拉致についての本気度が見えないトランプ

 
 
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今世紀最大の政治ショー、米朝首脳会談まであと1週間。
またトランプ米国大統領がワケのわからんことを言い始めた。

「非核化はゆっくり時間をかけてやればいい」
「最大の圧力という言葉はもう使いたくない」だと。

拉致についても「米朝会談で人道問題もおそらく取り上げるだろう」とあまり重きを置いてないようにも見える。
一体どうなってるんだ。
 

「自信」と「怯え」が交錯する金正恩

 
 

このトランプ発言には北朝鮮を応援する中韓政府はもちろん、なぜか日本の野党、一部マスコミも大喜びしている。
安倍外交の失敗だ、日本は蚊帳の外だと。

米朝会談をいったん断った時には「この男言われてるほど馬鹿じゃないかも」と思ったが、もしかしたら間違いだったかも。

北朝鮮の核ミサイル問題、一番悪いのは金正恩北朝鮮委員長だというのはわかっているのだが、実は一番話をややこしくしているのはトランプかもしれない。

その点、金正恩の方が読みやすい。
核ミサイルを完成に近づけた自信と、軍事と経済の圧力への怯え、という強気と弱気が交錯しているだけ。
 

『正気』と『欲望』の狭間で・・・

 
 

一方のトランプは側近や安倍首相の言うことを聞き、米国大統領として正しいふるまいをする『正気』と、中間選挙に勝って、弾劾の可能性をなくしたい!あるいはノーベル平和賞を欲しい!という『欲望』の間でフラフラしている。

2人とも似たようなものか。
もしかして似た者同士か!
これは世界の安全保障にとって迷惑極まりないことだが、我々は米国と軍事同盟を結んでいる以上、トランプに運命をある程度委ねなければならない。
 

日本は冷静な対応を

 
 

どうすればいいのか。
冷静になるしかないのだろう。

菅官房長官はトランプの「最大限の圧力という言葉はもう使いたくない」という発言について、「北朝鮮が行動するまで制裁を解除しない、とも発言しているので基本方針は維持されている」と冷静な受け止めをしている。
これでいい。

ただ6月12日の米朝会談はどう転ぶか全くわからない。
だって二人のフラフラしている変人がひのき舞台であいまみえるのだから。
戦争か平和か、いや暗殺、亡命、もしかしたらドタキャン。
なんでもありうる、くらいに考えておいた方がいいのではないか。

(執筆:フジテレビ 平井文夫 上席解説委員)

平井文夫
平井文夫

言わねばならぬことを言う。神は細部に宿る。
フジテレビ客員解説委員。1959年長崎市生まれ。82年フジテレビ入社。ワシントン特派員、編集長、政治部長、専任局長、「新報道2001」キャスター等を経て報道局上席解説委員に。2024年8月に退社。