イスラエル軍の攻撃により機能停止状態になっているガザ地区のシファ病院では、入院患者らが危機的状況に陥っている。命の危険にさらされていた新生児31人は、エジプトとの境界に近いラファの病院に移送されたが、このうち11人は重篤な状態にあるという。
一方、イスラエル軍は19日、シファ病院敷地内にある地下トンネルの新たな映像を公開し、病院への攻撃の正当性を改めて主張した。
こうした中、これまで進展が見られなかった人質解放の交渉で、新たな情報も出てきている。
人質解放の交渉は…
イスラエルから連れ去られた230人以上の人質解放の交渉について、ハマス側が解放する人質の居場所や容体を確認するのに数日間かかると伝えていることが分かった。
この記事の画像(17枚)イスラエルのメディアは政府関係者の話として、「ハマスはイスラエル軍がシファ病院から撤退しないことを知り、交渉を続ける以外に選択肢がなくなった」と報じている。
またハマス側は、4〜5日間の停戦、パレスチナ人約150人の釈放、ガザ地区への燃料の搬入と引き換えに、50人の人質を解放する用意があるとしている。
一方で、ハマスも全ての人質の居場所や容体を把握しておらず、停戦が行われてから数日間は、人質に関する情報を集めるのに時間が必要としている。
地下トンネルの新たな映像公開
イスラエル軍は先週、シファ病院の敷地内にある地下トンネルの入り口までの映像を公開したが、19日、新たにトンネル内部の映像を公開した。シファ病院への攻撃の正当性を改めて主張している。
イスラエル軍が公開したのは、ドローンによって撮影されたとみられる映像だ。シファ病院の敷地から、地下トンネルのような穴の中を一連で撮影している。
暗く、狭い空間を進むと、奥に見えてきたのは爆発にも耐えられる防護扉。そしてその扉には、侵入者を狙い撃ちするための銃撃用の穴があると、イスラエル軍は指摘している。
さらに、もう一つの映像では、ボディカメラを付けた兵士が自ら中に降りていき、トンネル内を撮影している。スムーズに地下通路を進んでおり、人間が実際に歩くスペースがあるトンネルであることが分かる。
このトンネルは、深さ10m、長さ約55mで、イスラエル軍は、病院がハマスによるテロ行為の隠れ場所となっていることを明確に示していると主張している。
ただ、映像は爆破防御扉までで終わっていて、この奥にイスラエルが主張するハマスの司令部があるかどうかは、今回の映像では確認できなかった。
WHO「シファ病院はデスゾーン」
イスラエル軍は連日、シファ病院内がハマスによって利用されているという映像を公開して、自分たちが病院を攻撃する正当性を主張しているが、病院の状況は今どうなっているのだろうか。
シファ病院はイスラエル軍の攻撃により機能停止状態になっていて、入院患者らが危機的状況に陥っている。
そうした中、本当に危ない状況にあった新生児31人がシファ病院から避難した。新生児たちは、エジプトとの国境にあるラファの病院に到着した。
19日、ラファの病院に赤ちゃんたちが到着した際の映像からは、赤ちゃんたちが非常に痩せこけた状態であることが確認できる。目に包帯を巻いている赤ちゃんの姿や、人工呼吸器を装着している赤ちゃんの姿も確認できた。
今回、31人の新生児が避難したが、このうち11人が重篤な状態にあるという。
避難先のラファの病院の医師によると、シファ病院では粉ミルクを作る水も汚染されているため、嘔吐(おうと)や下痢、体重減少の症状などを新生児たちが引き起こしているという。一方で、依然として移動できない患者たちは、今も病院に残されている。
18日には、WHOが1時間限定でガザ地区に入り、シファ病院を視察した。新生児が避難する前のシファ病院には、25人の医療従事者と291人の患者が残っていたという。WHOは「シファ病院はデスゾーンになっている」と訪問の印象を明かした。
人質解放の交渉に動きか
そうした中、これまで進展が見られなかった人質解放の交渉で、新しい情報が出てきている。
アメリカのワシントン・ポストは、5日間の戦闘停止と引き換えに、数十人の女性と子供の人質を解放するという交渉が合意に近づいていると報道した。
ただし、これはアメリカが仲介しているもので、アメリカの国家安全保障会議のワトソン報道官は「合意には達していないが、努力を続けている」とSNSでコメントをしている。
イスラエルはこれまで人質解放の交渉には応じてこなかったが、人質解放を求める声は日増しに強まっている。
エルサレムでは18日、人質解放を求めるイスラエルの市民たちによるデモ行進が行われた。数千人の市民が、高速道路など占拠し抗議活動を行った。
人質の家族からは「もう時間がない」など、悲痛な声が上がっている。
(「イット!」 11月20日放送より)