いまも原発事故の影響を受けている福島県の漁業。そうしたなか、ここ数年でフグの漁獲量が急増している。「被災地の新たな魅力」として、福島県相馬市を中心にトラフグが盛り上がりを見せている。

福島県で初めて フグ調理師の試験

2023年11月7日、福島県内で初めてフグ調理師の試験が行われた。体内に毒を持つフグ調理をするには資格が必要だ。試験は学科試験とフグの種類などを見て判断する鑑別試験が行われる。今回は30人ほどが試験に臨んだ。

福島県で初めてのフグ調理師試験
福島県で初めてのフグ調理師試験
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受験した人に話を聞くと「常磐もののトラフグね。最近水揚げされてるって聞きますし、それが県外に流れちゃうのはもったいないなと思ったので」「フグの取り扱いできるようになったら販路拡大だったり商売の幅が広がるので、それで免許とろうと思いました」「(フグが)水揚げされてるので、有名にしたいなという気持ちはあります」などと福島でとれるフグに興味津々だ。

フグ調理師試験の受験者
フグ調理師試験の受験者

福島県沖でトラフグの水揚げが急増

福島県・フグの漁獲量の推移
福島県・フグの漁獲量の推移

トラフグの漁獲量は福島県の相馬沖で急増している。2019年には2.9トンだったが、年を追うごとにその量は増え、2022年は10倍以上の37トンを水揚げした。福島県全体の漁獲量は震災前のまだ2割程度、復興途上のなか急増しているフグは「希望」とも言える存在だ。フグ調理師試験の受験者も「やっぱり福島県いま風評被害ですか。福島県の魚を自分達若者から盛り上げていけたら、良い県になるんじゃないかと思います」と話す。

新たな名物「福とら」

相馬市ではトラフグを新たな魅力として売り出している。相馬市松川浦を一望するホテル飛天の管野貴拓さんは「トラフグが獲れるようになって、お客様がどんどん来てくれているので、これから冬の主役になるというのが印象ですよね」と話す。

新たな名物「福とら」
新たな名物「福とら」

相馬市では体長35センチ以上など条件を満たすトラフグを「福とら」と命名。「福とら」は現在、市内11の旅館や飲食店で提供されている。ホテル飛天では、コース料理を設けて、訪れるお客さんをもてなしている。

コース料理のふぐ刺し
コース料理のふぐ刺し

コース料理は旅館の看板メニューに

試食した記者も「コリコリとした歯ごたえもそうなのですが、フグのうまみが、とても濃くて美味しい」と太鼓判を押す。
てっさ、鍋、から揚げなどふぐを満喫できる「福とらコース」。平日でも宿泊の予約が埋まるなど看板メニューとなっている。

福とらのコース料理
福とらのコース料理

ホテル飛天・管野貴拓さん:本当に嬉しいですね。よくぞ来てくれましたと、よくぞ漁師さん獲ってくれましたと、そういう思いです。

ホテル飛天・管野貴拓さん
ホテル飛天・管野貴拓さん

度重なる地震で甚大な被害

新たな名物に感謝する管野さん。特別な思いがあった。
ホテル飛天・管野貴拓さん:でかいガラスがめちゃくちゃに割れていて、下に散乱しているんですよね。ただ停電になっていたのでそれが見えなかった。

ホテルのガラスが地震で粉々に
ホテルのガラスが地震で粉々に

東日本大震災に、2021年、2022年と相馬市を襲った大地震。そのたびにホテルは甚大な被害を受け休館を余儀なくされた。2023年5月、リニューアルオープンを果たすものの、福島第一原発の処理水の海洋放出など先行きに不安を感じることもある。そんななか、盛り上がりを見せている「福とら」は、管野さんにとってまさしく「希望」の存在だ。

被災地の新たな魅力「福とら」

ホテル飛天・管野貴拓さん:悲しいニュースもありますけども、そうでない部分も良い部分もたくさんあるのでね。そういう所を伸ばしながら、皆さんが楽しんでいってくれる松川浦にしたいなと、そんな風に思っています。

「福とら」が新たな魅力に
「福とら」が新たな魅力に

被災地の新たな魅力となった「福とら」これからも目が離せない。

(福島テレビ)