見ない日はないというくらい街中の至るところにある広告。
普段はあまり注視しない人も多いと思うが、ひと目でしっかり印象に残りそうな宣伝活動を行うロボットが登場した。

それが、体の前後に液晶ディスプレイを搭載した大型のサイネージロボットだ。ロボットの販売やイベント展開などを手掛けるヴイストン株式会社(大阪市)が試作機として開発した。
人間が看板を付けたいわゆる「サンドイッチマン」のロボット版で、その名も「サンドイッチロボ」。身長は181cmで、縦約53センチ×横94センチのディスプレイを縦向きに搭載。本体重量は搭載する機器によって変化するが概ね70kg前後となる。
単純にディスプレイに広告を映すだけではなく、映像とロボットの動きや音声を連動させることができ、「動きやコミュニケーションを伴った、印象に残る演出が可能」とのことだ。
公開されたYouTubeのショート動画では、ロボット自身が「道行く人たちの視線は私に釘付け間違いなしです」とアピール。またロボットの形を活かして服を着せたような演出も実演している。

さらに、メロディに合わせてロボットが歌って踊るような動画も公開。たしかに町中でこんなロボットを見かけたら目を奪われてしまいそうだ。

実は「サンドイッチロボ」は、同社がすでに発売している研究開発用ロボットや台車ロボットの部品を活用している。そのため、ゼロから開発・製造するよりも迅速で安価に試作できたという。
この「サンドイッチロボ」は11月29日~12月2日まで東京ビッグサイトで開かれた「2023国際ロボット展」に展示された。ただし、このまま発売することは想定しておらず、既存製品のカスタマイズ事例として参考にしてほしいとのことだ。
しかし、今やデジタルサイネージはごく普通に見るようになった中で、なぜそれをロボットに載せようと考えたのか?迅速に開発できたというが実際にはどのぐらいの期間だったのか?
ヴイストン株式会社の担当者に聞いてみた。
デジタルサイネージの課題解決策を提示したい
――なぜ「サンドイッチロボ」を開発することになった?
ヒト型のロボットに大型のディスプレイを搭載するというアイデアそのものは、昔からよくあるパターンで、弊社以外にも様々なメーカー様にて試作・展示などが(過去から)実施されてきたものであると考えております。
また、ここ最近はデジタルサイネージのソリューションが多くの駅構内や公共施設に普及しており、「デジタルサイネージ」というものへの理解や、同時にその限界のようなものも認知され始めている時期であると認識しております。
今回「サンドイッチロボ」を試作した背景につきまして、第一には、上述のような『よくあるアイデアではあるが、何かのタイミングで弊社でも作ってみたい』というロボットメーカーとしてのチャレンジ精神というものがございます。
同時に、第二の視点として、デジタルサイネージがこれからさらに普及していく中で、おそらく“最初ほど人目を引かなくなった”といった課題感が生まれてくるであろうという想定のもと、ロボット専業メーカーである弊社の観点での、その課題への解決策の提示を行いたい、という意図がございます。
――ゼロから開発・製造する場合より、どのぐらい早く開発できた?
この点につきましては大変ご回答が難しい内容で、ロボットの開発においてはその内容や難易度により、必要な開発期間は大きく変動いたします。
今回の「サンドイッチロボ」につきましては、弊社での既存製品の部品および技術を効果的に活用した結果、実際の設計・製造は数カ月程度で実施できております。ただし、これには「2画面を搭載した大型のコミュニケーションロボットを作りたい」といった、以前からあたためていた構想部分の期間は含まれておりません。

――単純なサイネージ映像ではない、「動きやコミュニケーションを伴った、印象に残る演出」とはどんなもの?
おそらくこれは現物を見ていただかないと伝わらない部分があると思うのですが、単なる「画面」であるデジタルサイネージと比較し、手や足がある「ロボット」の存在感を伴う広告媒体は、体験としてのリッチさに大きな違いがあると感じております。
ロボット専業メーカーである弊社としては、ロボットの持つ「存在感」に大きな可能性があると信じており、今回の「サンドイッチロボ」は、単純な映像・広告といった媒体に、それを大きく超える「存在感」「実在感」を付与することができる可能性があると考えております。
発売を想定していない理由
――なぜ発売を想定していない?
上述の通り、弊社としてもまだ「作ってみた」段階であること、また、内部のプログラム作成や制御についてはかなり専門家向けである点なども勘案し、現時点での仕様で大きく拡販する予定があるものではございません。
――試作機とのことだが、これからどんな機能を搭載する予定?
この点につきましても、お客様からどのようなご反応があるかによって変わってくると考えております。
たとえば「簡単に使えるようにして欲しい」「もっと大きな or 小さな 画面にして欲しい」「多言語対応してほしい(これは現行でも技術的には可能ですが…)」「カラーバリエーションが欲しい」といった様々なご要望が想像されますが、どの内容を実現していくことが弊社としての理想に近いか、また、コミュニケーションロボットとして「あるべき姿」であるかなどを幅広く見極め、改良に努めていく想定でございます。
最近ではデジタルサイネージを見慣れてしまったという人も多いかもしれない。そこに「サンドイッチロボ」が登場したら大いに注目を集めるのではないだろうか。現状は市販の予定はないとのことだが、街なかで見かける時を楽しみに待ちたい。