イスラエルとハマスは戦闘休止期間の2日延長で合意したが、その最中にガザ地区で戦闘が起こり、双方が互いを非難する事態に。「BSフジLIVEプライムニュース」では、パレスチナとイスラエル双方の大使をそれぞれ迎え、最新情勢や今後のガザ地区の統治・管理などについて中東研究者を交え議論した。
「イスラエル対ハマス」の戦いをパレスチナ自治政府はどう見るか
新美有加キャスター:
パレスチナ自治政府とイスラム組織ハマスとの関係。1994年にパレスチナ自治政府が設立され、主流派であるファタハが統治。しかし、2006年の総選挙でハマスが第1党となり、翌年にガザ地区を武力掌握し実効支配。2011年に統一政府の樹立でファタハとハマスが合意・調印するが分裂。2017年に和解したが、現在もハマスがガザ地区を実効支配。
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ワリード・シアム 駐日パレスチナ大使:
現在、自治政府とハマスとの公式の関係はない。本来PLO(パレスチナ解放機構)が掌握すべきところをハマスが実効支配している状況。私たちは違う考え方を持っている。
江﨑智絵 防衛大学校准教授:
2017年の合意はどこまで履行されていたのかが問題。まだ対立が続いていると見るべき。
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新美有加キャスター:
そんな中、戦闘休止と人質の解放交渉が行われている。5日間でハマスは81人、イスラエルは180人をそれぞれ解放・釈放。だが、ガザ北部で戦闘があり、双方が合意違反だと非難。合意破棄の懸念が広がる。
江﨑智絵 防衛大学校准教授:
ボタンの掛け違いはありながら、双方が合意内容を必要としている面が勝っている状況と見ている。
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反町理キャスター:
ハマスとイスラエルの交渉に対するパレスチナ自治政府の関与は。
ワリード・シアム 駐日パレスチナ大使:
今回は一歩引いて関与している。しっかり合意がなされ、双方から人質が釈放されることを望む。私たちは現状をイスラエルとハマスの戦争ではなく、イスラエルとパレスチナ市民の戦争だと考えている。
パレスチナ自治政府の正統性は? なぜ選挙ができないのか
新美有加キャスター:
イスラエルのネタニヤフ首相は、この戦いのゴールについて目標を3つ掲げた。「ハマスの排除」「人質の全員返還」「ガザがイスラエルにとって再び脅威とならないようにする」。
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ワリード・シアム 駐日パレスチナ大使:
3つ目については、イスラエルが軍事的な占領をやめ、1967年の国連安保理決議の状態(ヨルダン川西岸・ガザ含む占領地域からのイスラエル軍の撤退)に戻すこと。イスラエルは戦争犯罪を行っている。パレスチナ人が国家を持つ権利を認めねばならない。
反町理キャスター:
ハマスは明らかに、連れてきた人質を周囲に置いて盾のように使っている。このやり方をどう評価するか。
ワリード・シアム 駐日パレスチナ大使:
ハマスとイスラエル双方が犯罪を犯しており、私達は国際的な調査が必要だと考える。皆が法廷で裁かれるべき。
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新美有加キャスター:
江﨑さんの指摘するパレスチナ自治政府が抱える4つの課題は「選挙の無期限延期」「アッバス議長の後継者問題」「汚職の蔓延」「ファタハとハマスの対立」。
ワリード・シアム 駐日パレスチナ大使:
国土にイスラエルの兵士が1人もいない状態になれば選挙は行える。今は軍事的に占拠されており、選挙を行えば投票箱を奪われてしまう。占拠と植民地化が終わらなければ選挙は行えない。
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江﨑智絵 防衛大学校准教授:
2006年以来、選挙は延期が繰り返されてきたのが現実。人々も統治の正統性について大きな疑問があると思う。
反町理キャスター:
国連の選挙監視団もある。選挙をやればハマスに負けてしまうから選挙を先送りして逃げているのでは。
ワリード・シアム 駐日パレスチナ大使:
エルサレムのパレスチナ人が選挙を行うことをイスラエルが認めれば、明日にでも選挙は行える。でもイスラエルはダメだと言っている。
ネタニヤフ首相の言う「ハマスの排除」は具体的に何を意味するか
新美有加キャスター:
ここからはコーヘン駐日イスラエル大使に伺う。イスラエルとハマスは4日間の戦闘休止を2日延長することで合意し、それぞれ人質と収監されていた人を解放・釈放してきた。だが、ガザ北部で戦闘が起き、互いに批判する事態に。
ギラッド・コーヘン 駐日イスラエル大使:
私達が考えているのは、合意にしっかり従いプロセスを進めていくこと。
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反町理キャスター:
休戦が延びていく状況はいつまで続くか。
ギラッド・コーヘン 駐日イスラエル大使:
ハマスの一方的な攻撃で、イスラエルは10月7日から戦争状態に入らざるを得ない状況に追い込まれた。人質の解放が必要で、ガザにおけるハマスも抑え込まなければならず、そのためには軍事力の行使も必要。将来の交渉はどうなるかまだわからない。
反町理キャスター:
ネタニヤフ首相は「ハマスの排除」など3つの目標を挙げた。具体的にはどういうことか。
ギラッド・コーヘン 駐日イスラエル大使:
ハマスがガザをこれ以上牛耳らないようにすること。イスラム国と同様、排除しなければいけない。テロリストは人の言うことに聞く耳を持たない。軍事的な脅威をもって即座に人質を解放するよう働きかけている。また、イスラエルに捕らえられているパレスチナ人は人質ではない。イスラエル人を殺した犯罪者を捕らえているだけ。
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反町理キャスター:
イスラエル国内の世論調査では「ハマスによる攻撃の責任はネタニヤフ政権にある」が84%、「ネタニヤフ首相が首相にふさわしい」は27%。政権の強硬策が必ずしもイスラエルの国民から支持されていないと見える。
ギラッド・コーヘン 駐日イスラエル大使:
10月7日のハマスによる攻撃では、イスラエルに失敗があった。調査が必要。だがほとんどのイスラエルの人たちは、人質を解放せよ、ハマスを排除せよというこの戦争の目的を支持している。
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新美有加キャスター:
これまでの戦闘でイスラエルの死者数は1200人とされるが、11月27日時点でガザ側は1万5000人以上。多数の民間人、子供も含まれる。イスラエルの自衛権の行使は認められているが、やり過ぎだという議論も。
宮田律 現代イスラム研究センター理事長:
イスラエルの軍事力が圧倒的に有利であり、戦闘の進行につれてパレスチナ側の犠牲者が圧倒的に増えるのは過剰な攻撃のためではないかという声がある。停戦を呼びかける世界の声にイスラエルはどう応えるか。
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ギラッド・コーヘン 駐日イスラエル大使:
イスラエルが戦争を始めたわけではない。巻き込まれた人々の命が失われたことは非常に遺憾に思うが、私たちが意図したものではない。ハマスは民間人を盾に使い殺害もいとわないが、私たちの目的は市民の殺害ではない。これでイスラエルにプレッシャーをかけるのは間違いだと思う。私たちは自分たちが生存していく権利を守らなければいけない。
反町理キャスター:
正当防衛であって、過剰防衛ではないと。大使はハマスを強く批判される。だがこれまでのイスラエルの姿勢は、ハマスと自治政府を競わせてパレスチナが統一国家をつくることを先送りさせよう、という外交上の作戦だったという見方がある。これは間違っているか。ハマスを飼い慣らして大きくしたが、噛み付かれたから叩こうとしているように見える。
ギラッド・コーヘン 駐日イスラエル大使:
ハマスはテロ組織。できたときから変わっていない。私たちはハマスを徹底的に排除するというキャンペーンを行っている。ハマスはガザを出て行くか、平和にきちんと従うか。テロリストの範囲としてガザ地区やヨルダン川の西岸を使うことは絶対に容認できない。
イスラエルは今後のガザ統治をどう考えているか
新美有加キャスター:
10月7日以降、ヨルダン川西岸では子供を含むパレスチナ人231人が殺害されている。
宮田律 現代イスラム研究センター理事長:
特に極右の入植者たちによる暴力が激化し、国際社会も懸念するようになっている。
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ギラッド・コーヘン 駐日イスラエル大使:
入植者がパレスチナ人を殺害したりした場合、罪に問われるべき。だがパレスチナ人はハマスの指揮の下、例えばユダヤ人を殺せば5000ドル、さらに殺せば倍額、というような教育をしている。
反町理キャスター:
1993年のオスロ合意をイスラエルはまだ守っているはずだが、パレスチナ人の居住区域となっているヨルダン川西岸にイスラエル人が入植して勝手にそこに農地や街を作ることは、オスロ合意を壊しているように見える。
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ギラッド・コーヘン 駐日イスラエル大使:
パレスチナが合意を破り、ヨルダン川西岸やガザを支配している。私たちの提案を受け入れず一方的に支配をしていて、どうやって信頼ができるのか。ヨルダン川西岸にユダヤ人が居住する権利がないのはおかしい。
新美有加キャスター:
イスラエル諜報省から流出したとされる秘密文書によれば、ガザの統治には3案があり、うちC案ではパレスチナ人を居住させずにシナイ半島に退避させるとしている。
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ギラッド・コーヘン 駐日イスラエル大使:
ハマスがこれ以上ガザを統治することはない。またイスラエルにガザを支配する意思はない。だが誰がここを統治しようとも、平和を守らなくてはならない。パレスチナ人にも、平和の下でイスラエルと同じような自由で繁栄した生活をする権利がある。
反町理キャスター:
ならばこのC案はないはず。パレスチナ人をシナイ半島に移すとは、まるで民族浄化。この選択肢をイスラエルが真面目に考えていると僕は思いたくない。
ギラッド・コーヘン 駐日イスラエル大使:
それは現実的な計画ではないと思う。平和のもと、パレスチナの隣人として共存するということ。
(「BSフジLIVEプライムニュース」11月29日放送)