この夏、長崎・東彼杵郡東彼杵町に子育て中のママたちがコミュニティースペースを立ち上げた。名前は「はぜとつち」。 
日常をちょっとした工夫で豊かにする知恵を学んだり、少しの間子育てを休憩して「自分の時間」を味わうことができる空間だ。

子育て中のママが集まるワークショップ

「アップサイクルといって、もとより少しよくするみたいなイメージを持ってもらえたら」と説明するのは布作家の衣川二三さん。

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東彼杵郡東彼杵町に子育て中のママが集まった。「私の靴下。かかとの穴が開きそうなところを繕おうかなと」と話す参加者たちの持ち寄ったお気に入りの衣類を見てみると、穴があいていたり、擦り切れたものもある。

参加者たちが挑戦するのは「ダーニング」と呼ばれるヨーロッパ伝統の習慣だ。あえてカラフルな糸でつくろい直すことで、穴やシミなどがチャームポイントに変わる。

布作家・衣川二三さん:
それぞれ色の選び方や粗さも変わる。どれも正解で「自分がかわいい」と思ったものが正解。

ワークショップが開かれたのは茶畑の一角にある「はぜとつち」と名付けられたスペースだ。木の香りに包まれていて、子どもたちが遊ぶことができる空間もある。

立ち上げたのは2021年に大分県から大村市に移住してきた石川雅美さんだ。目指しているのは自宅でも、職場でもない「第3の場所=サードプレイス」。

石川雅美さん:
関東出身で子どもが難病があって治療のために九州に来なくてはいけなかった。全然知り合いがいない状況で夫も単身赴任だったので孤独な子育て環境だった。

石川さん自身が高校生と中学生を育てる現役ママだ。不登校などに悩む親子の支援をきっかけに、5年ほど前からは子どもが自然と触れ合う機会や、ママ同士がつながるコミュニティーづくりなどに取り組んでいる。

石川雅美さん:
近所や顔見知りになった人に一瞬抱っこしてもらえるだけでも、気持ちが落ち着いた体験がある。同じような思いの人に、少しでも癒やしというと大げさかもしれないが何か提供できるものがあればと思う。

思いに共感した子育て支援団体やデザイナー、カフェオーナーなどが活動を支えてくれている。

参加者からも「初めて来た。いろんな方とお話しするだけでもリフレッシュする」「2人でいるよりも、友達や大人の話し声がするとうれしいみたい。家で2人だと結構ぐずぐず言うけど。お母さんの息抜きになって笑顔になって、子どももお母さんが笑顔の方がうれしいから、ありがたい」などの声が聞かれた。

自然や環境に目を向けるきっかけに

石川さんたちは東彼杵町の助成を受けながら、耕作放棄地にハゼの苗木を植える里山整備も行っている。

石川雅美さん:
ハゼの木を植樹して、木の実からロウを絞って手仕事を生み出したいなと思っていた。

屋号にも「ハゼ」を入れた。子どもも大人も手を動かして、手仕事の楽しさや自然や環境に目を向けるきっかけにつなげたいとの思いが込められている。

石川雅美さん:
畑で子どもと活動する、自然の中で何かすると、途端に子どもが元気になる様子を何度も目の当たりにした。自然の環境をよくすることが人間にとっても人間関係にとっても良い。すべてつながっているなと思う。

活動の場は東彼杵にとどまらない。この日は、長崎市内で「しめ縄づくり」のワークショップを開いた。マコモや国産のイグサなど材料にもこだわっている。

参加した父親:
日本の伝統なのでなかなか今こういうのをする機会がないので良い機会になった。

参加者の中には70代の男性の姿もあった。

参加した男性:
じいちゃんが家でわら草履作っていた。昔を懐かしむというかほっとする、ほっこりするね。

2024年の春ごろには、JR新大村駅の前に新たな拠点をつくる計画だ。

今後はコミュニティーカフェも計画

石川さんは今後、手仕事を生かしてモノを売るなど仕事を作り出し、ママが働く場所を新たに生み出せないかと考えている。

石川雅美さん:
社会の最小単位って親子や家族。子どもは社会の宝なので幸せでいつも笑顔で機嫌よくいられる状態は社会がそこに向くと思うので、そういう希望を持ってこれからもしていきたい。

新たな拠点にはコミュニティーカフェを設けて、イベントやワークショップも計画している石川さん。子育て世代だけでなく幅広い交流が生まれ、地域が盛り上がればと期待を寄せている。

日々の暮らしに彩りと余白を。 自然と人、人と人とをつなぐ拠点は、子どもとママの笑顔を支える。

(長崎テレビ)

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