山形県産の新米の1等米比率が54.7%と、記録が残る中で最低だったことが公表され、記録的な猛暑はコメの品質に大きく影響した。例年とは異なるコメ事情を山形市のスーパーと南陽市の酒蔵で取材した。
猛暑影響…1等米比率過去最低に
11月9日、山形市内のスーパー「ヤマザワ松見町店」には入荷したばかりの新米がズラリと並んでいた。
この記事の画像(13枚)猛暑の影響で1等米の量が少ないということで、新米について説明が掲示されていた。味はどうなのかという声もあるため、客に向けて「食味に影響はない」と説明している。
コメの品質は粒の形や透明感などで格付けされ、最も良いものを「1等米」とする。県産米は例年9割以上が1等米だが、2023年に収穫された県産米の1等米比率は54.7%と、記録が残る2011年以降で最も低い結果となった。
地域別では最上が87.3%と最も高く、置賜が66.4%、村山が56.6%、そして最も低かったのが庄内で31.6%だった。
1等米比率が低かった要因の一つは、高温障害によりコメの粒が白く濁る「白未熟粒」だ。ヤマザワ松見町店・三澤智彦副店長は売り場にあるコメの袋を手に「真っ白なコメ。こういうものが今までほとんど入っていなかったが、選別工程を経ても入ってくる。今までなら1粒入ったかどうかというレベルのものが時々入る」と話した。
食味に影響なし「水分量に工夫を」
客からは「古いコメやもち米が入っているのでは?」という声が寄せられたこともあるという。そのためヤマザワ松見町店では、販売元の全農ライフサポート山形が作成した「白いコメ」が混じる理由や、食味には大きな影響がないこと・炊き方のポイントなどを記した説明書きも掲示。
ヤマザワ松見町店・三澤智彦副店長:
新米は水分量が多いコメ。基本的には水分量を少なめに炊く。ことしは白いコメが入っているので、さらにいつもよりも少なめにとお願いしている
「白いコメ」は、デンプンが十分作られず粒に隙間ができた状態のため、普段通りの水分量で炊くと、べたついたご飯になってしまう。こうした2023年のコメの特性を理解して炊くことで、いつもと変わらずに味わうことができる。
ヤマザワ松見町店・三澤智彦副店長:
ことしのコメも例年と変わらずおいしくできている。ぜひ山形のコメを食べてほしい
厳しい天候の中、生産者が徹底管理して育て上げた新米。おいしくいただくためにはちょっとした工夫が必要のようだ。
「どんな年でもうまい酒にしていく」
2023年のコメの品質はこれから本格化する酒造りにも影響しそうだ。
南陽市の酒蔵「東の麓酒造」では、市内で栽培された酒米・美山錦を使っているが、やはり例年とは品質が異なるという。
東の麓酒造 杜氏(とうじ)・神理さん:
高温の影響で非常にコメが硬い。なおかつコメがとても割れやすい状態になっている
硬いコメや実割れしたコメは蒸す前に水を吸わせる時間が異なってくるため、バランスを保つことに苦労している。仕込み作業は始まったばかり。水を吸わせる時間を秒単位で管理して対応している。
さらに今後は、発酵にかける時間や温度調節を徹底し、すっきりした味わいの酒に仕上げていきたいとしている。
東の麓酒造 杜氏・神理さん:
どんな年でも、いただいたコメをうまく酒にしていくのが私たちの仕事。ことしは難しいのはわかっている。特に気をつけて、気合を入れて、頑張って酒を造りたい
蔵人たちの長年の経験とコメ農家への感謝の思いが生み出す山形の酒。伝統の味を守る職人の奮闘が続いている。
(さくらんぼテレビ)