自民党派閥の政治資金パーティーを巡る裏金疑惑。東京地検特捜部は議員の事情聴取を行い、「裏金」システムの実態解明を目指している。

捜査の本丸は派閥という組織

自民党・安倍派の政治資金パーティー収入を巡る裏金疑惑で、派閥側がキックバックする現金を秘書に渡した後、事務所に連絡を入れ、議員本人が受け取ったかどうか確認していたことが新たに分かった。

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安倍派と二階派では、政治資金パーティーで、販売ノルマを超えて集めた分の収入を収支報告書に記載せず、議員にキックバックした疑いがあり、東京地検特捜部が12月19日、2つの派閥の事務所を捜索している。

その後の関係者への取材で、安倍派の会計責任者らがキックバックする現金を議員の秘書に渡した後、事務所に電話をかけて、議員本人が受け取ったかどうかを確認していたことが分かった。

特捜部は議員数十人への事情聴取も本格化させており、1月下旬に始まる見通しの通常国会開会までに、派閥が主導して作り出した「裏金」システムの実態解明を目指している。

ここからは社会部・知野雄介デスクがお伝えする。安倍派の会計責任者らによる、議員が現金を受け取ったかどうかの確認は、今後の捜査にどう影響するのか。

これは議員本人と事務方と直接結びつける話で、かなり大きな影響がある。

また、議員などの立件にも大きく関わってくると思われるが、ハードルは高い。問われているのが裏金の罪ではなく、不記載の罪だからだ。

議員の立件には数々のハードルがある。ある検察幹部によると「今回の事件は個人ではなく組織の事件」と話しているが、これはどういうことか。

例えば、選挙で選ばれた議員であっても新人なら、派閥側から「こういうものなんだ」と言われた際に断るのは現実的に難しい。

追及すべきは「裏金システム」そのもの。つまり、組織的・継続的に裏金づくりを行っていた派閥側という考え方だ。捜査の本丸は個人ではなく、あくまで「派閥」という組織になる。

では、議員の立件の見通しはどうなっているのか。

規制法は“ざる法”とも呼ばれている。まず、会計責任者と国会議員の間の共謀がないと、国会議員を立件するのは難しい。収支報告書記載の責任は、基本的には事務方の会計責任者にあるため、不記載について事務方との間で「報告・了承」に加え、「指示」があったかを示せるかが重要だ。

今、数多くの供述調書を取っているが、信用性などを問われることもあるため、具体的な供述だけでなく、できれば客観的証拠として、例えばメールやラインなどでのやりとりが出てくるかもポイントとなる。

「国民の常識」を反映する検察審査会

メールやLINE、文書で、どんなやりとりがあれば証拠となるのだろうか。

例えば、派閥の会計責任者からの「今年の戻しは、計○○○万円です。そろそろ不安ですが、記載どうしましょう?」との連絡に、議員が「載せなくていいよ」と返信。このようなやりとりは有力な客観証拠と言える。

やはり、国民からは「納得いかない」「起訴すべき」という声が出てくるのではないだろうか。

今は、そのような「国民の常識」を反映させる制度として「検察審査会」がある。これは、国民の常識や感覚を反映させるために、検察が不起訴にしても、くじで選ばれた市民が起訴することができる制度だ。

過去の例では、当時民主党の幹事長だった小沢一郎氏の土地購入を巡る陸山会事件で、特捜部は小沢氏を不起訴としたが、その後、検察審査会によって強制起訴された。最終的には長い裁判の末、小沢氏は無罪となった。

今回も検察が不起訴としても、検察審査会で強制起訴となり、それが仮に有罪となった場合、 国民は「検察は一体何をやっているんだ!」となり、検察のメンツ丸つぶれという事態になりかねない。

そのため、検察としては一概に金額だけで決めずに、悪質性があれば略式も含めて起訴を探るという可能性がある。

ただ、過去の主な政治資金規正法違反の事件において、大物議員自身は不起訴となったケースが多い。

政治とカネの問題に詳しい日本大学・岩井奉信名誉教授は「今回の不記載は立法府の国会議員自身が組織的に法律を破壊しており、とても悪質で、多くの議員に公民権停止などの厳罰が必要」とした上で、「会計責任者が有罪になれば、議員が自動失職する連座制を導入すべきだ」と話している。
(「イット!」 12月20日放送より)

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