北朝鮮との対話再開

 
 
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拉致問題が動くかもしれない。

トランプ米大統領は、6/12の会談で、金正恩北朝鮮委員長に対し、拉致問題を複数回提起した。
これに対し金正恩は、拉致問題が解決済み、という従来の立場にはあえて言及せず、安倍首相との会談の用意があることを伝えたらしい。

これを受けて安倍さんは、日朝首脳会談開催に前向きの姿勢を示した。
北朝鮮との対話再開である。
 

金正恩に身代金は払わない

 
 

ここで日本は何も慌てる必要はない。
北朝鮮とこれまで交わした2つの合意である「平壌宣言」と「ストックホルム合意」に基づいて交渉するだけだ。

すなわち、北が拉致問題解決に取り組むなら、独自制裁の一部を解除し、最終的に拉致問題と核ミサイル問題が解決したら、国交正常化交渉をする。
正常化すれば経済援助を行う。

この順序は変えてはいけないし、安倍さんは変えないだろう。
日本は拉致被害者の身代金を金正恩に払うわけではないのだ。
 

拉致とミサイルの優先順位を迫られる可能性

 
 

これから先は少し書きにくい話になるが、この交渉では、非常に難しい判断を迫られる局面が2つ予想される。

1つは、北が、拉致被害者12人の生存は確認できない、と言ってきた時の対応。
はねつけるのか、受け入れるのか。

もう1つは、拉致と核ミサイルの優先順位を、つけなければいけないかもしれない。

今回の米朝合意で北の非核化については曖昧な表現だった。
本当に北が非核化するのか、わからない。
国際的な評価もわかれている。

しかしここで拉致が解決した場合、北が人権問題で歩み寄ったということで、国際社会が北に対して「甘く」なってしまう可能性がある。
核ミサイル問題についても北を信用しようじゃないか、と。
 

拉致問題が”ディール”に使われる

1977年に拉致された横田めぐみさん
1977年に拉致された横田めぐみさん

つまり北朝鮮に対する最強硬派である日本、及び安倍首相に対し、「拉致が解決したのだから核ミサイルは妥協したらどうか」
という国際圧力がかかるのではないか。

筋論で言えばもちろん妥協などしないのだが、ここは難しい。
と言うのは、中国、韓国、ロシアに続き、米国までも北朝鮮に優しくなってしまったら、いくら日本が頑張ってもどうしようもないからだ。

逆の言い方をすれば、最強硬派の日本に納得してもらうためにも、北は拉致カードを切って来る、ディールに使われる可能性がある、ということだ。

この場合の判断は実に難しい。
安倍政権5年目にして最大の勝負どころとなるだろう。

(執筆:フジテレビ 上席解説委員 平井文夫)

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平井文夫
平井文夫

言わねばならぬことを言う。神は細部に宿る。
フジテレビ客員解説委員。1959年長崎市生まれ。82年フジテレビ入社。ワシントン特派員、編集長、政治部長、専任局長、「新報道2001」キャスター等を経て報道局上席解説委員に。2024年8月に退社。