先祖の墓をどう維持していくか決めているだろうか。全国的に“墓じまい”が増えているが、「先祖が守ってきた墓を閉じるのは…」とためらう人もいるだろう。こうした悩みの解消につながる取り組みを、秋田・能代市の石材店が始めた。

墓石が身近なものに変身

秋田・能代市明治町にある創業105年の毛利石材工業。

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墓石や記念碑などを製造・販売しているこの店では、墓じまいされた人から「お墓についている家紋を切って持ち帰りたい」という話を受け、2023年に「つなぐプロジェクト」を始めた。

毛利石材工業・毛利洋平専務:
いま建っているお墓を墓じまいで解体して、玄関とか廊下に置けるものに形を変えて加工するというプロジェクトです

手掛けるのは、石材の中に電球が入っている「石灯り」と「石の小物」、それに「家紋プレート」だ。

「石灯り」は、墓石と能代市産の秋田杉、秋田市雄和で作られた和紙で、優しい雰囲気を醸し出す。

フクロウの形をしたオブジェに様変わり
フクロウの形をしたオブジェに様変わり

「石の小物」は、フクロウやアザラシなど、さまざまな形に切り出されたオブジェ。

いずれも、石材加工の資格を持つ毛利さんが手掛け、1~2カ月で完成する。

毛利石材工業では、墓を解体したあと、墓石を加工。残った墓石は処分され、道路や砕石として二次活用されるという。

悩む人たちの選択肢の一つに

厚生労働省によると、全国の事実上の墓じまいの件数は増加傾向にあり、2022年は15万件を超えた。

理由として最も多いのが「お墓が遠く、守るのが難しい」というもの。就職・結婚などでお墓のある故郷を離れて生活している人は、頻繁に帰ることが難しいため管理ができなくなり、周りにも迷惑がかかるなど、悩みが尽きないという。

ほかにも「お墓を守る負担を子どもにかけさせたくない」「高齢を理由に免許を返納し気軽に行けない」といった理由で墓じまいを考える人が増えている。

一方で、「先祖が代々守ってきたお墓を閉じるのは寂しい」という声もあり、このプロジェクトは悩む人たちの選択肢の一つとなりそうだ。

毛利石材工業・毛利洋平専務:
今までご先祖さまが眠っていたお墓ですので、お客さんの手元に使われていた石が残って、これから先も一緒に暮らしていっていただければと思います

毛利石材工業は、電話・対面のほか、SNSでも相談に応じている。

時代とともに供養の形が変わる中、先祖の思いが日常に溶け込む新しい“墓じまい”の形となるかもしれない。

(秋田テレビ)

秋田テレビ
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