「リトルベビーハンドブック」の配布が2023年4月から福井でも始まった。2,500グラム未満で生まれた赤ちゃん用の冊子で、身長と体重の目安となる成長曲線など低出生体重児に合わせてある。同じ状態で出産した母親のコメントも記され、不安を抱える母親たちの心の支えになっている。

発育に不安を感じる親たちの支えに

福井・越前市で2023年11月、展示会「小さないのちの写真展」が開かれた。写真におさめられているのは、早産などで小さく生まれた赤ちゃんたちだ。

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展示会を企画したのは、低出生体重児の出産を経験した母親のサークル「カンガルークラブ福井」。わが子の発育に不安を感じる親たちの支えになろうと、会員の子どもたちが低体重で生まれた当時と、元気に成長した写真を展示した。

「体重は662グラムですね」と生まれたばかりの息子の写真を手にするのは、メンバーの北川里実さん。平均体重の4分の1以下で生まれた。初対面の息子は保育器に入り、多数の管につながれていた。

北川里実さん:
本当に一言、ごめんねというか…。なんてことをしたんだろうという息子への謝罪、申し訳なさでいっぱいだった。

北川さんによると、一番つらい時期は出産直後だ。将来への不安で押しつぶされそうになる人が多いという。消えそうな命、手術が必要なのか、病気や障害が残ってしまうのではないかなどの不安が重なり、北川さんは八方ふさがりになってしまった。

同じ境遇の母親の支えになりたいと、2020年に福井版「リトルベビーハンドブック」の導入を求める活動を始めた。

2500グラム未満の出生児は低出生体重児と呼ばれ、一般的に配布される母子手帳では成長の記録ができない項目もある。このハンドブックは1500グラム未満の赤ちゃん用にと、2023年4月から県内で配布されるようになった。

ハンドブックには不安を取り除くため、当事者の声や体験談などが掲載されてある。

北川里実さん:
集中治療室に子どもがいる時など、会えない時間が一番不安になる。一医療関係者に入院中の様子を一言でも記入してもらえるよう、ママとの交換日記のようなものを盛り込んだのが福井の特徴。

福井版の表紙には2匹の恐竜が描かれている。小さな恐竜は生後7日の時の北川さんの息子の手形、大きい恐竜は7歳の時にとった足形を使ってデザインされている。

北川さんの息子は今、小学3年生に成長した。「小さいときはいろいろ不安だと思うが、成長していくということをメッセージとして表紙で伝えられたら」と表紙に込めた思いについて語ってくれた。

“一人じゃない”ということを伝えたい

福井で生まれた子どものうち体重が2,500グラム未満の低出生体重児は約8%。実に13人に1人の割合だ。

北川里実さん:
先輩ママたちがいてハンドブックにはそれぞれの経験や思い、不安や喜びを凝縮してメッセージとして書いてある。まずは一人じゃないということをメッセージを読んで感じてもらうとともに、子どもは確実に少しずつ成長していくと思うので成長の喜びを書いてもらえたらうれしい。

低出生体重児は全国で年々、増加傾向にある。リトルベビーハンドブックは2018年に静岡で初めて作成され、今では40以上の都道府県で運用されている。

全国に広がったのはここ数年のこと。国際母子手帳委員会事務局長を務める坂東あけみさんが、大きな役割を果たした。

坂東あけみさん:
布団にくるまって泣いている母親がたくさんいて、そんな精神状態が産科病棟で続いている。母子手帳はすばらしいものだが、それでつらい思いをしている人がいるのであれば、それを補うサブブックは必要じゃないか。

子どものためにもなるハンドブック

坂東さんはリトルベビーハンドブックは母親だけのものにとどまらないと強調する。

坂東あけみさん:
新しく医療機関を受診した時、医師がこれを見ればすぐに赤ちゃんの状態が分かるので助かるという話をよく聞く。もう一つ大事なポイントは、ここにお母さんがたくさん書き込んで、医者も書きこむ。
子どもが大きくなった時、これを見たら私は小さく生まれたけど、その分いろんな人たちが大事に見てくれたと。それが理解できると自己肯定感は高くなるのでは。リトルベビーハンドブックはそんなお子さまのためのものかも。

北川さんは「今後、ハンドブックの啓発活動を通じて保健師や助産師、歯科医師などいろんな方に見ていただき、当事者に寄り添えるものになっていけたらいいなと思います」と語った。

(福井テレビ)

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