【前編:「ちゃんとやらなきゃって思わないで」阿川佐和子さんに聞く介護との向き合い方 “時々ズル”のススメとは?

佐々木恭子アナウンサー憧れの大先輩、阿川佐和子さん(右)との対談が実現

リモートお見舞い・リモート葬儀を実現!

佐々木アナ:
コロナ禍では、介護施設にお見舞いに行けない、訪問介護を行うのが難しいなど、さまざま見聞きしましたが、実際のところはいかがでしたか。

阿川さん:
それはありましたよ。母の認知症の進み具合はゆっくりゆっくりだったのだけど、さすがに2019年の暮れくらいから足元も危なくなってきて、家でケアするのも大変になってきたんですね。1月から3月までの寒い時期だけでも、父もお世話になった病院にショートステイで入ってもらおうということになりまして。

そうしたら、ちょうど新型コロナの感染拡大と重なって、ショートステイのはずが病院に「継続でお願いします」とお願いし、そうしたら、2月に病院から連絡があって、母が小さな脳梗塞を起こした、と。口に少し麻痺も出て、食べ物を口から入れられなくなるというので面会に行ってね、でもその後いよいよ完全に面会謝絶になってしまって。すると、アメリカに住んでいる弟が、一度はお見舞いには帰れたものの渡航制限も始まってきたから、「リモート面会できますか?」と病院に提案したんですよ。

私はすぐに病院側に「申し訳ございませんっ!新型コロナで大変なときに新しいことに取り組んでくださいなんて、弟が無理なお願いをしたようで」ってお詫びの電話をしたの。そうしたらまあ姉弟喧嘩になってね、「面会謝絶になっている他のご家庭のためにも良かれと思って提案したのに、勝手に保護者みたいな顔して!」「なに~」なんてやりあって。しばらく経って病院から、「リモート面会ぜひ試してみたいんですけど、ご協力いただけますか」って連絡があったんです。

佐々木アナ:
えぇ?まさかの展開ですね。

阿川さん:
リモートでビデオ通話を試みて、母の病室に端末を持っていってもらってね、「母さ~ん!わかるぅ?」なんて呼びかけたら、「はぁ?」って母の反応はそれほどよくないけれど、「あぁ動いてる!まだ生きてる!」って姿をこちらは確認できるだけで、随分違うということがわかったんですよ。

病院側も「こういう時だからこそ、大変いいアイデアをありがとうございました」と言ってくださり、たまたま私の友人のご両親が同じ病院に入っていらして。リモート面会を実行して、「父が手を振ってくれて、本当に感激した〜〜。面会に行けなかったから、ずっと心配していたから」と言ってくれてね。

佐々木アナ:
大きな貢献ですねぇ。

阿川さん:
その後、母は点滴をしている箇所から感染が起こって熱が出て、病院からも「この事態は不要不急ではないです。すぐにいらしてください」と呼ばれたんです。私ともう一人の弟と夜も病室に泊まれる準備をして駆けつけて、アメリカの弟とビデオ通話をしながら、酸素マスクをしている母に「母さ~ん」と呼びかけながらね、反応はないんだけど、姿が見えているということが本当に大きくてね。結局、私と下の弟が見守る中、時々ロスの弟とビデオ通信でつなぎながら、母は息を引き取ったんです。

佐々木アナ:
…技術の進化があるからこそできたこともあったんですね。

阿川さん:
そう。そして、次は葬儀をどうするか?という話になったのね。もうその頃は完全に渡航制限されていたから、弟も日本に帰ってきたいけど帰れない、どうしようかということになって。結局、リモートで葬儀に参加したんですよ。端末越しに喪服着て、お焼香もしてね。お寺さんからしても、「夏のお盆で何百人も集まる行事をどう実現しようかと考えていた矢先だったので、いい経験をしました」と言ってくださいました。

「個人の努力ではどうにもならないこともある」と語る阿川さん

「なっちゃったことは仕方ない」その状況で笑えることは?

佐々木アナ:
コロナ禍で、リモートでできることがいかに多いか、いかに繋がれるかもわかった一方で、人と会いたい時に会えることの意味も再確認しました。阿川さんにとって、人とリアルに会えることの意味は、何か変わりました?

阿川さん:
私は総じて、なっちゃったことは仕方ないじゃない?と思うんですよ。そりゃあ、大切な人とは直接会えたりハグできたりする方がいいけれど、こんな事態になっちゃったことは仕方ないじゃない?個人の努力だけではどうにもならない。

自粛期間、恋愛中の人は本当にお気の毒だなと思いましたよ。一目でも会いたいのに会えない、チューもできないわけでしょ、私にはとっくにそういうことが終わっちゃったからよかったんだけど(笑)。

「なっちゃったことは仕方ない」と思うのは、母の認知症もね、最初はもちろんショックで、今からでも脳トレをやってみたら何か良くなるんじゃないかとか思うこともあったし、「さっきも薬飲んだでしょ~~!」とかヒステリックに叱りつけちゃうこともあったり、反省することは多いのですが、最初の頃は本人が一番苦しい。全部がわらかなくなっているわけではない、わかることも残っているのに、「壊れた人」として類型化され「どうしてできない?」と叱られ、責められ続けているわけなんです。

「本人が一番苦しい」のに、ヒステリックになり反省することも多かった・・・

阿川さん:
でも、時間はかかったけれど、なっちゃったことは仕方ないと思えるようになって、どれだけ笑えることを探せるか?どれだけ今現在を楽しめるか?と探してみると、あるのよ~!笑えることは。

コロナ禍もね、もちろん不便なことも不安なこともたくさんあります。でもね、私の場合は、これまで追われすぎていた仕事がキャンセルになって、落ち着いて原稿を書くことができたとか、ご飯を1日3度作れたとか。疲れたし、太ったけどね(笑)

「コロナギフト」だってきっとあると信じて・・・

以前、南果歩さんと対談したときに、「プライベートでも辛い状況のときに乳がんが見つかり、アメリカで治療を受けていたときにお医者さまに言われた言葉があった。『生きている意味がまるでない、お先真っ暗、楽しいことはひとつもないと思うときにでも、神様は必ずひとつはプレゼントをくれているはず。だから、それを探してみなさい。それが“Cancer Gift”(ガンによるギフト)だよ』って。それを言われて、ガンになったからこそ、“生きていれば何でもできる”ってものの見方に変わったんです」という話をしてくださってね。「コロナギフト」(という言葉がいいのかどうかはわからないけれど)、きっとあるはず、なのよね。

私の場合は、そんなわけで追われていたものから少し解放されて、また元の忙しい日常に戻れるのかな、なまけ癖がついちゃったな…そんな気持ちの真っ只中にあります(笑)。

【インタビュー後記】

結局のところ、聞き上手は話し上手…なのですよ。一度お会いしてじっくりとお話を伺ってみたい。そう思いこんでいた私は、「初めまして〜!」と勢い込んで挨拶するなり、「えぇ、佐々木さん会ったことあるわよ。『スタ⭐︎メン』(2005年)の番組が始まるときに、『とくダネ!』にお邪魔したもの〜」とご指摘を受け、改めてベストセラー『聞く力』を読み直さねばと焦る出だしとなりました。

が、話してくださる阿川さん、それぞれの登場人物の「   」「   」カギカッコが躍動していて、オチがあり、エピソードがまるで落語のようなのでした。

声色も表情もくるくる豊かに変わり、(若輩の私がいうのは僭越ですが)とても可愛らしい一方、何が起きてもどんと来い、どんな状況からでも幸せのかけらを見つけ出す観察眼と心持ちに、わたしも「○○ギフト」を探せるような人でありたいと思います。

そして、また仕事を増やして申し訳ないですが…ぜひ、『話す力』も上梓していただきたいと切望します。

【インタビュー・執筆:フジテレビ アナウンサー 佐々木恭子】
【撮影:関村 良 / TRIPOT.】