サッカー・J2は残り4試合と佳境に入る中、首位・町田を勝ち点8差で追う2位の清水エスパルス。J1昇格、さらには序盤の劣勢を覆す大逆転優勝に向け熾烈な戦いが続くが、指揮官はこんな時だからこそ基礎・基本の重要性を説く。
悲願のJ1復帰へ 残るは4試合のみ
7日にジュビロ磐田との“元祖”静岡ダービーを1対0で制し、再び2位へと浮上した清水エスパルス。
選手たちには「ダービーに勝利したら休みを1日延ばす」ことが伝えられていたようで、秋葉忠宏 監督の“ニンジン作戦”が見事、結果に結びついた。
一方、シーズン中としては“異例”となる4日間のオフには気分転換の効果もあったようだ。ある選手はテーマパークに、別の選手はグランピングにと多くの選手が家族や自分の時間を楽しみ、リフレッシュした状態で練習に取り組むことが出来た。
アウェイでのいわき戦を21日に控える中、当週に行われた11対11のゲーム形式の練習には誰もが集中力を高めた状態で臨み、様々なシーンで激しく体をぶつけあうなど本番さながらの緊張感ある充実した内容となった。
これまで一貫して「止める」「蹴る」「運ぶ」「外す」というサッカーの基本を“速く正確”に行う練習を続けて来た秋葉監督。「今さら新しいことをやるつもりはない」と言い切り、攻撃的なサッカーをいかに着実に遂行するかという観点から、我慢強くボールをつなぎ、これまでに培った圧倒的な力を発揮して得点を奪って勝ち切る算段だ。
いわきは前回の対戦時に9対1と圧倒した相手だが、チーム内で同じ展開になると想像している者は誰一人としていない。
一方で、スコアは同じにならないとしても「同じメンタリティー」で試合に取り組むことが勝利を呼び込むことにつながると“秋葉イズム”を理解している選手は多い。
残りは4試合。リーグ戦の最終盤は順位に関係なく様々なドラマが起こりやすい“しびれる環境”だ。1点の重みはますます重くなるだけに「止める」「蹴る」「運ぶ」「外す」の強化がさらに相手を突き放すきっかけとなるのか注目される。
秋葉監督「J1で勝てるチーム目指して」
この記事の画像(5枚)-ダービーから1週間。そして次の試合まで1週間。どういう週にしたいか
清水エスパルス・秋葉忠宏 監督:
選手達はメリハリがついている。先週末の紅白戦でも改めて大した選手たちだなと思った。正しくハイレベルな競争をしてくれている。10~11月は統計的にケガの多い時期。心と体の休息をしっかり取ってくれて、やるときにはやると。ここからの4試合、大一番に向けて充実して、乗ってきているなという印象。
-ミーティング内容は
清水エスパルス・秋葉忠宏 監督:
どのようなメンタリティーで臨むのか。また、ダービーで守備面は良かったが得点が少なかった。攻撃面ではもっと数を増やすために「止める」「蹴る」「運ぶ」「外す」というサッカーの基本で精度を上げる練習をした。
日本代表戦を例にして、良い悪いといったパスの質や、止め方、運び方など、基礎・基本を再確認した。そうしたところにミスがなければ、難しいことをしなくとも相手の意図を壊すことができる。
「3人抜いてくれ」などという難しいことではなく「止める」「蹴る」「運ぶ」「外す」というサッカーの基本をより速く正確に実践するということでミーティングをした
-細部にこだわるのはメンタル的に大事か
清水エスパルス・秋葉忠宏 監督:
そこだと思う。意識しなくなると緩くなるというのは常で、細かいことにこだわるほど意識は上がると思う。集中力を増さなければいけないので、気持ちが抜けた時間を作らないように。
藤枝戦は自分たちで正確にボールを扱わないことで抜けた時間を作ってしまった。相手に崩されたとは思っていない、自分たちで崩し自滅してしまった。
そういう時間を作らないために、より高い集中力と意識で「頂」を目指さなければならない。我々はJ1に返り咲くだけでなく、J1で勝てるチームになることが目的。
期待感がないとファン・サポーターやフロントも納得しないだろう。レベルアップしないと。全員で高い意識を持って臨みたい。
-残り4試合。下位のチームと当たるが「だからこそ」の難しさは
清水エスパルス・秋葉忠宏 監督:
少し前にそのような話をしたが、今は違う。高いところを目指すなら、圧倒的な力を見せるべき。それだけのサラリーをもらっているし他のチームとは違う。それに見合った施設やクラブ規模、環境も違う。金銭に見合ったプレーを見せるべきで、高い志を持つように選手に伝えている。
-試合の間隔が2週間となったがチームの過ごし方は
清水エスパルス・秋葉忠宏 監督:
チームでいろいろ考えた。ダービーに勝ち、1日休みを多くした。負けていたらなかった。選手たちが自分たちで勝ち取った休み。今の集中力の高さや雰囲気の良さになって返ってきている感じ。サポーター・ファミリーとともに作り上げてきたここまでだと思う。だからこそあと4試合、絶対にこれを手放さない、無駄にしないようにしたい。
ここからやり遂げるからこそ前人未到の「7戦までで勝ち点5のチームが昇格していない実績」を変えることになるので、たった4試合、練習を集中してやりたい。
最後の4試合は理屈ではないことが起こる。思い通りになるということがない現場だと思うので、圧倒的な力を見せて欲しいと選手に言っている。相手より3段も4段も上を行っているという強烈なメンタリティーが必要。いい状態に仕上げてくれると思っている。
中山選手「いいイメージはある」
清水エスパルス・中山克広 選手(前回のいわき戦でハットトリック):
14日に行われた紅白戦では先制点を獲った。相手の背後を一発で取れたシンプルないい点だった。前に出してもらえれば抜けられる自信はある。
それぞれ特長を持っていて右サイドのポジション争いは熾烈。その中で、自分にしかできないところがあのシーンだった。その後にも突破していいクロスを上げられた。1対1の強さをアピールすることもできたのでは。
ホームのいわき戦では人生初のハットトリックを決めることができたので、いいイメージはある。すでに監督が代わっているが、前からプレスをはめに来るスタイルで、それは逆にこっちにとってチャンスで、前から来るチームに苦手意識はない。自分たちの“ちゃんとした”サッカーができるのではと思う。
ダービーでの勝利で、ラスト4試合を前にチームはとてもいい雰囲気。勝てば「その後4日間のオフ」と決まっていたので、自分はグランピングでリフレッシュした。シーズン中にはあまりないことで、とてもリラックスできた。
これからの4試合、もし誰かがサボっていたら、率先してプレスに行くとかしてチームを引っ張っていければと思う。ただ、どの試合も“まるでホームのように”サポーターがスタジアムの雰囲気を作ってくれる。その力を存分に借りたいと思う。
サンタナ選手「すべて決勝のような…」
清水エスパルス・チアゴ サンタナ 選手:
※前回のいわき戦でハットトリック
いわきとの前回戦で、ハットトリック出来たことは自分にとって日本で初のことだったので、とても貴重な経験となった。
ただ、次の戦いはまったく違うものになる。相手のホームだし、非常に難しい試合になる。もちろん相手のことをリスペクトしながら、勝ち点3を獲りに行く。
いわきは監督が代わってから戦い方も変わった。最近の試合は調子いい。確か7勝7分4敗という成績。先ほども言ったが難しい試合になるが勝つ。
先週に関してはリフレッシュできた。子どもたちが好きなレゴランドに行ってきた。喜んでいた。子ども達は学校に行っているので、貴重な時間だった。お土産もたくさん買った。
今週はギアを上げて、守備、攻撃の改善をしてきた。この4試合すべて「決勝」のようなもので、ミスが許されない。4試合、選手全員集中してできると思う。
高橋選手「また9点獲る勢いで」
清水エスパルス・高橋祐治 選手:
まだまだ順位は決まっていないので、1試合1試合プレッシャーがかかる。だが、それは今までと同じであり、目の前の試合にだけに集中するということに変わりはない。
やられるときはあるが、磐田とのダービーでは「絶対やられない」という心構えでやっていたし、ホームの声援のおかげで、「負ける気がしない」中で試合が出来た。スタジアム自体でそんな雰囲気を作ってくれたので、「今日は勝ったな」という、そんな気持ちでプレーできた。
次はアウェイだがサポーターの協力も含め、いわきには、また9点を獲る勢いで臨みたい。4試合で急に上手くなることはないが、集中することでいいプレーをすることは出来る。自分は、守備でも、攻撃でも貢献したい。上だけ目指して取り組みたい。
(テレビ静岡 報道部スポーツ班・外岡哲)