ゴルフといえば青空の下、緑の芝生の上で楽しむというイメージだが、今、屋内でプレーできる「シミュレーションゴルフ」が全国的に注目されている。長崎市内でも2023年に入ってオープンが相次いでいる。その魅力と急増のワケを追った。
「気軽にゴルフ」が最大のメリット
長崎市中心部のある店舗で、平日朝8時半に屋内でゴルフを楽しむ人たちの姿がある。

「ナイスショット!ちゃんと当たったよね。これで240ヤードくらい」とサラリーマン3人が朝からプレーを楽しんでいる。彼らが訪れているのは、長崎市中心部のまちなかに2023年の夏にオープンしたシミュレーションゴルフの施設「Hauser Golf」だ。

利用者は「天候に左右されなくて時間も選べ、立地もいいし使い勝手がいい」「ハイスピードカメラが付いていて、自分のスイングの角度が画像で分かるので見ながら練習できるのがいい」と話す。

キーワードは「気軽にゴルフ」。シミュレーションゴルフはまちの中心部にあるので、移動手段や時間にとらわれないのが最大のメリットだ。
サラリーマンの3人も近くの会社に勤めていて、週に1回、朝から1時間ゴルフを楽しんで出社する。

利用者:
会社に若い部下が多いので、部下とのコミュニケーションの場になっていいかなと思ってやっている。自分もうまくないが、お互いのショットを褒めあったり指摘しあったりすると自然にコミュニケーションが生まれていい。

「Hauser Golf」の橋本大祐さんは「シミュレーションゴルフは海外や都会ではやっていて、アクセスの良いところでゴルフを気軽に練習できる。長崎にはなかったので自社のテナントで始めた」とシミレーションゴルフを導入した経緯を話す。

Hauser Golf・橋本大祐さん:
仕事前に朝利用する方やシニアで日中利用する方、仕事帰りに利用する方など、利用方法も人それぞれ

専用のマシンには世界200以上の有名ゴルフ場がモデリングされていて、好きなコースを選んでまわることができる。また、AIカメラがスイングの軌道やボールの回転数などを分析してくれるという。月額制で、1回50分で1,000円台と割安な料金で利用できるのも人気の秘密だ。
コロナ禍の空きスペースがニーズに
そんなシミュレーションゴルフが今、長崎市内でも増えている。2023年6月に登場したのを皮切りに9月、10月と新店舗オープンが続いている。中には24時間営業を売りにしている店もある。

なぜ、2023年に増えたのか?理由の一つに新型コロナの感染拡大を抜けて生活スタイルが戻ったことが挙げられる。

全国のゴルフ場の利用者数は約30年前は1億人だったが、減少が続き2020年には8,000万人ほどになった。しかし、新型コロナの自粛ムードが弱まった2021年から大きく回復し、2022年は9,100万人台と過去10年で最多となった。

プチブームが来ている今をビジネスチャンスと見て、異業種から参入するケースが全国的に目立つ。
広島県の書店は不振だったレンタル本事業から撤退し、全9打席のシミュレーションゴルフ施設に生まれ変わらせた。静岡県では、創業約320年の老舗の酒店が空いていた酒蔵を使って2023年にオープンさせるなど、コロナ禍の業績悪化でできた空きスペースの活用策として注目されている。

2023年10月にオープンした「かってにゴルフ部24h」も異業種から参入した。
本業は不動産会社だが、テナントが入らずに困っているオーナーたちにとって良い活用事例になればと、自社で管理していた空きテナントをシミュレーションゴルフ施設に改装した。オープンして間もないが、反応は上々だという。

ハウジングロビー・森田龍三代表取締役:
なかなかテナントが決まらない案件もあるが、1ブース10坪程度でできるので、そういった活用の仕方。収益的にもすごくいいので空きテナント、不動産の活用として面白い

空きテナントも活気のある施設に生まれ変わり、利用者のコミュニティーができると、まちににぎわいが戻ってくる。

また、将来的には若い世代の育成にも貢献できる可能性を語る関係者もいる。ジュニア世代のゴルフ選手は環境を求めて中学高校で県外に進学するケースが多いが、シミュレーションゴルフは立地がよく、プレーの分析もできるからだ。

長崎でも急増しているシミュレーションゴルフの施設の入会者は、2割ほどが初心者で、中にはフィットネスジム感覚で通う主婦もいる。ブースごとに仕切られていることで「こそっと」練習できるのも人気だ。

気軽にゴルフを楽しみたい人と空きスペースを活用したい人のニーズがマッチし、新たなビジネスチャンスとなっている。
(テレビ長崎)