イスラエル情勢が緊迫度を増す中、アメリカのバイデン大統領が18日にイスラエルを訪問すると明らかにした。なぜこのタイミングなのか?地上侵攻への影響はあるのか? バイデン大統領のイスラエル訪問に隠された表と裏にスポットを当てて、中東情勢に詳しい国際開発センター研究顧問の畑中美樹さんに聞いた。

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バイデン大統領はアメリカ国内に意識が…

いまガザにいる人たちは、イスラエルそしてハマスに対しどんな思いを持っているのだろうか。

国際開発センター研究顧問 畑中美樹さん:根本的にはイスラエルが悪いと思っているでしょう。ただそうは言いながらも、そのイスラエルに適切な対応を取れていないパレスチナ側、あるいはハマスに対しても良くない印象を持っているかと。そういう2つの思いが重なっていると思います。

長年こういった中東諸国、研究調査されている中で、今回の衝突をどういうふうに見ていますか?

国際開発センター研究顧問 畑中美樹さん:ハマスが、パレスチナの人たちに対する"アリバイ作り"を行ったとみています。なぜかと言うと、今ガザの人たちは経済的苦境にあり非常に不満が高まっています。それに適切に対応できていないパレスチナ側の、あるいはハマスに対する批判は高まりつつあるので、それが自分たちに向かわないように…ということがあったのではないかと思います。

水、食料、燃料なども入ってこない過酷な状況。そんな中で、バイデン大統領が18日にもイスラエルを訪問する見込みだが、どういった話し合いが行われるのか、畑中さんの見解がこちらだ。

民主党支持のユダヤ系有権者が"一部"共和党に流れてる…

表向きには、バイデン大統領はハマスを批判し「イスラエルの支持」を再確認するのではないかということだ。しかし、その裏にはアメリカのユダヤ系有権者へのアピールがある…と。バイデン大統領はアメリカ国内に目を向けているということだろうか?

国際開発センター研究顧問 畑中美樹さん:バイデン大統領にとってこれから1番大事なのは、2024年の大統領選挙だと思うんです。そこで、当選が確実になるようなことをしなければいけません。アメリカの国内政治の中では、ユダヤ系の方々のホワイトハウス、あるいはアメリカ国内政治に対する影響力は強いので、それを意識しているということだと思います。

 ユダヤ系の有権者へどれだけアピールできるか、バイデン大統領にとってはそれほど重要なのだろうか?

関西テレビ 加藤さゆりデスク:アメリカ国内には500万人以上、ユダヤ系の方がいると言われています。大半は民主党を支持しています。なので基本的にバイデンさんの支持母体ですが、その一部が今、共和党にも流れかけているっていう情報もあるので、大統領選ではかなりの影響力を持つと言えるのではないでしょうか。

そして、畑中さんによると、表向きにはイスラエル・ハマス双方に攻撃自粛を要請。しかし裏では「問題解決できないが、介入するポーズをとる」のではないかと。これはどういうことだろうか。

国際開発センター研究顧問 畑中美樹さん:アメリカとしてはイスラエルとパレスチナの問題は歴史的に根深いものがあるので、そう簡単にはいかないと考えている。ただ、そうは言いながらも『アメリカが何もしないのか』と国際社会から批判を受けてはいけないので、アメリカとしては一生懸命努力していることを、示そうとしているのだと思います。

ガザへの地上侵攻はバイデン大統領の訪問後「数日以内」

イスラエル側が強い姿勢を示している地上侵攻がどうなっていくのか、畑中さんの見解は「バイデン大統領の訪問後、数日以内に行われる」と。そしてそれをアメリカは"黙認"する…と、これはなぜだろうか?

国際開発センター研究顧問 畑中美樹さん:バイデン大統領がイスラエルに行く前に地上侵攻に踏み切ると、バイデン大統領の顔をつぶすことになる。だからバイデン大統領の話をよく聞いて、協議をして、分析・判断をしたけど、問題解決できないからやむなく地上侵攻するしかない。これで相手側のテロを抑制する以外にないんだ、と論理主張をしてくるでしょう。

一刻の猶予も許さないのがガザの方の命だ。ガザ地区では深刻な人道危機も問題になっていて、地上侵攻が始まるとさらに深刻になると予想されるが、こちらについて、アメリカはどう対応するのだろうか?

国際開発センター研究顧問 畑中美樹さん:この問題の解決のためにアメリカだけが人道支援を請け負うと経済的に負担が大きい。「世界が一致して解決すべき」と主張することで、日本も含めた先進国、近隣諸国で人道支援をしていきたい狙いがあるでしょう。国際社会全体として、欧米と日本で広く分担してという考えでしょう。

近隣諸国でいくとエジプト、その境界にある「ラファ検問所」は、避難を希望する多くの人が集まっているが閉鎖された状態だろうか?エジプトの協力は得られそうなのだろうか?

国際開発センター研究顧問 畑中美樹さん:エジプトとしては難民を入れると財政的な負担が大きくなります。家も食べ物もない人たちの面倒をみないといけません。政治的なリスクもあります。国内に入ってくる人たちが穏やかな人ばかりではなく、過激な人も紛れ込んでいるかもしれないからです。そういうことを懸念しているので簡単に検問所を開く方向には動いていません。

“世界の産油国”に波及すると、さらなる物価高や円安も

近隣諸国もどう支援していくかで一筋縄ではいかないようだ。

ここで視聴者から届いた質問を紹介する。

Q:アメリカ軍は今後、この戦闘に参戦するのか?

国際開発センター研究顧問 畑中美樹さん:アメリカは参戦しないでしょう。武器の支援は強化しても自らの関与はしないでしょう。

Q:物価高や円安に影響があるのか?

国際開発センター研究顧問 畑中美樹さん:この問題がどこまで波及するかにかかっているでしょう。今のところは東地中海に限定した問題です。しかし、アラビア半島のサウジアラビアなど“世界の産油国”に波及するような事態になると、日本にとっても物価高になったり円安になったりと影響が出てくるでしょう。ただ今のところは東地中海に限定しています。

Q:この問題が長期化して1年以上に渡り武力衝突は続くと思うか?

国際開発センター研究顧問 畑中美樹さん:1年以上続く可能性は10%未満かと。理由はイスラエルとしても、紛争が長期的に続くのは経済的にも国内政治的にも耐えられないからです。長期化はしないと考えています。

地上侵攻がいつ行われるのか、予断を許さない緊迫した状況が続いている。これ以上犠牲者が出ないことを祈るばかりだ。

(関西テレビ「newsランナー」10月18日放送)

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