願い事を書いて神社へ奉納する「絵馬」。名前や住所といった、個人情報を書くことが昔ながらのしきたりだが、抵抗を感じる人も多いのではないだろうか。そんな時代の変化に適した「絵馬」の用意が進んでいるという。

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導入のきっかけは参拝客の声

2023年も残すところ2週間余り。もうすぐ新しい年がやって来る。

徳川家康がまつられ、ご利益は勝負事や家内安全とされる、仙台市青葉区の仙台東照宮には、多くの絵馬が奉納されていた。

年間10万人ほどが参拝に訪れ、約3000枚の絵馬が奉納される東照宮。年が明ければ初詣。受験シーズンも間近ということもあり、様々な願いや思いが書かれた絵馬が境内の一角を埋め尽くしていた。

そんな絵馬の中に、願い事の内容がわからない、仙台東照宮とだけ書かれた絵馬があった。

願い事がなんと書かれている分からない絵馬が…
願い事がなんと書かれている分からない絵馬が…

神社の関係者に話を聞くと、「情報保護シール」を絵馬に貼っているのだという。願い事や名前を隠すことを目的に導入したもので、絵馬を奉納する際に無料でもらうことができる。利用者は年間で100人ほどにのぼる。

心の内に秘めた願いを、他人に見られることに抵抗がある

そんな参拝客からの声から、導入することになったという情報保護シール。導入後「恋愛や自身の目標といった願いを気軽に書けるようになった」と好評なのだという。

願いは「神のみぞ知る」

絵馬の個人情報保護の取り組みは、他の神社でも。菅原道真がまつられ、学問や安産にご利益があるとされる榴岡天満宮では、個人情報を保護するための絵馬が2種類あるという。

仙台市にある榴岡天満宮
仙台市にある榴岡天満宮

一つ目は「重ね絵馬」と名付けられた絵馬。

2枚の絵馬が組み合わさった絵馬で、中に願いを書き、その上にもう1枚の絵馬を重ねることで、願いが他人に見られることなく絵馬を奉納できる。まさに「願いは神のみぞ知る」絵馬だ。榴岡天満宮では、合格祈願の絵馬として使われているという。

「重ね絵馬」下の絵馬に願いを書き、上の絵馬を重ねることで他人に願いを見られることはない
「重ね絵馬」下の絵馬に願いを書き、上の絵馬を重ねることで他人に願いを見られることはない

もう一つは、2022年に導入したという、絵馬に着物に見立てた布を被せる「えまきもの」。

願い事を書いた絵馬に布をかぶせることで、個人情報が見えない状態で奉納することができる。いわゆる“SNS映え”を目的に、この絵馬を奉納する人も多いという。

「えまきもの」願いを描いた絵馬の上から着物をかぶせる SNS映えを狙い奉納する人も
「えまきもの」願いを描いた絵馬の上から着物をかぶせる SNS映えを狙い奉納する人も

榴岡天満宮で奉納される絵馬の全体の3割ほどにのぼるという「個人情報を守る」絵馬。導入の背景にあったのは、最初に訪れた仙台東照宮同様、「時代の変化」だった。

Q「重ね絵馬」や「えまきもの」を導入した背景は?
「やはり個人情報ということにはなります。願い事を見られる方がいたものですから、当宮としては見えないような効果があるものをと奉製しています。安心して勉学に励めるよう、少しでも心を込めて祈願していきたいと思いますので、お受けいただければ」
(榴岡天満宮 菅野棟之宮司)

榴岡天満宮 菅野棟之宮司
榴岡天満宮 菅野棟之宮司

ご利益は変わらない?

願い事をする人が、名前をはっきり書くのが古くからのしきたりとされる「絵馬」。今回取材した神社のいずれもが「人から目から直接見えなくとも、お参りした気持ちや絵馬に記した思いは神様に届く」「願いは神様に届く」と話してくれた。

願いは「神のみぞ知る」形でも、ご利益はきっと変わらない。伝統は時代に合わせ、少しずつ形を変えている。

(仙台放送)

仙台放送
仙台放送

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