秋田と青森にまたがる「白神山地」がユネスコ(国連教育科学文化機関)の世界自然遺産に登録されて30年を迎えた。白神山地が抱える「課題」について考える。

大自然を保護しつつ活用を

ブナの原生林が広がり、多種多様な動植物が共存する「白神山地」。“大自然の博物館”ともいえる白神山地の貴重な自然に触れようと、毎年多くの観光客が足を運ぶ。

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しかし、“生物の多様性を脅かす”という観点から適切な数になるよう管理が必要な「ニホンジカ」が周辺で目撃されるなど、存続に向けた課題がある。

秋田県自然保護課チームリーダー・加藤広基さん:
国立公園であれば保護しながら使っていくところが、自然遺産については「自然環境保全地域」というものが指定されていて、こちらは保護を目的とするもの。そういう関係もあって利用は進んでいないが、岳岱自然観察教育林など核心地域を体感できる環境の場所もあるので、そのようなところを活用しながら利用を進めている

白神山地の遺産地域は、既存の歩道を利用した登山などを除き、入山が制限されている「核心地域」と、気軽に自然を楽しめる「緩衝地域」に分かれているが、入山者数は年々減少している。

ピーク時には年間8万人を超えていたものの、2022年度は約1万6,000人と、5分の1まで落ち込んだ。

より多くの人が白神山地の魅力を感じるには、ガイドや保護活動に取り組む人の存在が欠かせないが、世界が認める豊かな森を守る活動は新たな局面を迎えている。

ガイドの高齢化と後継者不足

秋田県自然保護課チームリーダー・加藤広基さん:
高齢化が進み、人口減少もあり、白神山地を守る人材が不足しつつある

2023年現在、藤里町と八峰町を拠点とするガイド協会があるが、所属するガイドの平均年齢は60~63歳。

白神山地の魅力を伝えたいという思いはあるものの、ガイドの後継者が足りないという切実な問題に悩まされている。

子どものころから自然に親しみを持ってもらう

こうした課題の解決につなげようと県が進めるのが、子どもたちの理解を深めることだ。

秋田県自然保護課チームリーダー・加藤広基さん:
いまの子どもたちは、ゲームなど室内で遊ぶことがほとんどかと思うが、実際に外に出て自然に触れる機会はあまりないだろう。いずれ自然に親しんでもらったことをその記憶を引き継いでもらって、将来は自然を守る人材になってほしいという考えのもとに進めている

秋田県は年に4回、県内の小学生を対象とした「白神体験塾」を開いていて、児童たちが現地で白神山地について楽しく学んでいる。子どもの時から遺産とその魅力に触れることで、将来の担い手確保につなげる考えだ。

また県は、2018年から3年間、入山者を案内できる「あきた白神認定ガイド」を養成し、2023年現在、40~70代の36人が現地で活動している。

白神山地を未来へとつなぐために、まずは私たちが、その価値を理解して伝えていくことが求められているのかもしれない。

秋田県自然保護課チームリーダー・加藤広基さん:
30周年を契機として、あらためて白神山地の価値や魅力をみなさんに伝えるとともに、次世代へ伝える契機にしたいと考えている。秋田の誇る世界遺産である白神山地を将来にわたって引き継いでいけるよう、今後も事業に取り組んでいく

(秋田テレビ)

秋田テレビ
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