クリスマスが近づく中、スターバックスはこども食堂に一風変わったプレゼントをしている。子供たちの「バリスタ体験」だ。分け隔てなくみんなで喜びを分かち合う姿から、貧困対策に限らないこども食堂の実態を見た。

小学生がバリスタ店員に変身!

今回、スターバックス コーヒー ジャパンのバリスタ体験をしたのは、渋谷区の立正寺近くの小学校に通う小学生33人。定番メニューのホワイトモカ、抹茶ティーラテ、ほうじ茶ティーラテの3種類の中から、それぞれ1つ商品を作ることができる。

子供たちへ作り方を説明するのは、近隣のスターバックスの従業員だ。まずは、選んだドリンクの粉にお湯を入れかき混ぜる。従業員の仕草を見て子供たちも一生懸命に動作を真似する。

ドリンクの粉をかき混ぜる子供たち
ドリンクの粉をかき混ぜる子供たち
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次にミルクの泡立てを子供たちに説明していくが、みんな元気いっぱい!「誰から混ぜたい??」の声に「はい!!」「はい!!」と次から手が上がる。早くやりたくてたまらない様子だ。

一斉に挙手する子供たち
一斉に挙手する子供たち

ラテ用の泡だったミルクは専用のミキサーを少し上下に動かすことで作れるのだが、小学生に果たして可能なのか?

不安に感じることは無用だった。器用にしっとりとしたミルクを作り上げていた。

自分で作ったドリンクを飲んで「おいしい」と満足げな子供たち。笑顔が至るところであふれ、幸せな時間が流れていた。

自分で作ったドリンクに嬉しそうな子供たち
自分で作ったドリンクに嬉しそうな子供たち

このプログラムは、スターバックスが去年から始めている。ドリンクの売り上げの一部で12月25日までのホリデー期間中に、地域の「こども食堂」の子供たちへバリスタ体験やギフトを寄付しているのだ。去年は3カ所の「こども食堂」でバリスタ体験を行ったということだが、今年は36カ所と大規模に拡大している。一部商品を詰めたギフトは、去年2万5500人に届け、その数も今年はさらに増やしたいとしている。

こうしたスターバックスの取り組みに、認定NPO法人 全国こども食堂支援センター・むすびえのプロジェクトリーダー遠藤典子さんは「支援を歓迎していきたい」と語る。

こども食堂拡大の背景

認定NPO法人 全国こども食堂支援センター・むすびえ 遠藤典子プロジェクトリーダー:
こども食堂が継続するには、地域のいろんな支え(資源)が必要だと考えています。寄付(財務資源・物資資源)、ボランティア(人的資源)に加え、にぎわいづくり(関係資源)の大きく4つの地域資源に囲まれて支えていただきたいと思っております。
今回、スターバックスさんの支援は「にぎわいづくり(関係資源)」のご支援になり、子どもたちが体験をきっかけにこども食堂が楽しくなり、近くのスタバ店舗も応援してくれる存在として認識されることが大事だと思っています。



こども食堂は現在増加し続けている。むすびえが発表した12月の速報値では、全国のこども食堂は昨年度から1768カ所増え、9131カ所となり、全国の公立中学校と義務教育学校の数を合わせた9296カ所とほぼ並ぶ水準となった。

 

遠藤さんは、この増加には、“地域の人と人のつながりの希薄さの危機感”が根底にあるという。こども食堂は、通常、地域の人が4、5人集まって公民館を借りて、月1、2回食事を提供するところが多いが、「“居場所”ができる」というポイントが拡大につながっているとする。

ここまでで「そうはいっても、こども食堂は貧困対策としての役割が大きいのではないのか?」と思われた方もいるのではないだろうか。今回、このこども食堂に訪れるまで私自身もそのように感じていた。

しかし、実際に訪れたこども食堂は、「貧困で、見るからに悲しいオーラをまとった子供が沢山いる」という状態ではなかった。

地域とのつながり 気軽に利用して!

実は、現状、貧困家庭や一人親家庭などに対象者を限定したこども食堂は2割程度だという。こども食堂が誕生した頃から、「地域とのつながりづくり」も重視されていたものの、子供の貧困対策関連の法律制定などが重なり、貧困対策のメッセージが強く印象づけられてしまったようだ。

認定NPO法人 全国こども食堂支援センター・むすびえ 遠藤典子プロジェクトリーダー:
貧困対策のイメージが強いことで、「(子供をこども食堂に)行かせたくない」というエピソードはまだ聞かれます。
ただし、最近では学校の校長先生が近くのこども食堂のチラシを配ってくれたり、学校との連携が進んだり、こども食堂自体が、学校の朝ごはんを提供しに行ったりと、接点が生まれてきました。また、子供たちが自分の友達を誘っていくなどそういった風景もあり、「こどもが一人でもいける」という環境づくりも全体で守って作っていければと思っています。

“貧困対策”以上に、現在求められる“地域の人とつながる場”としての役割。子供にとっても親にとっても少しでも開かれた空間になるよう運営者たちは尽力している。

スターバックスのように、メーカーがイベントを行うことも、気軽にこども食堂を利用するきっかけにつながりそうだ。

麻生小百合
麻生小百合

フジテレビ総合報道戦略局マルチメディア推進部所属。
プライムオンラインの運営やコンテンツの作成など担当。
2023年7月~現職。
前部署は報道局経済部。
2021年7月~2022年3月 通信・化粧品・エンタメ等担当記者
2022年4月~2023年6月 農林水産省、食品・飲料・外食担当記者