギの採捕に関する新たなルールが導入されて初めての漁が解禁された。新ルール導入でシラスウナギ、そしてウナギの養殖をめぐる状況は変わっていくのか

ウナギ養殖にシラスウナギは欠かせない

天竜川河口の漁
天竜川河口の漁
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12月4日、天竜川の河口で水中に網を出し入れしている多くの漁師の姿があった。狙っているのはウナギの稚魚「シラスウナギ」だ。
漁師に釣果をたずねると「今日は三匹です。初日がゼロでした。」と返ってきた。

全国24都府県で行われているシラスウナギ漁。ウナギの完全養殖の実用化は難しくウナギの養殖にはシラスウナギが欠かせない。

静岡県内のシラスウナギ漁獲量推移
静岡県内のシラスウナギ漁獲量推移

シラスウナギ漁は例年12月から翌年の4月まで行われる。静岡県は全国有数の漁獲量を誇っているが、2023年漁期(2022年12月から2023年4月)は約696tということで3年連続の前年割れとなっている。 

天竜川河口での漁
天竜川河口での漁

別の漁師にも聞いてみたが「ダメ。いないね。去年も悪かったけど、今年はもっと悪いかな。まだわかんないけどね」とやはり不漁のようだ。

県によると不漁の原因については国の調査も行われているもののはっきりした答えは判らないようだ。

密漁に使われた道具
密漁に使われた道具

新ルール”罰則強化と取引の透明化”

不漁による供給不足もあり水産庁によると2023年漁期で採捕したシラスウナギの5月末時点の平均取引価格は1kgあたり 250万円と高値で取引されており密漁が後を絶たないそうだ。

そこで2023年12月からは罰則が強化され、密漁すれば3年以下の懲役または3千万円以下の罰金に課せられることとなった。

養鰻場
養鰻場

また、漁師と養殖業者との取引も自由化された。これまで県内で採れたシラスウナギは県内業者にしか販売できなかったが、県外の業者にも販売することができるようになった。以前から県外の業者に高く密売されるケースがあったそうで、取引を透明化することにより密漁を防止することもねらいだと言う。

シラスウナギ漁
シラスウナギ漁

シラスウナギを県外で高く売ることも可能となった点を漁師に聞いてみたところ「まあ期待したいですね。少しでも多く取って来て高く(売れれば)今まではひとつのところ(との取引)だったから」と返ってきた。

養殖ウナギ
養殖ウナギ

一方、県内の養殖業者は県内外での仕入れで価格競争を強いられ、養殖に欠かせないシラスウナギを確保できるのかを懸念している。不漁が続くシラスウナギ。その取引はいま大きな転換期を迎え、関係者の多くが今後の状況を注視している。

資源を減らさず食文化を守る

シラスウナギをどうすれば増やすことができるのか。漁業者や養鰻業者などからなる連絡会は2017年からクラウドファンディングでお金を集め親ウナギを放流する事業を行っているそうだ。

子供たちによるウナギの放流
子供たちによるウナギの放流

連絡会の会長で、浜松市の水産加工会社「海老仙(えびせん)」の加茂仙一郎社長は「親うなぎの放流だけでなく、小学生の体験授業に協力するなどウナギの資源保護について考えてもらう取り組みを進めている。これ以上資源を減らしてはいけない。」と話してくれた。

加茂仙一郎社長
加茂仙一郎社長

また、今回の制度変更の影響でウナギがまた高くなるおそれがある点を理解してほしいと訴える。

海老仙・加茂仙一郎 社長
初めてのことなので、そこを理解していただき見守っていただければ。本当においしいウナギができていますので、価格帯は高くなってしまうがおいしいウナギを皆さんに食べていただけたらありがたい

シラスウナギ
シラスウナギ

ヨーロッパウナギは絶滅危惧種として平成21年から貿易取引の制限対象となり、アメリカウナギも二ホンウナギ同様 絶危惧種種のため、シラスウナギの漁獲量の減少を別のウナギの輸入で補うことも難しい状況にある。

うな重
うな重

ウナギをそして日本の食文化の一つを守るためにも資源の現状を把握し、漁獲対策や生息環境の改善などを講じていくことが求められている。

(テレビ静岡)

テレビ静岡
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