エコバッグを使ったりゴミを分別したり、何らかの環境保護につながる活動をしている人もいることだろう。

そんな中で今、一部の動物園で使わなくなったスマートフォンなどを集め、コンゴ民主共和国のゴリラを守ろうというプロジェクトが行われている。

京都市動物園(出典:NPO法人テラ・ルネッサンス)
京都市動物園(出典:NPO法人テラ・ルネッサンス)
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携帯電話やスマホの回収を呼びかけているのは、京都にある認定NPO法人のテラ・ルネッサンスだ。

実はゴリラの生息地のひとつであるコンゴ民主共和国では、1998年以降 、IT機器に使われるレアメタルなどの天然資源の権益を巡って紛争が起こり、540万⼈以上が犠牲になっているという。

そこでテラ・ルネッサンスは、2010年からスマホや携帯電話を回収してレアメタルを再利用し、得られた資金でコンゴ民主共和国で被害にあった人々への支援に役立てる「ケータイforコンゴ」に取り組んできた。

(出典:NPO法人テラ・ルネッサンス)
(出典:NPO法人テラ・ルネッサンス)

そして今年は新たに、コンゴの自然破壊によって個体数が減少しているゴリラを保全するための呼びかけを実施しているのだ。

9⽉24⽇から⽇本でゴリラを飼育している6つの施設のうち4動物園で、スマホや携帯電話の回収箱を設置し協力を呼びかけている。

・上野動物園(※現在は回収終了)
・千葉市動物公園(2024年1⽉30⽇まで)
・⽇本モンキーセンター(12⽉24⽇まで)
・京都市動物園(12⽉27⽇まで)

実は、同会が野生動物の保全を呼びかけるのはこれが初めてだという。ではなぜ、これまで続けてきた「ケータイforコンゴ」でゴリラの保全を呼びかけることにしたのか?

NPO法人テラ・ルネッサンスの担当者に聞いた。

自然環境を守ることがゴリラ保全の貢献

――そもそも「ケータイforコンゴ」はなぜ始めることになった?

不要になったスマホや携帯電話の回収を行うことで、レアメタルの再利用を促進するとともに、コンゴ民主共和国で起きている紛争の現状を知ってもらいたいという目的から、2010年9月よりスタートしました。

1台あたり30円が寄付となり、テラ・ルネッサンスの活動を応援できる取り組みです。回収されたスマホは提携するリサイクル業者へ送られ、データなどの情報を適切な方法で破壊したのち、内部のレアメタルを回収しリサイクルされるといった流れになっています。


――今回の「ゴリラ」保全の呼びかけは、どうして始めることになった?

日本でゴリラを飼育する動物園さんの発案で始まりました。各動物園さんが、市民の皆様に対してゴリラに関心を持っていただく目的から、毎年9月24日の「世界ゴリラの日」にあわせ、これまでにも様々な取り組みをされています。その取り組みの一つとして、今年は弊会の「ケータイ for コンゴ」にご協力いただくことになった次第です。

⽇本モンキーセンターで飼育されている「タロウ」(出典:NPO法人テラ・ルネッサンス)
⽇本モンキーセンターで飼育されている「タロウ」(出典:NPO法人テラ・ルネッサンス)

――なぜ「ゴリラ」にスポットを当てたの?

スマホをはじめ携帯電話などの電子機器には「レアメタル」と呼ばれる希少な金属が利用されています。世界でも採掘できる場所は限られており、アフリカにあるコンゴ民主共和国はその一つです。また、コンゴは数少ないゴリラの生息地でもあり、それら鉱物資源の過剰な採掘に伴う森林伐採が行われることで、ゴリラの個体数が減るなどの問題があります。


――携帯やスマホの回収をすることで、どのような観点からゴリラの保全につながるの?

鉱物資源の過剰な採掘による影響を受けているのはゴリラだけではありません。コンゴでは鉱物資源の権益をめぐり紛争が悪化し、武装勢力が子どもを誘拐し兵士にしてしまう、いわゆる「子ども兵」といった問題をはじめ、現在も多くの人々が紛争の影響から貧困状態にあります。私たちはそのような人々に対して洋裁などの技術訓練を行い、収入を得られることで自立した生活を送ることができるようになるための支援を行っています。

また、現地における根本的な問題はお金で、さらにいえば安心安全に働く環境がないことです。安定した収入を得るための仕事や仕組みをつくることができれば、危険を伴う鉱山や武装勢力で働く必要がなく、ひいては自然環境を守れることからゴリラの保全にも貢献できると考えています。

既に終了の上野動物園では222個を回収

――ゴリラ保全の反響は?

大変ありがたいことに、たくさんの反響をいただいています。上野動物園では222個が回収され、新聞やテレビなどで取り上げてもらって以降、1日で回収した数が倍になった動物園さんもあると聞きました。

上野動物園の回収ボックス(出典:NPO法人テラ・ルネッサンス)
上野動物園の回収ボックス(出典:NPO法人テラ・ルネッサンス)

――「ケータイforコンゴ」全体では、今までにどれくらいの携帯電話を回収している?

開始から14年で、およそ2700台以上の回収にご協力いただきました。


――最後に読者へのメッセージがあればお願いしたい。

スマホやパソコンなどの電子機器は私たちの生活に欠かせないものでありながら、先に説明したような背景があることはあまり知られていません。不要になったスマホを回収することでレアメタルのリサイクルを促進し、コンゴの人と自然を守れることを知ってもらいたいと考えています。ぜひこの機会に、「ケータイforコンゴ」にご協力ください。

参加方法は、現在もスマホの回収をしている動物園さんに直接お持ちいただくか、遠方にお住まいの場合は、元払いのうえテラ・ルネッサンス事務局への郵送でも受け付けています。詳しくは「認定NPO法人テラ・ルネッサンス」のホームページやSNSをご確認ください。

京都市動物園で飼育されている「モモタロウ」(出典:NPO法人テラ・ルネッサンス)
京都市動物園で飼育されている「モモタロウ」(出典:NPO法人テラ・ルネッサンス)

買い替えなどで使わなくなったスマホでも、なんとなく捨てることができずに手元に残している人もいることだろう。環境保護を守るため、この機会に家に眠っている機種を寄付するのもいいかもしれない。

プライムオンライン編集部
プライムオンライン編集部

FNNプライムオンラインのオリジナル取材班が、ネットで話題になっている事象や気になる社会問題を独自の視点をまじえて取材しています。