いとう王子神谷内科外科 伊藤博道院長:
医薬品は空前の“せき止め不足”ですね。現場で頻度が高く一番困っているのが、なんといってもせき止めと去たん剤の不足。もちろん薬は少しずつ入ってきてはいるものの、こちらの方で必要量がそれを上回るスピードで増加していると。

この記事の画像(14枚)

「めざまし8」にそう話すのは、都内でクリニックを営む伊藤博道院長です。
今、医療現場で「薬不足」が大きな問題になっているといいます。

インフルエンザやプール熱など、激しいせきの症状を伴う病気が流行する中、「せき止め」やたんを切る薬が足りず、街の薬局でもほとんどの在庫が“空”。
残っている薬も、あと2~3日でなくなってしまうといいます。

再注文しようとしても、業者に在庫がなく、入荷時期は未定です。

薬不足を感じている人:
1カ月前ぐらいにちょっと結構のどをひどくしたので、せき止めが処方はされたんですけど、薬局にほとんど置いてないということで、3軒くらい電話して、在庫があるか確認して、なんとかあるところを見つけて、もらいに行ったみたいな感じですね。

体調が悪い中、遠くの薬局に行ったり、何件も問い合わせしなければいけない状況に。

インフルエンザやプール熱、新型コロナなどの猛威が収まらない中、薬不足はいつまで続くのでしょうか?専門家に詳しく聞きました。

大人に“子供用”のシロップを処方

今、日本医師会が医薬品メーカーに薬の増産体制の整備を求め、「医療現場では非常に薬がない」というほどに、慢性的な薬不足に陥っています。

日本医師会が行った調査によると、病院外の薬局で薬を出している約5700の医療機関の74%が「薬局から在庫不足の連絡を受けたことがある」と回答。
さらに、病院内で薬を出している約3000の医療機関では、90.2%が「入手困難な薬がある」と回答しています。

「医療用医薬品の安定確保策に関する関係者会議」 坂巻 弘之氏
「医療用医薬品の安定確保策に関する関係者会議」 坂巻 弘之氏

「医療用医薬品の安定確保策に関する関係者会議」のメンバーである、坂巻 弘之氏によると、薬不足の大きな原因は、「感染症の拡大でメーカーが必要な薬を十分に供給できない状況が続いている」ことだといいます。

現在流行時期を迎えているインフルエンザの発症者数は、11月6日~12日の1週間で全国で8万5766人。
在庫不足の薬の上位品目を見てみても、インフルエンザなどの感染症の治療によく使われるメジコンやアスベリン、フスコデなどの「せき止め」やムコダインなどたんを切る薬が圧倒的に不足していることがわかります。

医療現場では、足りない薬をぜんそく患者に出すせき止めで代用したり、シロップや漢方薬で調整することもあるそうです。
いとう王子神谷内科外科・伊藤博道院長は、薬不足を今年の6月頃から感じているそうで、もうすぐ半年がたとうとしています。

いとう王子神谷内科外科 伊藤博道院長:
錠剤が一番なくなりやすいです。シロップは少なくとも小さなお子さん用なんですよね。
大人の方が本当にシロップを好んで飲めるかというと、1回2回なら我慢して飲むと思いますけど、何週間も継続的にシロップを毎日飲めるかというと、そこはやっぱり限界がありますよね。何でもシロップでいいというわけには、いかないのではないかと。

――市販薬のせき止めなどで代用することは可能なのでしょうか?
坂巻 弘之氏:

同じ成分のものもありますので、市販薬で代用することもできます。ただ、医療現場で足りないということは、やはり深刻な問題だと思います。

――せき止めの薬はもうけが少ないなど、量産するうまみがないものなのでしょうか?
坂巻 弘之氏:

そうですね、重要なポイントだと思います。実はせき止めの薬は結構古い薬で、国が決めた値段がどんどん下がってしまっているということがあるのです。ですから、増産に対しても後回しになってしまうという傾向があります。

――値段が下がり続けているということは、今後も回復は難しい?
そうなんですよね、感染症の薬が問題になっていますけども、これ以外にも多くの薬が供給不足に陥っています。その背景には、薬の値段が安いということがございますので、感染症の薬以外もなかなか手に入りにくいという状況が続く可能性があります。

薬不足の解消はいつ?

薬不足を受け、政府は11月2日に総合経済対策として、「企業が増産する際の人員整備や設備投資を支援する」と閣議決定。7日には、厚労省がせき止め薬・たん切り薬の増産を製薬会社24社に要請しました。

――インフルエンザの流行時期の前に増産しておく、これから増産することはできないのでしょうか?
坂巻 弘之氏:

人員をまず確保しなくてはいけないですし、それから生産ラインも結構緻密に決められているんです。ですから、指示を出したからといって、きょう、あすにすぐ増産できるかというと、もうしばらく時間がかかってしまうという事もあります。一方で、やや指示が遅かったのではないかというのも感じます。

この“薬不足”はいつまで続くのか。坂巻氏によると、せき止めやたんを切る薬の増産は年明けから始まり、来年の春頃には改善が見込まれるのではないかということです。
(めざまし8 11月24日放送)