12月8日は、関連する法律が制定されたことから「有機農業の日」とされている。環境にやさしい“持続可能な農業”といわれる有機農業。17年前に福島県へ移住し、有機農業に取り組む農家は、栽培の難しさに直面したが土づくりに活路を見出し、これからの可能性にワクワクしているという。
環境への負荷を低減
有機農業とは、認められた農薬以外の化学的に合成された肥料・農薬を使用せず、遺伝子組換え技術を利用しないことから、農業生産に由来する環境への負荷をできる限り低減する農業。
この記事の画像(17枚)最新の数値では、全国の耕地面積のうち有機農業を行っている面積は0.6%にとどまる。国は2050年までに25%に拡大することを目指している。
スーパーで実態調査
実態を探るべく、福島県福島市のスーパーへ。野菜売り場の一角には、福島で育てた野菜を集めたコーナーがあり、有機野菜であることを示す認証マークが付けられた野菜も並んでいた。
フォーズマーケット山下店の夏井隆一店長は「有機に関心のあるお客様が非常に多くなっている。特に年配の方やお子様をおもちのお客様に非常に人気」だと話す。
健康を気遣う人が注目
意識して有機野菜売り場を見るという買い物客からは「体にいい、健康にいいというイメージ。身内が病気になったりすると、少しでも体にいいものをと意識するようになった」「物価高で冷凍食品とか多めに買ってしまうので、バランスとるのにオーガニック系のものを選んでいる」という声が聞かれた。
高齢者施設などをめぐる移動販売でも「皆さん喜んで頂いて、毎日有機野菜を入れていますけど、評判いい」と担当者は話す。
自然の力をいかす栽培法
ファンを着実に増やしている有機野菜。どのように栽培されているのか、福島県二本松市で有機農業をはじめて17年の農家・関元弘さんを訪ねた。
ダイコンが収穫の時期を迎えている畑を見てみると…雑多な感じがする。関さんは「除草剤も使わないし、別に草生えてたって競合しなければ取る必要ない」と話す。
その証拠に土の中には、見事なダイコンが育っていた。関さんは「ほったらかしとは違う。いかに自分の都合のよいように、自然の力をいかすかってことをイメージしながら畑を作っていく」と説明してくれた。
はじめての有機農業
かつて農林水産省に勤めていた関さん。「農業がしたい」と、妻の奈央子さんとともに2006年に東京から二本松市へ移住した。
せっかくなら環境に優しい有機農業をと軽い気持ちではじめたそうだが…「私の耕作している畑は、ほとんどが元桑畑。開墾して出来たところで、山砂ベースだった。ほ場生態系も土も出来ていないところで、最初野菜をつくった。まぁ収穫できないんだよね。はじめてだから病気はでるわ、虫はつくわ。なんか有機農業って大変だなと思った」と振り返る。
辛抱強く土づくり
直面した厳しい現実を打ち破るきっかけになったのは、辛抱強く行った”土づくり”だった。刈った草や廃棄してしまう野菜などの有機物から作る「堆肥」を積極的に活用。
また、畑を遊ばせることなく様々な種類の作物を常に育てるようにした。「土の中に有機物を入れるように入れるようにしていく。そうすると、有機物は微生物のエサだから、微生物も増えるし土がよくなれば作物がよくなる」と話す。
有機農業 17年の答え
土が変わることで、人間に都合の悪い雑草は生えてこなくなり、種をまくタイミングに気をつければ、病気や病害虫に極端にやられることもなくなったという。関さんは「栽培17年の答えはそこなの。“生物相を豊かにすること”多様性とサステナブル(持続可能)だ!」と語る。
無限の可能性にワクワク
有機農業の良さは、自然環境を守るだけではない。味も濃くエグみを感じないその食味も、有機農業で育てた野菜の魅力。
関さんは「日本はバイオマスの生産量が多い。刈っても刈っても雑草が出てくるように、無限の資源。無限の資源を畑にいれていくことで、持続可能で無限の可能性がでてくるような気がする。ワクワクしますね、それ考えると」と話した。
関さんが「土の力・生き物の力で育ててもらう」と話していた有機農業。大いなる可能性を秘めた、持続可能な農業に今後も注目だ。
(福島テレビ)