けんか祭りとして知られる「伊万里トンテントン」。2023年も迫力の合戦が大勢の観客を沸かせた。また、高校生の死亡事故で長年禁止してきた未成年の参加が緩和され、“伝統と安全”を両立させる試みが始まった。
激しく組み合う迫力の合戦
1年で佐賀・伊万里のまちが最も熱くなる3日間。2023年は長年禁止されてきた未成年の参加が一部緩和され、合戦組に中学生の姿もあった。
この記事の画像(19枚)伊萬里神社の御神幸祭「伊万里トンテントン祭り」は、日本三大けんか祭りとしても知られている。
その名の通り、「トンテントン」と打ち鳴らす太鼓を合図に、重さ約550kgの荒神輿と団車(だんじり)が激しく組み合う迫力の合戦が見ものだ。
20日金曜日の夜、宵祭りの「安幕」で幕を開けた。2023年、大きく変わったのは未成年の参加だ。
香月孝夫実行委員長:
少子高齢化によって、この伝統文化の存続というのもなかなか厳しい状況にある
過去には高校生の死亡事故も
かつては10代の若者も合戦に加わっていたが、2006年、男子高校生がみこしの下敷きになって亡くなる事故が起きた。以来、未成年の参加は禁止されてきたが、2023年から一部緩和されたのだ。
未成年の参加の緩和について伊万里市民は、「伝統なので、ずっと続けていかなきゃいけないので、良いことだと思う」「やっぱりけががない祭りになってほしい。そして伊万里が元気な町になってくれればそれでいいと思う」と話した。
香月孝夫実行委員長:
ベテラン勢がしっかりとサポートをして、そして伝えていく、後世に受け継ぐ。そういった機会にしていきたい
伊万里市の統計によると、市内の人口はこの30年間で8,000人余り減り、高齢化率は約2倍、33%まで上がっている。地域の大人は担ぎ手が減少していく中でも、伝統を次世代につないでいく使命を感じている。
方針は「安全対策を十分に」
一方、祭りの1週間前には未成年を参加させる方針を見直すよう、2006年の事故で息子を亡くした父親らが要望書を提出した。
息子亡くした父親:
未成年が合戦の方に参加すれば、けが人や死人が出てしまう。また同じことを繰り返さないためにもここで声を上げておかないと、突っ走ってしまうんじゃないかと
実行委員会は「安全対策を十分にとる」として方針は変えず、結果、立候補した9人の中学生が合戦組に加わった。
参加するのは組んでも倒さない「模擬合戦」のみだ。
中学生の息子が参加:
本人が楽しんで出たいと言ったので、危ない祭りとは言われていますが、けがのないように楽しんできてほしい
世話人(団車):
模擬合戦のときだけ出しますということで、こうして慣れていって、安全面を考えながら、この祭りを楽しんでもらうというのが趣旨ですから
一方、事前に倒す方向を決めておく「奉納合戦」には規約上は高校生以上が参加できるが、実行委員会は未成年の間を“研修期間”と位置づけている。2023年は2人の高校生が手を挙げたが、「練習が足りない」との判断で参加は見送られた。
夫が参加:
けがしないかドキドキはしますね、毎年。これから先も長く続いてほしい
ーー大きくなったら参加してみたい?
男の子:
はい
合戦は、伊万里市中心部一円に設けられた数々のポイントを“巡幸”しながら行われる。3日間で約10カ所、訪れた10万人以上を沸かせた。
埼玉から(伊万里市出身):
きのうも来たけど、きょうもやっぱりトンテントンの血が騒ぐの(笑)。一生懸命カメラで撮った。うれしかった
祭りを締めくくるのは「川落とし合戦」。荒神輿と団車が組み合ったまま川に落ち、引き上げるスピードを競う。
荒神輿が勝てば来年は「豊作」、団車が勝てば「豊漁」になると伝えられているが…
2023年は荒神輿の勝利。大きな拍手が送られた。
有田町から:
初めて見たんですけど、とても迫力があって、見ていて楽しかったです
このあとは再び巡幸しながらみこしを伊萬里神社へ。後片付けをする男衆の表情はどこかさびしげだった。
「伝統をつなげていきたい」
荒神輿のけんか大将は「みんな次が待ち遠しいんじゃないかと。やっぱり伊万里っ子ですから。トンテントンが好きです。これからもずっと長く続いてほしいと思っています」と希望を込めた。
香月孝夫実行委員長:
子どもたち、中学生がやっぱりこの祭りの伝統をつなげていきたい、そういう思いから参加したということは、この伝統の文化が末永く続いていくことではないかなと期待しております。もちろん第一義に安全安心というのはしっかりとこれからも考えていきながら、この祭りを地域の皆さまとともに愛されるような祭りにしていきたい
(サガテレビ)