近頃は昭和レトロがブームなどとも言われているが、一味違う懐かしさを味わうことができそうな宿泊施設が静岡県にオープンした。
![(出典:東海自動車)](https://fnn.ismcdn.jp/mwimgs/0/4/700mw/img_04f6ffdd3e71e8fb970a2b95b45ef58373724.jpg)
東海バスグループの東海自動車株式会社(静岡・伊東市)が西伊豆町に11月17日に開業したのは、実際に使われてたバス案内所と路線バスをリノベーションして並べた、全国的にも珍しい宿泊施設だ。
コンセプトは“バスと過ごす”
コンセプトは“バスと過ごす”で、この「バス」と「ステイ(過ごす)」を組み合わせて「ばすてい」と名付けた。建物部分は昨年3月まで「宇久須(うぐす)案内所」として使われていた施設を利用している。
1950年に建てられた築73年の木造平屋で、広さは約72平方メートル。かつては鉄道との直通乗車券を販売する「宇久須駅」としても親しまれ、現在はその名を木彫りの看板に掲げている。
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一方のバスは、実際に路線バスとして1999年から今年4月まで使用した「いすゞ・ジャーニー」で、東海バスグループが所有する最後の1台を、かつて伊豆半島を走っていた当時のカラーに塗装している。
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宿泊施設になった今、案内所の待合室は飲食可能なダイニングルーム、カウンターと事務室はキッチンに生まれ変わった。
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倉庫などに使われていた部屋は、浴室やシングルベッド2台を備えた寝室にリニューアルされている。
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またバスの車内には運転席が残されており、ハンドルや行先表示ボタン、降車ボタンの操作などが好きなだけ楽しめる。そのほか、座席を向かい合わせたボックス席や、シングルとセミシングルのベッドを備えており、こちらにも宿泊できるという。
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なお「ばすてい」の正面には、現在も運行する東海バスの「宇久須バス停」があり、現役のバスが停車したときは「待合室の頃と同じ風景」を味わえるという。
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宿泊の定員は建物に2人、バスに3人の計5人。予約はクレジットカードのみで、チェックインなどの手続きはすべてインターネットで行い、料金は1棟1泊3万4000円から(税込)。食事は自炊の他、別料金で地元の民宿や漁協の協力でバーベキューセットや刺し身などの用意もできるとのことだ。
![(出典:東海自動車)](https://fnn.ismcdn.jp/mwimgs/8/5/700mw/img_85505e744f252ae18f444491c79a8a511326210.png)
バス案内所を宿泊施設にするのはあまり聞いたことがないが、こんな発想はどこから生まれたのだろうか? 東海自動車株式会社の担当者に聞いた。
最盛期は“伊豆観光ブーム”の昭和30~40年
――バスの案内所を宿泊施設にするアイデアはどこから生まれた?
2022年3月31日に案内所が閉鎖となり、建物を壊して新たな活用を行うのか、撤退するのか決めることになりました。
西伊豆地区においては人口減少という社会問題を抱えていることから、地域の活性化のため撤退ではなく何か賑わいのある新規事業を行えないか。また、土地が約60坪と狭く新たな活用は難しいため、築73年の古民家である建物の良さを活かせないかと考えました。
さらに、バスについては廃車になると多くは解体されるので、解体せずに何か活用できないかを考え、バスの降車ボタンは子供たちにも人気があるので、普段、バスの乗車時にはできないような体験を一日中楽しめる活用方法として、最終的に宿泊施設に至りました。
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――参考にした宿泊施設などはあった?
他にあるかどうかは分かりませんが、特に参考にしたものはないです。
――「ばすてい」を進めるのにあたって苦労したことは?
バスや案内所としての良さを残しつつ、宿泊施設としてのレベルを確保することです。
――宇久須案内所が最も栄えた時はどのぐらいの利用があった?
昭和30~40年ごろに伊豆への観光ブームがあり、多くのお客様の利用があったようですが、詳しい資料が残っておらず、客数、バスの本数は分かりかねます。
――バスの車内に泊まるとき、これからの季節は寒くない?
スクリーンカーテンを設置してあります。車内にはエアコンを設置してあります。
宿泊者「バス好きなら是非とも一度は訪れたい施設」
――行先表示は文言も変えられるの?
登録してあるものについては、操作して表示を入れ変えることができますが、オリジナルの文言を作成することはできません。
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――オープン以降の予約状況は?
11月17日のオープン以降、徐々にですがご予約いただいております。年末年始は、まだ空室がございます。(編集部注:11月30日時点)
――すでに宿泊した人からはどんな感想が寄せられている?
・唯一無二の「すてい」を楽しむことができる。
・バス好きなら是非とも一度は訪れたい施設。
・他のホテルや旅館などと全く異なる宿泊体験ができる。
との感想をいただいております。
――宿泊客にはどのようにくつろいでほしい?
普段バスに乗車した時にはできないさまざまな体験をご用意していますので、存分にお楽しみいただければと考えております。
![(出典:東海自動車)](https://fnn.ismcdn.jp/mwimgs/2/3/700mw/img_23794545644160e62289231348dc972b86095.jpg)
この「ばすてい」周辺に、は美しい景観を誇る宇久須海水浴場をはじめ、港・温泉・ガラス工房などの観光資源も豊富に存在しているという。バスやレトロが好きな人は、楽しい一夜を過ごすことができそうだ。