島根・出雲市のショッピングモールに大手書店「紀伊國屋書店」がオープンした。山陰地方へは初めての出店だ。

全国の書店数は、2003年度以降の20年間でほぼ半減するなど、インターネット通販などに押され、苦境に立つリアルの書店。しかしショッピングモールにとって書店は今もなお、欠くことのできない集客の源になっているという。

「紀伊國屋書店」に歓迎の声

11月10日、出雲市のショッピングモール「ゆめタウン出雲」に新たなテナントとして、大手書店「紀伊國屋書店」がオープンした。全国の都道府県で28番目、島根・鳥取両県では初めての店舗だ。

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午前10時のオープンとともに、レジには長い行列ができるにぎわいぶり。訪れた客からは「多種多様な本がある。こちら山陰ではありがたい存在」と歓迎の声が聞かれた。

約680平方メートルの売り場には約15万冊の品揃え。以前に比べ、様々な分野の専門書を2割ほど増やすなど充実を図ったという。

さらに店に並ぶのは本だけではない。

ショッピングモール内という立地を意識し、知育教材などの展示販売スペースが拡充された。子ども連れの来店客も「子どもが遊んでいましたけど、ずっと本を見ていたのですごく助かった」と話し、子ども連れにとっては過ごしやすい空間となっている。

書店休業の2カ月間はモールの客も…

電子出版やネット書店の普及で書籍の販売が伸び悩み、店舗数も右肩下がりのリアル書店。苦境に立たされ、存在感もやや薄れた感があるが、実はショッピングモールにとって、書店は集客面で欠くことのできないテナントだ。

ゆめタウン出雲の中川正太支配人によると、テナント入れ替えのため書店が“空白”だった2カ月間の改装期間で、モール全体の来店客数が5%減少したという。書店の持つ集客力の高さを改めて認識したそうだ。

今回の「紀伊國屋書店」の出店は、集客力アップを狙い、大手書店を誘致したモール側の目論見が当たった形だ。

こうしたリアルな書店の人を呼ぶ力は、店の大きさに関わらないようだ。

書店に潜む特別な魅力

出雲市中心部の商店街の一角にある小さな書店「句読点」。新刊と古書を扱い、店主の嶋田和史さんとスタッフの2人で切り盛りしている。オープンは2021年。いまは固定客も増え、売り上げは安定しているそうだ。

嶋田さんがこだわって選んだ本が並ぶ店内は落ち着いた雰囲気。調度品や灯りで、居心地よく演出されている。

嶋田和史オーナーは「思い思いにゆっくり本を探してもらったり、客同士でコミュニケーションしてもらったり。大手書店ではできないこともある」と語る。

本に囲まれた「書店」という空間。そこには、その大きさに関わらず、人を引き付ける、何か特別な魅力が潜んでいるようだ。

(TSKさんいん中央テレビ)

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TSKさんいん中央テレビ
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