FNNの11月の世論調査で、岸田内閣の支持率は27.8%、10月より7.8ポイント下がった。
10月に続いて、支持率は2カ月連続で過去最低となるとともに、内閣の“危険水域”ともいわれる支持率20%台に初めて落ち込んだ。
岸田首相が「物価高対策」や「賃上げ継続」を掲げる経済対策については「期待しない」が66.6%だった。
内閣支持率27.8% 「支持しない」理由トップ「政策がよくない」40%超
FNNは、11月11日・12日の両日、全国の18歳以上の男女を対象に、電話世論調査(固定電話+携帯電話・RDD方式)を実施し、1019人から回答を得た。
この記事の画像(18枚)図Q1 岸田政権の内閣支持率
【岸田内閣への支持】
支持する27.8%
支持しない68.8%
岸田首相は、11月2日に物価高対策などとして給付と所得税減税などを盛り込んだ“肝いり”の経済対策を発表したものの、政権浮揚にはつながらず、内閣支持率は2カ月連続で過去最低を更新し、不支持率は10月より9.2%上昇し、68.8%となった。
調査に先立つ11月9日には、年内解散の見送り表明に追い込まれた状況を浮き彫りにする支持率の低さとなった。
岸田内閣を「支持しない」理由については、「政策がよくない」が初めて40%を超えるなど、岸田首相の政策に厳しい目が向けられ、内閣支持率の足を引っ張る最大の要因になっていることが明らかになった。
図:岸田内閣を支持しない理由
【岸田内閣を支持しない理由】
政策がよくない40.4%
実行力に期待できない31.5%
自民党中心の内閣だから16.1%
人柄が信用できない7.7%
他によい人がいる2.9%
肝いりの経済対策に6割が「期待せず」 理由は「今後、増税が予定されている」が4割超
図:岸田首相の経済対策への評価
【岸田首相の経済対策】
評価する27.2%
期待しない66.6%
岸田首相は、11月2日に経済対策を発表し「経済、経済、経済、政権は何よりも物価高対策、経済対策を重視している」との決意を表明した。賃金があがる好循環や、デフレ脱却を目指す道のりについて、第1段階として、年明けまでに住民税非課税世帯に7万円の給付を行い、第2段階として、2024年6月に所得税などで1人あたり4万円の定額減税を行うと、経済対策の段階的な狙いを力説した。さらに、来春の春闘に向け、岸田首相自ら「経済界に対して先頭に立って、今年を上回る賃上げを働きかけ」るとしている。
しかし、この経済対策が、国民からの評判が低い結果となった。経済対策に「期待しない」が66.6%に上った。
岸田首相は今回の経済対策の成果として、来年夏の段階で賃上げと所得税減税をあわせて、所得の伸びが、物価の上昇を上回る状況を作ることを掲げている。しかし、目指す状況の実現を期待するとの声は、27%にとどまり、「期待しない」との答えが71%となるなど、岸田首相の描く道筋に国民から期待の声は少ない。
図:所得の伸びが物価上昇を上回る状況への期待
【所得の伸びが物価上昇を上回る期待】
期待する27.0%
期待しない71.0%
世論調査では、さらに経済対策を評価しない理由について質問した。最も多かったのは「今後、増税が予定されているから」が39.9%だった。SNSで「増税めがね」と呼ばれていることに岸田首相は「どんな風に呼ばれてもかまわないと思っている。やるべきだと信じることをやる」と会見で応じている。ただし、世論調査の結果から、岸田政権が、今後増税を行うことへの有権者の懸念が強いことが明らかになった。
続いて、「政権の人気取りだから」が20.6%に上った。経済対策をまとめた後に、年内に岸田首相が衆議院の解散に踏み切るのではないか、との観測が続いた中、減税や給付は、有権者にとって、政権浮揚のためと映った形だ。
図:経済対策を「評価しない」理由
【経済対策を「評価しない」理由】
今後、増税が予定されているから39.9%
政権の人気取りだから20.6%
経済対策より財政再建を優先すべきだから17.3%
物価高対策として金額が足りない11.5%
スピード感が遅い6.7%
「評価しない」理由にある「今後の増税予定」については、2022年末に決定した防衛増税を懸念したものとみられるが、岸田首相はこの防衛増税について、2024年度は行わず、2027年度までに段階的に行うとしている。この増税の2024年度以降への先送りには評価が分かれた。
「増税を1年先送り」とすることへの若干の安堵(あんど)の一方、来年夏に所得の増加が、物価上昇を上回ることへの期待が持てない有権者としては、2025年からは、防衛増税がやってくることを見越した不安もあり、評価が分かれた結果と言える。
図:防衛増税の2024年度の見送りについて
【防衛増税の来年度の見送り】
評価する42.4%
評価しない51.2%
今回の経済対策について、岸田首相は、13兆円余りの補正予算案を、今の臨時国会で成立させる考えだ。コロナ対策で、毎年大規模な補正予算を組んできたここ数年に比べて、補正予算の規模は縮小したものの、国民に税収増分を還元する、という言葉とはうらはらに、追加で国債発行を重ねることに、有権者からは財政の膨張への不安の声も聞かれた。
国の財政状況の先行きについての質問について、「大いに不安」「やや不安」とする答えが9割近くに上った。
図:国の財政状況について
【国の税制状況について】
大いに不安47.1%
やや不安41.6%
あまり不安ではない8.6%
まったく不安ではない2.2%
さらに、岸田首相は、閣内の不祥事で、内閣の体力を削られつつある。
9月に内閣改造を行って以降、岸田内閣の政務三役のうち、山田文科政務官が不適切な女性問題で辞任、柿沢法務副大臣が、公職選挙法に違反する疑いの有料ネット動画を地元区長選の候補者に勧めたとして、辞任した。さらに13日、神田財務副大臣が、度重なる税金滞納問題で辞任し、岸田内閣の辞任ドミノが続く事態となっている。
世論調査は、神田財務副大臣の辞任表明に先立ち、辞任を求める野党の追及が強まる中実施したもので、任命権者としての岸田首相の責任の大きさについて質問したところ、「大きい」が36.3%、「やや大きい」が34.3%にのぼった。一方で前政務官、前副大臣らの問題だとして、約3割は岸田首相の責任は「あまり大きくない」、「大きくない」と答えた。
図:政務三役の辞任に対する岸田首相の責任
【政務三役の辞任に対する岸田首相の責任】
大きい36.3%
やや大きい34.3%
あまり大きくない20.4%
大きくない7.7%
一方で、岸田首相の対応を評価する声が上回った判断もあった。
国会では、特別職の公務員の給与アップに関する法律が成立する見通しとなっている。特別職の公務員の給与引き上げは、一般職の公務員の給与引き上げに伴い行われるものだが、野党からは「物価高が進む中、国民の理解は得られない」と反発が上がっていた。
これに対し、松野官房長官は、首相や国務大臣の給与引き上げだけを見送ることは、公務員給与全体の給与体系を維持する観点から、法案の修正は行わない、とした。そのうえで、法律が成立した後に、総理大臣、国務大臣、政務官、官房副長官の給与アップ分については、全額を自主的に国庫に返納すると表明した。この対応について「評価する」との答えは51.6%にのぼった。
図:首相・大臣の給与アップ分の自主返納について
【首相・大臣の給与アップ分の自主返納】
評価する51.6%
評価しない45.6%
調査では、逆風にさらされる岸田首相の、今の立ち位置を如実に表す結果も出た。
与野党の代表者の中で、次の首相にふさわしい人が誰かを聞いた質問では、岸田首相は、10月は7.8%で、4番手に位置していたが、今回、経済対策を発表したタイミングの調査で、5ポイント急落して、2.8%となり6番手に後退した。他の自民党議員に比べて期待値が下がるとともに、野党の中で一番手の立憲民主党・泉代表に迫られる形になった。
11月9日に岸田首相は「まずは経済対策、先送りできない課題1つ1つに一意専心取り組み、それ以外のことは考えていない」として、年内の解散見送りを表明したことで、選挙での政権交代は当面なく、自民党内に岸田降ろしの動きが出ると行った状況でもないことから、岸田首相交代が目前に迫るような危機的状況ではない。
ただし、先の6月に解散を模索して、踏み切ることができず、今回もまた解散に踏み切ることができない状況が続いていることで、首相の「伝家の宝刀」である解散権の求心力は低下しているのが現状と言える。
自民党幹部からは「6月も解散できず、年末もできず、また来年もできないとなったら…」との声も聞かれ、その先、2024年9月の自民党総裁選での再選戦略にも影響しかねないといった、懸念の声も上がっている。
図:次の首相にふさわしい人
【次の首相にふさわしい人(カッコ内は10月調査)】
1.石破茂 自民元幹事長15.2%(13.5)
2.河野太郎 デジタル相11.6%(12.2)
3.小泉進次郎 元環境相9.7%(10.5)
4.菅義偉 前首相8.8%(5.4)
5.高市早苗 経済安保相6.2%(6.4)
6.岸田文雄 首相2.8%(7.8)
7.泉健太 立憲代表2.0%(0.7)
8.茂木敏充 自民幹事長1.9%(2.1)
9.西村康稔 経産相1.6%(0.8)
10.林芳正 前外相1.3%(1.9)
11.野田聖子 元少子化相0.9%(1.8)
12.萩生田光一 自民政調会長0.6%(0.4)
13.馬場伸幸 日本維新の会代表0.1%(0.4)
14.この中にはいない29.8%(26.3)
(フジテレビ政治部デスク 世論調査担当 西垣壮一郎)