自民党の安倍派で、政治資金パーティーの収入の一部が、派閥から所属議員に“キックバック”され裏金になっていたとの疑惑が浮上した。

関係者によると、10人以上の議員が収入を裏金化していた疑いがあり、東京地検特捜部は政治資金規正法違反での立件を視野に捜査を進めている。

この疑惑について政治ジャーナリストの田崎史郎氏に聞いた。

10人前後の議員辞職も

ーー安倍派の裏金疑惑はどれくらい大きな問題?

これは政治資金規正法違反にあたり、罰則としては禁固刑や100万円以下の罰金、また、公民権停止規定があるため公職に就くことができなくなる場合があります。

政治ジャーナリスト・田崎史郎氏
政治ジャーナリスト・田崎史郎氏
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しかしもう1つ大きな問題は、政治資金収支報告書への不記載があったのが、1人や2人ではなく、おそらく10人前後に達するとの見込みです。

これまでにあった事件では、大体1人が関わっていて、その人を逮捕、起訴すれば終わりというケースがほとんどでしたが、今回の疑惑は「リクルート事件」級の広がりを持つのではないかと政界で思われています。

そうなると、罰則そのものはそれほど重くなくても、10人前後が議員辞職することになれば、来年4月の補欠選挙に繋がっていく意味で影響が非常に大きいです。

「リクルート事件」で退陣に追い込まれた竹下内閣
「リクルート事件」で退陣に追い込まれた竹下内閣

ーーこの責任は誰が取ることになる?

そこは難しいところで、派閥の会計責任者は国会議員ではなく、民間の方が事務局長を担っています。

直接的な責任は会計責任者にありますが、会計責任者の一存でできるわけがなく、そこはやはり会長に次ぐ、副会長クラス、あるいは、事務総長クラスが関わっていたと思われ、そこが捜査の重要なポイントになります。

捜査の山場は閉会中の1ヶ月

「リクルート事件」では、閣僚が相次いで辞任し、竹下内閣が退陣に追い込まれた。

今回の疑惑も“岸田おろし”に発展する可能性はあるのか。

ーー政権への影響は?

捜査の進展によっては、自民党および政権への打撃が広がってくると思います。

捜査が本格化するのは、12月13日に臨時国会が閉会して、来年の通常国会の召集が1月20日過ぎと思われているので、国会閉幕中の14日以降の1ヶ月余りに大きな山場を迎えると思われます。

そこでどういった方々が摘発されるかが問題になってきます。

安倍派の事務総長・高木国対委員長
安倍派の事務総長・高木国対委員長

ーー岸田総理の責任は?

自民党総裁としての責任は当然ありますが、派閥としていい加減な会計処理を行っていたのは安倍派と二階派です。

岸田総理が会長を務める岸田派や茂木幹事長が会長を務める茂木派(平成研究会)は、しっかりと処理を行っていたと見られています。

よって、ターゲットとなるのは安倍派と二階派です。

安倍派の事務総長経験者の松野官房長官
安倍派の事務総長経験者の松野官房長官

ーー岸田おろしまでは行かない?

問題を起こしたのは主に安倍派で、その後始末で総裁が辞めざるを得なくなる可能性は低いと思います。

自民党の総裁には、各派閥に対する指導監督権はありません。
お金の問題を含め、各派閥の独立性が認められているため、総裁は口出しできないようになっています。

よって、政治責任としては大きいですが、党内で岸田総理の責任を問う声はあまり出てこないと思います。

疑獄事件につながる可能性も

一方、田崎氏は、捜査次第では「ものすごい疑獄事件につながる可能性がある」と指摘する。

ーーキックバックはいつ頃から横行?

安倍派では長くやっていたのではないか、という人もいますが、いつからやっていたかはわかりません。

これは政治資金収支報告書に記載していれば何の問題もないことです。

安倍派のパーティー(2022年5月)
安倍派のパーティー(2022年5月)

しかし国会議員同士、あるいは、国会議員と地方議員との間で表に出せないお金のやり取りがあったり、遊びや私腹を肥やすためのお金で収支報告書に記載できなかったということが考えられます。

今後捜査がどのように進み、誰が摘発されて何人に及ぶかまだわかりませんが、捜査次第ではものすごい疑獄事件につながる可能性があります。

※FNNでは「自民党派閥の政治資金問題」を継続取材しています。情報提供してくださる方は、ぜひこちらまでご連絡ください。