授業中に性的な発言をしたことがきっかけで担当を外された高校教師が、逆恨みから校長を恫喝するなどしたとして、静岡県教育委員会は10月24日に懲戒処分を発表した。ただ、処分内容は停職わずか1カ月というものだった。

始まりは“宦官”に関する説明

職務義務違反などで静岡県教育委員会から停職1カ月の懲戒処分を受けたのは県西部の公立高校に勤務する男性教師(56)だ。

一体なにがあったのか。

県教育委員会による会見(10月24日)
県教育委員会による会見(10月24日)
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きっかけは授業中に発した言動にあった。

男性教師は2021年4月、社会科目の授業の中で中国の“宦官(かんがん)”について説明した際に男性器の俗称を連呼。これにより女子生徒2人が男性教師の受け持つ授業に出席できない状態となり、別の教師に被害を申し出たという。

これを受け、校長は5月10日に女子生徒が在籍するクラスの授業担当から男性教師を外す措置を取り、その後も「独善的な解釈はしないように」などと授業の改善を促したものの、結果として「改善が不十分である」として担当から外された状態が続いた。

この措置に納得がいかなかった男性教師は2022年3月、校長に措置の撤回を直談判するも状況が変わることはなかった。

異例!現職教師が生徒を提訴

すると、それから1年近くが経過した2023年1月。被害を訴えた女子生徒のうち1人に対して謝罪文を求める調停を申し立て、4月には謝罪と損害賠償を求めて浜松簡易裁判所に提訴した。さらに、女子生徒の自宅に訴訟に関する文書を送りつけたという。

また、3月には授業担当を外す措置の継続を決めた校長に対して、机にこぶしを叩きつけるなどして恫喝。6月になると今度は「女子生徒を持たせないという処置を取り下げれば訴えを取り下げる。目的はそこにある」などと脅しとも受け取れる発言をしたとされる。

県教育委員会が入る静岡県庁 西館
県教育委員会が入る静岡県庁 西館

加えて7月以降、県教育委員会が事情聴取と共に弁明の機会を与えようとしたものの、男性教師は体調不良や所用を理由に、6回の要請に対していずれも応じなかったそうだ。

訴え取り下げるも謝罪・反省の弁なし

このため、県教育委員会は「調停・訴訟制度をいわば悪用し、被害を申し出た女子生徒を威嚇して通報制度の存在を危うくした点に著しく反社会性が認められる。相手が教育・指導する生徒であったことからすれば教員としての本来的業務をも放棄しており看過できない」と断罪。

その上で、繰り返し指導された授業改善への取り組みを放棄したことを「職務懈怠」、何の落ち度もない女子生徒に対し一方的に調停や訴訟を起こした上、関係書類を自宅に郵送し精神的苦痛を与えたことを「生徒への不適切な言動」などと評価した。

ただ、処分内容については「授業中の性的な発言は当時校長から口頭指導を受けているため今回の処分の対象外」と前置きしつつ、「県内で同様の事例が過去にない中で類似事例や他県の事例を踏まえ、顧問弁護士にも相談し停職1カ月が妥当と決定した」と説明。

なお、男性教師は7月に生徒に対する提訴を取り下げているが、10月24日に県教育委員会が処分書を手渡した際も特に謝罪や反省の言葉はなかったという。

前述の通り不適切な言動は“宦官”を説明する中で発せられている。“宦官”は宮廷に仕える去勢された男性のことを指し、それだけに男性教師には思うところがあったのかもしれない。とはいえ、その後の恫喝や脅迫まがいの言動、生徒や保護者に対する威圧感を与える行動は、教員としてのみならず、一人の社会人として度が過ぎていると言えるだろう。

県教育委員会・池上重弘 教育長
県教育委員会・池上重弘 教育長

県教育委員会では2023年度の懲戒処分がこれで9件目となり、池上重弘 教育長は「教職員としてあるまじき行為であるとともに、学校教育に対する信頼を著しく失わせるものであり、社会的責任は極めて大きく、深くお詫び申し上げる」とコメントしている。

(テレビ静岡)

テレビ静岡
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