新型コロナウイルスの影響により、入社直後からテレワークなどが行われたことで、不安を抱えている新入社員は多くいるだろう。一方で、受け入れる社員側もテレワークでの研修など戸惑っていることがあるかもしれない。

そのような中でリクルートマネジメントソリューションズが、2020年の新入社員への意識調査を行い、その結果を発表した。調査は2種類行われ、一つ(調査1)は同社のeラーニングサービスでビジネスマナーや基本行動・スタンスを学んだ受講者1680人に、「仕事をする上で重視するキーワード、職場・上司・先輩に求めること、スタンスに対する意識」を聞いたもの。

もう一つ(調査2)は、全国各地で開催した新入社員導入研修の受講者350人に「上司や職場に期待すること、期待や不安などに関する質問」をした。この調査は10年以上継続的に実施していることから、過去の傾向との比較ができる。

ふたつの調査から、新入社員が抱える不安や期待、仕事をする上で大切にしている価値観などを知ることができる。

アットホームな職場が理想

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まず、今年の新入社員が働く上で大切にしたいことについて。調査1では「成長、貢献への関心が高い一方、創造、仕事以外、金銭、ビジョンにはそこまで関心がない」、調査2で「スキル・知識への関心が高く、率先して挑戦や行動する志向は年々下降気味」という結果に。

理由として挙げられるのは、経済的な豊かさによる物質・金銭的欲求や挑戦をすることへのモチベーションの低下、欲しい情報に容易にアクセスできる情報社会で育ち、実用的なスキル・知識への関心が向上しているためであるという。

また、理想の職場としては「鍛えあい、活気のある職場よりも、助け合う、アットホームな職場を求める」傾向にある。困っているときは助け合い、チャレンジできる雰囲気や一致団結、個性の尊重を求める一方で、互いによきライバルとして競い合うことは強く求めていない。

その理由は、多様性を尊重する教育を受けたこと、サービスされる、選ぶ側としての経験が多く、個人最適な消費活動へパワーシフトしているからだという。

ただ、「助け合い」や「アットホームさ」といった新入社員が求める理想の職場は、同じ環境にいてこそ成り立つもので、助け合ったり、助けて欲しいという信号を発信することも、現在のテレワーク環境の中ではなかなか難しいように思える。

しかし、情報社会で育ってきた新入社員からすると、そのような環境の中で関係性を築くことは慣れているかもしれない。

リクルートマネジメントソリューションズHRD事業開発部・研究員の小松苑子さんは、「オンラインツールやチャットは若手の方が慣れており、新入社員は対面よりも本音や気持ちを吐露しやすいという意見も出ています」と話す。

対面だと上司の役職などを意識して話したいことも話せないが、オンラインやチャットではそうした意識が薄まり、フラットな関係を築けることもあるというのだ。

そのため、チャットや簡易なメッセージでこまめに様子を伺う、絵文字で感情を伝える、「いいね」と肯定・受容の態度を示す、オンラインだからこそマスクを外せるときは表情などの非言語表現を意識するなど、色々な方法を使うことが必要だという。

支援型リーダーが期待される

次に理想の上司像については、叱られ、失敗しながら成長する体験の減少や逆評価の体験の増加から、「熱血型リーダーではなく、丁寧に指導・傾聴・認知できる支援型リーダーが期待」され、「相談にのりフォローする、認める、褒める、耳を傾け受け止める」関わりが強く求められているという。

また、“ファーストペンギン”のように新しいものに恐れず、率先して試行、挑戦することへの関心が低いという特徴もある。「何も知らないのに失敗して怒られ、評価が下がるのは嫌。なぜ挑戦することを求めるのか」「人によって期待が違い、どこまで自分の裁量でやっていいかわからない」という新入社員の思いがあるようだ。

こうした特徴から上司側は「仕事を依頼する際には、本人への期待や任せる理由、仕事の意味や目的を伝えたり、少しでも自発・試行的な言動が見られたらキャッチして認めたりすること。また、個人のチャレンジを奨励したりする制度や仕組みを作る」ことが大切だとした。

新入社員にとっての理想の上司は、ある意味で“優しさ”が求められているが、チャットツールなどではときには厳しい口調になり、相手の性格や人間性を理解していないと上司の言葉の真意を読み取ることは難しいこともある。

まだ関係性が希薄な新入社員とチャットツールなどでやりとりをする際に心掛けたいことについて、リクルートマネジメントソリューションズHRD事業開発部・主任研究員の桑原正義さんは「仕事以外のコミュニケーションが大切」だとした。

「新入社員の人となりや持ち味、性格を理解したうえで接することで、お互いにいろいろなことが受け止めやすくなる。チャットでもオンラインでもできることで、業務のミーティングをやる前に雑談を取り入れたりしてお互いを知る機会を作ることが重要です」。

Z世代は真面目に社会に貢献したい?

昨今の新入社員のイメージでは「残業をしたくない」や「飲み会に参加したくない」などプライベートを重視する傾向があったように思えるが、今回の調査1では、仕事をする上で重要視したいことは、「成長」「貢献」への関心が高く、「創造」「仕事以外」「金銭」「ビジョン」はそこまで関心がなかったということが分かっている。

初めての調査ということもあり、桑原さんは「弊社が実施した新入社員研修時の意識調査なので、このタイミングで“プライベート重視”と主張しにくかった可能性もあります」と前置きしたうえで、最後にこう話してくれた。

「今の社会人1年目がZ世代と言われる世代。それ以前のミレニアル世代にも見られましたが、 “真面目に社会に貢献したい”意識がさらに強まり、 “プライベートも含めて、より意味や価値を感じられることに時間を割きたい“という意識を感じます。今回の結果は引き続き注目していきたいポイントとなりました。

Z世代は自分のやりたいことや目指したいことにつながっているか、を大事にしています。大手企業に就職していても自分の目的につながらなかったらスパッと辞めてしまう人も。ミレニアル世代はプライベート重視の傾向がありましたが、“やりたいことの追求や自分らしさを生かす”ことに意識がシフトしつつあるのかもしれません」

こうした新入社員の特徴を踏まえた上で、新人育成のポイントは2つ。自分で考えたり、探究したりする力を身に付けられるよう、自立した成長力を重視することと発想の転換をすること。

発想の転換とは、「若者は未熟」「組織に適応させる」という思考になるのではなく、若者の考えを学んだり、個性を生かしたりしていくことだという。上司も新入社員も共に考え、学び合うことがこれからの育成には求められているのだ。

プライムオンライン編集部
プライムオンライン編集部

FNNプライムオンラインのオリジナル取材班が、ネットで話題になっている事象や気になる社会問題を独自の視点をまじえて取材しています。