岸田首相が国会の所信表明演説で「経済、経済、経済」と強調した物価高対策を柱とする経済対策が11月2日に決定した。
岸田内閣 支持率27.8% “危険水域”に下落、自民党支持層の“岸田離れ”進む
その後行ったFNN世論調査(11月11,12日実施)では、首相の決意は有権者に届かない形で、内閣支持率は、10月に続き過去最低が続いたのみならず、内閣の“危険水域”とされる20%台に低落、政権維持に黄色信号が点灯した形だ。
この記事の画像(18枚)図Q1 岸田政権の内閣支持率
【岸田内閣への支持】
支持する 27.8%
支持しない 68.8%
岸田政権を支える、自民党支持層はどう評価しているのか。
「自民党を支持する」と答えた有権者のなかでの内閣支持率を見てみると、64.5%が岸田内閣を支持するとしている。
一見高い支持率にも見えるが、5月からの調査を分析すると、内閣支持率が5割を超えていた5月の、自民党支持層の岸田政権への支持率は81.9%。
その後、内閣支持率がじりじりと下がる中でも、自民党支持層の7割が岸田内閣を支持してきた。
この自民党支持層からの手堅かった支持が、11月、岸田政権発足以来はじめて7割を切り、一気に64.5%まで下がった。
5月から内閣支持率が25%ほど下がる中、自民支持層の支持も17%下がり、自民支持層の岸田離れの実態が明らかになった。
【自民党支持層の内閣支持率(カッコ内は全体の内閣支持率)】
5月 81.9% (50.4%)
6月 78.6%(46.1%)
7月 77.0%(41.3%)
8月 77.6%(41.5%)
9月 73.0%(38.9%)
10月 73.6%(35.6%)
11月 64.5%(27.8%)
自民党の政党支持率も、政権発足来初の20%台、ゆらぐ岸田首相の足もと
内閣支持率が低迷しても、岸田首相が解散風を吹かすことができた背景の一つが、足もとの自民党支持率が下がらなかったことだ。
これまで岸田首相が、衆議院の解散総選挙を検討する際に重要な指標となってきたひとつとされるのが、自民党の選挙情勢調査だ。
自民党の支持率が高く、衆議院で自民党議員が多数の議席を維持する見通しがあれば、解散を仕掛けることができるため、解散権を持つ岸田総理の力の源泉となる。
しかし、その自民党の支持率が、今夏以降、下落が続いている。
そして11月ついに、政権発足以来初めて、30%を割り込んで29%となった。
グラフを見ると、8月以来、自民党の支持率は6ポイント下落している。
首相の支持率の低下が、自民党の支持率に影響した格好で、岸田首相自らの政権基盤にも黄色信号が点灯した。
さらにこの期間中の、野党第一党、第二党の支持率を見てみる。
立憲民主党、日本維新の会をあわせて12%から15%程度で推移し、合計の支持率はおおむねかわらず、自民党が一方的に下がっていることがわかる。
同じ期間の「支持政党なし」との回答の推移をみると、自民党の支持離れは、支持政党なしに回っていることがうかがえる。
自民党にとっては、足下の支持が無党派層に流れ、支持基盤の流動化が起きていると言える。
図:与党・野党・無党派層の政党支持率
【与党・野党・無党派層の政党支持率】
自民 立憲+維新 支持政党なし
5月 34.2% 13.2% 37.7 %
6月 34.2% 15.7% 37.5%
7月 31.4% 14.2% 40.1%
8月 35.2% 11.8% 39.7%
9月 32.4% 15.3% 38.4%
10月 30.9% 13.7% 40.9%
11月 29.0% 12.9% 43.3%
3つめの黄色信号は、岸田総理の今後に対する期待の下落だ。
「次の首相にふさわしい人」について、世論調査では、与野党の代表者について質問した。
岸田首相を選んだ有権者は、10月の調査では、7.8%で4番手につけていた。これが今回の調査では、一気に5ポイント下落して2.8%、岸田首相は6番手に後退した。
図:次の首相にふさわしい人
【次の首相にふさわしい人(カッコ内は10月調査)】
1. 石破茂 自民元幹事長 15.2%(13.5)
2. 河野太郎 デジタル相 11.6%(12.2)
3. 小泉進次郎 元環境相 9.7%(10.5)
4. 菅義偉 前首相 8.8%(5.4)
5. 高市早苗 経済安保相 6.2%(6.4)
6. 岸田文雄 首相 2.8%(7.8)
7. 泉健太 立憲代表 2.0%(0.7)
8. 茂木敏充 自民幹事長 1.9%(2.1)
9.西村康稔 経産相 1.6%(0.8)
10.林芳正 前外相 1.3%(1.9)
11.野田聖子 元少子化相 0.9%(1.8)
12.萩生田光一 自民政調会長 0.6%(0.4)
13.馬場伸幸 日本維新の会代表 0.1%(0.4)
14.この中にはいない 29.8%(26.3)
この調査を自民党支持と答えた有権者に限ってみると、10月の調査では岸田首相は14.6%の支持を集め、小泉進次郎元環境相の15.5%に次ぐ2番手につけていた。
自民党支持層のなかでは「次も岸田首相」という機運が維持されていたと言える。
これが今回の調査では、石破茂元自民党幹事長17.4%、河野太郎デジタル相15.2%、小泉元環境相14.9%、高市早苗安保担当相7.7%、岸田首相はようやく5番手に登場し支持率は7.5%と10月調査から半減。自民党支持層で「次も岸田首相」との呼び声が急激にしぼんでいることが明らかになった。
自民党総裁である岸田首相が首相を続投するために乗り越えなくてはならないのが、2024年9月に予定される自民党総裁選だ。総裁選では、国会議員票に加えて、全国の自民党員票の獲得が必要となる。
世論調査での自民党支持は、自民党員との重なりが大きいことが想像されることから、岸田総理は、自民党員票で5番手に後退したということに近い結果と言える。
【自民党支持層に聞いた「次の首相にふさわしい人物」】
<10月調査> <11月調査>
1.小泉進次郎15.5% 1.石破茂 17.4%
2.岸田文雄 14.6% 2.河野太郎 15.2%
3.河野太郎 13.9% 3.小泉進次郎14.9%
4.石破茂 11.3% 4.高市早苗 7.7%
5.高市早苗 8.4% 5.岸田文雄 7.5%
世論調査の分析で明らかになった3つの黄色信号に続き、岸田首相には、調査後の13日になって、あらたな黄色信号がともった。それが岸田内閣の辞任ドミノだ。山田文科政務官、柿沢法務副大臣につづき、国民の税を所管する、神田財務副大臣が、度重なる税金滞納があったことを認め、副大臣を辞任した。「適材適所ではない」との野党の追及が続くことに岸田首相は「政治は結果責任。財務副大臣が着任から間を置かず辞任に至ったことについて国民の皆様にお詫び申し上げる」と陳謝した。
国会では、今後も予算委員会での本格論戦が続き、野党は岸田内閣の閣僚の資質を追及する構えで、辞任ドミノがさらにつづけば「内閣支持率低下」「自民党の政党支持率低下」「次の総理への期待の低下」といった3つの黄色信号で政権体力が下がる岸田政権にとって、致命的なダメージにもなりかねない。
(フジテレビ政治部デスク 世論調査担当 西垣壮一郎)