小中学校などで提供された給食に、基準値を超える「赤カビ」を含む小麦が使われていた問題で宮城県内で影響が広がっている。問題の小麦が使われた学校給食は、12月8日午後4時半時点で、県内12の自治体での提供されていたことが確認された。健康被害を訴えた児童生徒は20人に上っている。被害は本当に防げなかったのだろうか。
この記事の画像(10枚)基準値超カビ毒小麦が給食で…
「岩手県産のナンブコムギから基準値を超えるカビ毒が検出されたと報告受けた」
12月7日、宮城県石巻市の定例会見で、斎藤正美市長は、基準値を超える赤カビが検出された岩手県産の小麦を使った「はっと汁」が、市内21の小中学校の給食で提供されていたことを明らかにした。9月と10月で3回も提供されていたという。
今回の問題の発端は、おう吐などを起こす恐れがある赤カビが岩手県産の小麦から検出されたこと。11月9日、販売先の関東の製粉メーカーの自主検査でカビ毒が検出されたことが判明。
販売元のJA全農いわてが販売前に行ったサンプル検査では、基準値を超えるカビ毒は検出されていなかったが、その後JAが小麦を自主回収して調べた結果、基準値の約4倍のカビ毒が検出された。JA全農いわては11月29日に会見を開き、経緯を説明し謝罪した。
JAの調査で基準を超えていたのは、JA花巻藤根ライスセンターで調整され、JAが2022年9月下旬以降出荷したナンブコムギ711トンと特定された。
「連絡漏れ」原因で給食提供も…
宮城県内で被害が初めに発覚したのは気仙沼市。12月1日に市内12の小中学校の給食で、基準値を超えた赤カビが検出された小麦のせんべいをつかった「せんべい汁」が2282食分提供されていた。小中学生3人が医療機関を受診。症状は軽かったという。
この給食との因果関係は分かっていないが、11月28日時点で、せんべいの取引業者から赤カビが検出されたと報告を受けていたが、職員のミスで市への連絡が漏れていたことで給食は提供されてしまっていた。
さらに問題は広がりを見せる。5日には、仙台市内の小学校や県立支援学校でも、同じ食材を使った給食が提供されていたことが分かったのだ。
仙台市教育委員会によると、11月27日に市内10の小学校で、問題の小麦を使った「せんべい汁」が給食で提供されていた。13人の児童がおう吐や腹痛の症状を訴えた。
さらに、同じ食材を使ったせんべい汁が、11月、岩沼市と女川町の県立支援学校2校でも提供されていたこともわかった。岩沼の支援学校では、問題を把握した後に給食が提供されていたという。県学校給食会の確認漏れが原因だった。
その後も、7日には角田市が市内7の小中学校で、9月と11月に、同じ小麦を使った「すいとん汁」が提供されていたと発表。
大崎市も、市内2つの中学校で11月中旬の2日間、「せんべい汁」が給食で提供されていたと発表した。
石巻市と角田市は、これまでに健康被害は確認されていないとしているが、大崎市では4人の生徒が腹痛の症状を訴えているという。
「まだあった」赤カビ小麦給食
続々と広がりを見せる「赤カビ小麦」給食問題。7日、県内のすべての自治体に確認したところ、東松島市の11の小中学校、登米市では7の小中学校などで、七ヶ浜町でも5の小中学校で問題の小麦が使われた給食が提供されていたことが分かった。
さらに、大崎市の県立支援学校で10月、給食として提供された「カレーはっと」約250食に、亘理町の小中学校7校でも給食の「はっと汁」約2300食に、問題の小麦を使った「冷凍すいとん」が使われていたことが明らかになった。
この記事を執筆している今も、富谷市の小中学校で、問題の小麦が使用された給食が提供されていたと市が発表した。
これまでに県内で体調不良などを訴えた児童生徒は20人にのぼっていて、県は、納入業者及び関係機関と連携し、再発防止と安全安心な給食の提供に努めたいとしている。
基準値を超える赤カビが検出されたのは11月9日。JA全農いわてが会見を開いたのは、その約20日後の29日。この会見の前日の28日には、県学校給食会は業者から問題の連絡を受けていた。
「防げた被害があったのではないかー」疑問は大きくなるばかりだ。
(仙台放送)