富山県内の河川に遡上(そじょう)するサケが近年大きく減少していて、特に2023年は過去50年でも記録的な不漁となっている。海水温の影響とも言われる原因を取材した。
サケの捕れ高「今までにないほど悪い」
晩秋の神通川では、古くからこの時期に行われてきた、海から産卵のために遡上してくるサケ漁がピークを迎えている。

例年だと多くのサケが入るスポットでは漁が行われていたが、2023年は神通川に異変が起きているという。
神通川で10年以上、投網によるサケ漁を行う前田守さんに、2023年のサケの捕れ高について聞いた。

サケの捕網漁10年以上・前田守さん:
メスは去年の3分の1、オスは4分の1くらい。捕れていない。少ない。おととしより去年が少ないし、だんだん少なくなってきている。(ことしは)特に悪い。今までにないほど悪い
前田さんは昔からサケが集まってくるという場所で、毎年漁を行っているが年々、その数が減ってきているという。特にことしは11月10日以降、サケが捕れていないという。
ーーなぜ捕れない?

前田守さん:
分からんけど、ことし暖かいからじゃないの、水温も温かいし。海が暖かいから、こっちに来ていないのか。自然が変わってきているんじゃないですか。あんまり良いことではないと思いますけど…
別の場所でサケのおとり漁を行っていた人からも「少ない」という声が聞かれた。

おとり漁の漁師:
(去年より)6割くらいは捕れていないような気がする。残念ながら少ない
過去約50年間で最も少ない…記録的不漁
県の水産研究所によると、県内の河川に遡上するサケはここ5年間減少が続いている。特に、2023年は過去最低だった去年の5割程度にとどまっていて、過去約50年間で最も少ない記録的な不漁となっている。

県水産研究所・田子泰彦所長:
富山県全体の川が悪い。例年ここ5年ほど悪いんですけど、その中でも去年よりも悪い。神通川では現段階で半分近く、庄川では3分の1くらいに下がっている

サケの稚魚は、県内の河川から春頃に海に出て、北太平洋のベーリング海で2年から4年ほど過ごして、産卵のため川に戻ってくる。
サケの遡上が減少する理由について田子泰彦所長は、海水温の上昇などによって生き残れないサケの稚魚が増えているためとみている。

県水産研究所・田子泰彦所長:
日本海の水温が上がってきていて、ここ100年で1度ほど上がって温暖化が進んでいるが、それに応じて海流の流れも変化している。富山のサケや日本海側のサケがオホーツク海に行くまでに、従来よりも海水温が上がる時期が早く、良い環境になっておらず、死ぬサケの稚魚が多いと考えられている。広く回遊する魚は地球規模の環境に影響される
高まる今後の増殖事業への不安…
遡上するサケの減少はサケの増殖にも大きな影響を与えている。
卵を採卵する神通川サケマス増殖場を訪ねた。

サケのおなかを割くと、中からは鮮やかな卵があふれだした。
富山漁業協同組合・深川勉功さん:
だいたい一尾に平均で3,000粒入っています
神通川水系を管理する富山漁業協同組合では、2023年も220万粒の採卵を目標にしているが、遡上するサケが少ないため計画通りの卵が確保できなくなっている。

富山漁業協同組合・深川勉功さん:
去年の6割ほど。同じ時期で比較して採卵できた数は6割ほどになっている。多い時は1日40~50匹は採卵するが、昔は1日100匹という時代もあった
受精させた卵は約40日でふ化し、その後、毎年2月ごろに稚魚が放流される。

富山漁業協同組合・深川勉功さん:
少しでもサケが帰ってくるように力になれればと思って、毎日取り組んでいる。4年後に神通川に帰って来るように作業している
海水の温暖化で川に戻る数が減少するサケ。今後の増殖事業への不安が増している。

田子泰彦所長:
このままいったら、サケの増殖事業はできなくなる。原因が北洋の海にあるとなると解決策が見いだせない。川で増殖し放流しているが海の環境が変わってくると、これから厳しい時代が続くのではと心配している
国の専門機関は、稚魚が生き残るように、今後は放流の仕方を変えて、稚魚を今より大きくしてから放つことや、最も適した水温の期間に放流することを各漁協などに呼びかけている。
環境の変化に適応しながら、サケを守っていく必要があるようだ。
(富山テレビ)