ノンアルコール飲料(ノンアル飲料)が身近にあると生活習慣を制限しなくても飲酒量は減る。こんな実証結果を、筑波大学の吉本尚准教授らが発表した。

調査はアサヒビール株式会社との共同研究で、2022年6月ごろ~2023年1月ごろに実施。

そこではまず、飲酒習慣(20歳以上で週4回以上飲酒する、1日の飲酒量が純アルコールで男性40g以上、女性20g以上など)がある人を募集。アルコール依存でない、妊娠・授乳中でない、過去に肝臓の病気と言われていない、22歳~72歳の男女123人を集めた。なお厚労省の資料によると、アルコール度数5%の缶チューハイ(約500mL)1本で、純アルコールは20gとなる。

今回の調査の流れ(提供:吉本准教授)
今回の調査の流れ(提供:吉本准教授)
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この参加者をノンアル飲料を提供する「介入群」54人、提供しない「対照群」69人にランダムに分け、介入群にはノンアル飲料を無償で提供した。両群は20週間毎日、アルコール飲料とノンアル飲料の摂取量を記録したが、飲酒を含めた日常生活は制限することはなく、自由に過ごしてもらった。

飲酒量とノンアル飲料の摂取量の推移(提供:吉本准教授)
飲酒量とノンアル飲料の摂取量の推移(提供:吉本准教授)

すると、介入群の飲酒量は4週目で対照群よりも低くなり、12週目には、1日の飲酒量は純アルコール換算で平均11.5g減少したほか、ノンアル飲料は1日平均で314.3mL飲まれていた。こうした状況から、ノンアル飲料はお酒に「置き換わり」する可能性が示唆されたという。

2つの要因が飲酒量の減少に関係か

お酒の飲みすぎを防げるなら良いことだが、ノンアル飲料で満足できるのはなぜだろう。今回の調査では対照群の飲酒量も平均2.7g減少していたというが、これはどうしてなのだろうか。調査で分かったことや想定されることを、吉本准教授に聞いた。


――ノンアル飲料の影響を調べたのはなぜ?

お酒の飲みすぎは世界的な課題です。日本では1日あたり男性は40g以上、女性は20g以上の純アルコールを摂取すると、生活習慣病のリスクを高めるとされています。ノンアル飲料はお酒の代替品ですが、飲酒量に影響を与えるかのデータは世界中どこにもなかったので、実際に調べてみました。

記録する「レコーディング」の効果も(画像はイメージ)
記録する「レコーディング」の効果も(画像はイメージ)

――ノンアル飲料があると、制限せずとも飲酒量が減少したのはどうして?

今回の参加者にはいくつかの候補から飲みたいノンアル飲料を選んでもらいました。選んだものが家にあることで「飲んでみよう」と手にとり、お酒と置き換わったのではないでしょうか。

もうひとつ、調査では飲酒量を記録してもらったのですが、これはダイエットでも使われる「レコーディング」という行為になります。記録することで「意外と飲んでるな」と感じたのではないでしょうか。対照群で若干の飲酒量の減少がみられたのも、ここが関係していそうです。


――飲み物もさまざまだがノンアル飲料の良さは?

ノンアル飲料は風味がお酒に似ているので置き換えやすいのだと思います。調査終了後、参加者からは「体調がよくなった」「目覚めがよくなった」「続けようと思った」といった声を聞きました。機能性表示の飲料もあるので、我慢するのではなく、楽しく置き換えている印象でした。

お酒を飲んでいた・飲みたいときの活用がオススメ

――飲酒量を減らしたい場合、ノンアル飲料はどう活用すればいい?

仕事から帰宅したとき、休みなど「いつもならお酒を飲んでいた・飲みたい」ときに活用するのが良いと思います。調査の参加者はいろいろ試していて、お酒を飲む前、最初の1杯をノンアルにするとお酒が進まない。飲みたりないときに最後にノンアルを飲むとお酒の量を抑えられる。お酒をノンアルで割ると、おいしくて度数も抑えられるという声もありました。

お酒を飲みたいときにノンアル飲料を(提供:アサヒビール株式会社)
お酒を飲みたいときにノンアル飲料を(提供:アサヒビール株式会社)

――ノンアル飲料がきっかけで、お酒が飲みたくはならない?

実は今回の調査前、お酒の摂取量が増えるのではないかと議論になりました。データでは純アルコールの摂取量が減少したので“呼び水”にはなっていないようです。ただし、今回の参加者はアルコールの依存傾向にある方は含まれていないので、そうした方は注意が必要かもしれません。

普段飲むお酒を参考に選んでも良い(画像はイメージ)
普段飲むお酒を参考に選んでも良い(画像はイメージ)

――飲酒量を減らすことを考えた、ノンアル飲料の選び方のポイントは?

普段飲んでいるお酒に近いものを選ぶと、置き換えやすいと思います。ビールかカクテルなのか、炭酸の強弱はどうか、甘さはどうかといったところで、試してみると良いでしょう。


――今回の調査結果から、想定されることは?

ノンアル飲料が身近にあると手に取ると思うので、冷蔵庫などにあると、飲酒量が減るきっかけにかもしれません。データ上は4週間ごろから飲酒量が減るので、それくらいの期間は続けてほしいですね。ご家族の健康が心配な方は参考にしてほしいです。

依存傾向にある人は「暇を作らず、集中できることをする」

――アルコールを飲みたい気持ち(飲酒欲求)がある場合はどうすればいい?

個人的には暇な時間を作らない、集中できることをする。この辺りが良いと思います。運動や読書などの趣味があれば、抑えることができるかもしれません。飲酒欲求を抑える薬もありますので、医療機関の受診もお勧めです。 


――飲酒に関連して避けてほしいこと、注意してほしいことは?

1日当たり男性で40g以上、女性で20g以上の純アルコールを摂取しているなら、改善を試みるべきです。多量の飲酒を避けるのはもちろんですが、普段はそこまで飲まない方が、飲み会などで酔っぱらってけんかをした、けがをしたという話はよく聞きます。はめをはずさないようにしてほしいですね。



吉本准教授は「健康診断の数値が良くなかった、酔いやすくなったなどの変化を感じたら、お酒を減らすことを考えてほしい」とも話していた。気になる人はノンアル飲料を身近な場所に置く、飲酒量のレコーディングに取り組むといいかもしれない。

プライムオンライン編集部
プライムオンライン編集部

FNNプライムオンラインのオリジナル取材班が、ネットで話題になっている事象や気になる社会問題を独自の視点をまじえて取材しています。