自民党最大派閥安倍派の政治資金パーティーをめぐる問題は、松野官房長官をはじめ岸田政権の閣僚や党幹部の進退に注目が集まる展開となっている。FNN世論調査では、岸田内閣の支持率が政権発足以来最低を更新。

「BSフジLIVEプライムニュース」では石破茂自民党元幹事長を迎え、後藤謙次氏とともに派閥のあり方、政治とカネの問題について伺った。

調査結果が出る前に「安倍派を一掃」は順序が違う

新美有加キャスター:
12月11日、立憲民主党は松野官房長官に対する不信任決議案を提出(※番組放送後の12日に否決)。また岸田総理は安倍派の政務三役(閣僚・副大臣・大臣政務官)の15人を全員交代させる考えとも。石破さん、政局の現状は。

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石破茂 自民党元幹事長:
なぜこれが起こったのか、誰もきちんと説明していない。パーティー自体が違法なわけではないが、ノルマ以上に集めたお金がなぜそのように動き、何に使われたか説明を一切しないまま、安倍派を全部一掃するとか、総理ご自身が派閥をお辞めになるとか。明らかにすべきことは他にある。期限を区切って明らかにすべきで、そして初めて交代という話になる。

反町理キャスター:
検察の捜査結果が出るまで人事を動かすべきではない?

石破茂 自民党元幹事長:
そうではない。当事者なのだか、ら検察に指摘されなければわからないはずはない。当事者が調査した結果が出る前にとにかく安倍派は一掃だというのは、順序が違う。

政治ジャーナリスト 後藤謙次氏:
今回の人事で岸田総理が周辺に語っているのは「報道ベースで人事をやろうとは思っていない」。つまり強制捜査や家宅捜索など事実が動いた時点で考えたいと。安倍派一掃のような見出しが出ること自体にすごく違和感がある。事実解明がぼやけてしまう。

新美有加キャスター:
萩生田政調会長が記者団の取材に答えた。「閣僚や副大臣等が辞めなければならない事態となれば、政調会長の責任も同等かそれ以上。人事は総理の専権事項だが出処進退は自分で決めたい」。

政治ジャーナリスト 後藤謙次氏:
総理に対し、ある意味凄んだ発言と思う。松野官房長官に不信任案が出たが、これを自民党が否決するのは松野さんを容認する意味になる。その後、その人をどういう理屈でやめさせるのかという矛盾。安倍派を丸ごと辞めさせるならこっちも考えがあるぞと。

萩生田光一 自民党政調会長
萩生田光一 自民党政調会長

石破茂 自民党元幹事長:
別に党総裁から言われなくても、辞めるときは自分で辞めますよということでしょう。その矛盾について、不信任案の否決の前に辞める選択肢が話し合われていないとおかしいと思うが。だが安倍派だから全部ダメ、その他の派閥や無派閥は全部OKというのはどうか。他の派閥からも出たらどうするのか。国政の遅滞どころの騒ぎじゃない、自民党政権が終わる。

反町理キャスター:
野党について一点。維新・国民は補正予算に賛成したが、松野官房長官に対する不信任に反対するのか。説明がつかないのでは? 

石破茂 自民党元幹事長:
全然説明つかない。我々というより、維新や国民の議員さんが支持者にどう説明するのかという話。自公の予算案に賛成してくださったのだから、しんどいことも一緒にやっていただくのもあるべき話と思うが。反対なさったらよろしい。(※12日の採決で維新・国民は賛成に回った)

石破氏「派閥の解消は不可能」 派閥の本来の役割とは

新美有加キャスター:
FNNの最新の世論調査では、岸田内閣の支持率は前回から5.3ポイント急落し、過去最低の22.5%。不支持は71.9%。また岸田総理のこの問題に対する責任は「大いにある」が50.9%、「やや責任がある」が36.8%、合わせて87.7%。世論では80%以上の方が岸田総理に責任があると捉えている。

反町理キャスター:
総理自身の当初の反応は、総理ではなく党が対応する問題だとして距離を置こうとしていると感じられた。だが世論はそう見ていない。

石破茂 自民党元幹事長:
「責任を痛感しております」という言葉を政治家はよく使う。私も使ったことがあるかもしれない。だが責任とは、感じるものではなくて取るもの。党の運営に対して責任を持つのが総裁と幹事長で、それが嫌なら総裁になってはいけない。

反町理キャスター:
内閣総辞職という選択肢はあるのか。

石破茂 自民党元幹事長:
どうだろう。経済や安全保障環境が厳しい今、総辞職や自民党総裁選などをやっている余裕はない。予算成立時に、と岸田さんが心中密かに思うのはいいが。そこで岸田さんが思うところを述べ、衆議院を解散して主権者たる国民に判断してもらうことは責任の取り方かもしれない。

政治ジャーナリスト 後藤謙次氏:
この問題は結局、派閥が問われている。そして自民党は派閥の連合体で、自民党全体が問われている。岸田さんが派閥を解消しますと明確に訴える覚悟があればもっと動く。やれる・やれないは別に、そういう組織を作ると言うことは必要だと思う。

反町理キャスター:
石破さん、派閥の解消は可能か。

石破茂 自民党元幹事長:
不可能。 人間の本質として、人が3人寄れば派閥はできる。ただ我々は、民間の組織でも官庁でもなく、主権者たる国民から負託を受けている国会議員。主権者ではなく派閥のトップや派閥にお金を出してくれる企業の言うことを聞くことはおかしい、ということ。自民党の政調会は忙しく、どうしても来年度予算や税制など直近のことしか考えられない。50年、100年先の日本をどうしようかとか、すぐに票にも金にもならないようなことはやらない。だから、じっくりそれを研究する組織としての派閥。加えて考えが近い人の選挙応援、そして自分たちの領袖を総理にする目的という3要素のためであれば、派閥はあるべきだと思う。

自民党改革に立ち上がる若手がいない背景に小選挙区制の問題

反町理キャスター:
石破さんが当選1回生のとき、党の改革のために総理のところに押しかけたようなことが今、自民党の中で起きているか。

石破茂 自民党元幹事長:
知る限りはない。当時、私たち1回生・2回生が海部総理のところに何度も申し入れに行ったが。

反町理キャスター:
なぜ今、そういう若手議員がいないのか。

政治ジャーナリスト 後藤謙次氏:
やはり小選挙区という選挙制度。執行部が公認権を全て握っており、従順であることで次の自分の当選が確約される中で、誰が上司に反発するか。牙を抜かれて従順な子羊たちばかりというのが、今の迫力のない自民党。

反町理キャスター:
石破さんは幹事長経験者として、当選してきた若い連中の牙を抜きまくっていた、という実感はあるか。 

石破茂 自民党元幹事長:
ありません。幹事長だったとき、言いたいことを言ってくれと言った。執行部や幹事長の言うことは間違いだといくら言ってもらっても構わない、それが党の活力だと。投票率が5割で、うち5割の人が投票してくれれば当選できる。有権者の4分の1の支持で7~8割の議席を持っている恐ろしさを絶対に忘れるなと何度も言った。綺麗事のようだが、私たちは有権者に対して責任を持つのだと。戦前は衆議院議員だけが選挙で選ばれた名残で、今も衆議院議員を代議士と呼ぶ。代議士とは「代わりに議論する侍」。代わりに議論する侍が議論しないでどうするのか。

「次の総理にふさわしい人」世論調査の1位は石破氏だが…

新美有加キャスター:
FNNの世論調査「次の総理にふさわしい人は」。現職の岸田総理の全体支持率は2.5%とかなり低く、1位は石破さんの18.2%。自民党支持層の中でも17.5%で、岸田総理の5.5%に大差。

政治ジャーナリスト 後藤謙次氏:
ポスト岸田については、何をやる政権なのかを明確にした人が有力候補になると思う。

反町理キャスター:
石破さん、自分が出る・出ないは横に置いておいて、何をやる人が次の総裁になるべきか。 

石破茂 自民党元幹事長:
もう一度、国民政党・自民党に戻ること。つまり国民の一番近いところにいる党だと国民が思ってくれる自民党に戻ること。原点に戻ることだと思う。

反町理キャスター:
後藤さん、石破さんご本人を前に非常に失礼な話だが、石破さんが5回目の総裁選への挑戦をしたとき勝ち目はあるか。

政治ジャーナリスト 後藤謙次氏:
十分あると思う。どん詰まりに行けば、石破茂という政治家に賭けてみようという人は必ずいると思う。ただ石破さんはこの前も結局、河野太郎さんの応援団になってしまった。この立場から抜け出さないといけない。また、いつも鋭い政策発信があるが、それが前に行き過ぎることがある。もう少し後ろを振り向きながら歩調を合わせ、自分の段取りを組み立てながら世の中にもアピールしていくこと。

石破茂 自民党元幹事長:
私みたいな人間が必要とされるのは、本当に自民党が危機的な時だと思う。そのときに何もできないようではいけない。よく「あいつは議員宿舎の一階の食堂でこれ見よがしに勉強してるぞ」と言われていることは知っているが、経済政策でも安保政策でも、私はこの分野は存じませんとか、官僚の書いたものそのまま読むのなら、やらないほうがまし。 

反町理キャスター:
そういう状況の中、「石破さん、あなたが今必要なんだ」と何人かの方に言われたら出るんですね?

石破茂 自民党元幹事長:
はあ?  何の話ですか。 

反町理キャスター:
総裁選の話です。

石破茂 自民党元幹事長:
岸田さんの名前を衆参本会議場で書いたのは私たち。選んだからには責任を持つ。選んでおきながら、風向きが悪くなったらやめろというのは自民党のやるべきことではない。今、出るとか出ないとか、そもそも言うべきではない。 今は自民党の政策を国民に理解いただくための努力を、それぞれの議員が選挙区ですべきとき。
(「BSフジLIVEプライムニュース」12月11日放送)