国の重要文化的景観に指定されている大分県日田市の「小鹿田焼の里」。焼き物が有名だが土をつくる唐臼も美しい景観として知られている。この唐臼をつくる唯一の職人がいま後継者問題に直面しているという…
唐臼を1人で作り続ける80歳
小鹿田焼の里に響く唐臼の音。この音を守るのは里に暮らす1人の男性。
小袋信裄さん、80歳。大工として働くかたわら小鹿田焼の里の唐臼を1人で作り続けている。
唐臼とは、ししおどしの原理で水の力を利用し陶土になる土を砕くもの。全長約6メートル、重さは大きいもので約800キロ。松の木を長方形に削り、水が溜まるよう一部を繰り抜く。
小袋さんはこの作業を約25年もの間たった1人で続けてきた。しかし、後継者は未だ見つかっていない。
「(前の人が)亡くなる前、“年がいったから無理だろうって、してくれないかって”ならなんとかしましょうと言って。誰しも自分の仕事を持ってるし、さぁって言って来られない」(唐臼職人 小袋信裄さん)
7月の取材時にも小袋さんから「誰か唐臼を継ぐ人はいないですかね」という声が…。
80歳。体もこたえるという。
予期せぬ豪雨で唐臼に被害
この日、腰の痛みに耐えながら修繕に向かったものの連日の雨で唐臼がある場所に向かう橋が浸かっていて作業を断念。
数日後、予期せぬ豪雨が里を襲う。里を訪れると、ほとんどの唐臼が修繕しなければならない状態となっていた。
小鹿田焼の陶工、坂本浩二さんも「いろいろ頼むことが多い、うちの唐臼の一部も替えてほしい」と話していた。
「小鹿田焼の里」の伝統を守るには
窯元などでつくる組合も唐臼職人の後継についてともに考えているが…。
なかなか後継者が見つからない理由について、小鹿田焼協同組合の坂本工理事長は「(里出身以外の人が入るのが)もちろん駄目じゃなく探さないといけない。組合としても保存会としてもやっている最中ですが、他の仕事が忙しいとか災害も多いので、そんなにポンと簡単に答えが出るわけではない」と話す。
「後継者を誰か見つけて後継ぎをつくって絶やさないようにしなければ。できる人がいなくなれば大変。 誰か見つけて、修繕しながら唐臼をつくって絶やさないようにしていかなきゃいけない」(唐臼職人 小袋信裄さん)
作り手の高齢化が進む中、「小鹿田焼の里」の伝統や美しい景観をどう守っていくか大きな課題を抱えている。
(テレビ大分)