「お食事、飲み物でございます」。新幹線の車内で聞きなれたいつもの掛け声。アイコンタクトですっと近づいてきてくれる親しみやすさ。そんなワゴン販売だったが、10月31日、東海道新幹線で半世紀におよぶ歴史に幕を下ろすことになった。

JR東海リテイリングプラス ワゴン販売歴19年 川尻真富果さん:
(お客さまから)直筆のお手紙も多数届いております。お客さまから東海道新幹線のワゴン販売がこれほど愛されていたんだなと、幸せな気持ちで今はいっぱいです
1964年の新幹線開業から続いてきたワゴン販売

東海道新幹線が開業した1964年。当初は販売員がワゴンに弁当やお茶を載せて車内を回るスタイルだった。弁当ひとつが900円と、当時の物価としては「高すぎる」と話題になったことも。
Q.おいしいですか?
ワゴン販売で弁当を買った客(1983年):
あんまりおいしくない
Q.弁当は高いですか?
ワゴン販売で弁当を買った客(1983年):
高いと思いますよ

販売員にこんな酷な質問も…
Q.あなたがもし買われる側なら高いと思います?
ワゴン販売員(1983年):
ちょっと高いですよねぇ

時代とともにコーヒーやビール、さらにお菓子と品数も増えた。通路が広くなった700系新幹線の車内では…
豊田康夫アナウンサー(1999年) :
広くなったから商売やりやすいですか?
ワゴン販売員(1999年) :
お客さまが通りやすくなったので…
豊田康夫アナウンサー(1999年) :
700系になったら何かサービスは変わる?
ワゴン販売員(1999年) :
いや特に変わってはない
開業以来、多くの乗客に親しまれてきたワゴン販売だが、近年、販売員の人手不足が課題になっていた。乗客が飲食物を車内へ持ち込むことが増えたこともあり、売り上げもピークと比べて半分以下に。そこでJR東海は「のぞみ」「ひかり」で実施しているワゴン販売を10月31日で終了することを決めた。
ワゴン販売最後の日
高橋唯記者リポート :
今、車内販売のワゴンが新幹線から降ろされました。車内販売の光景が見れるのも、きょうで最後となります
おなじみと思っていた車内サービス。11月1日からはもう列車内でワゴンが通る姿を見ることはない。
名物「スゴイカタイアイス」どうなる?

乗客:
ちょっと寂しい気がします。でも時代の流れかな
正直便利だったのでなくなるのはつらいですね。一番買っていたのは硬いアイスですね
(硬いアイス)30分ぐらい食べられないから、握って温めてね
惜しむ声が多かったのは、ちょっとした名物「硬いアイス」だ。

視聴者提供映像:
(アイスをスプーンでカンカンたたいて)東京着くまでに食えへんやん
ドライアイスで冷やししているため、「スゴイカタイ」と言われるほど、カチカチのアイス。
最終日に車内でアイスを食べた乗客:
最後ですから、プレミアムにしてみようかなということで(アイスを買いました)。ビュッフェがなくなり、ワゴン販売がなくなり、非常に寂しいなというところがある
Q.最後の日と思って食べるアイスは?
最終日に車内でアイスを食べた乗客:
やっぱ、カチカチでしたね

今後は、駅のホームに設置する自動販売機で買うことになるが、気になるのは、その硬さ。
高橋唯記者リポート :
柔らかい。程よい硬さで食べやすくておいしいです
19年間ワゴンを押してきた販売員の目には涙

19年間ワゴンを押してきた販売員も、サービス終了には感慨深げ。
JR東海リテイリングプラス ワゴン販売歴19年 川尻真富果さん:
車内で「ありがとう」って声を掛けていただくと、お客様の旅の思い出の一つを、私たちがお手伝いできていたんだなって。お客様それぞれの顔が浮かんできて…(涙)
時代とともに変わる、新幹線内の風景。また一つ“おなじみの風景”が過去の記憶へと変わっていく。
(関西テレビ「newsランナー」2023年10月31日放送)