季節が秋になって、くしゃみや鼻水が出ると「花粉症かな?風邪かな?」と思う方もいるのではないだろうか。しかし、その症状は“ダニアレルギー”かもしれない。実は、秋こそダニに注意が必要だそうだ。“ダニ博士”の異名を持つ、国立環境研究所の五箇公一さんに話を聞いた。

昔以上に家庭内でダニが増えやすく…

この記事の画像(11枚)

アース製薬の調査によると、アレルギー症状がある人の約6割が、ダニが原因だということだ。五箇先生によると、特に子供で増えているそうだ。

ダニアレルギーの症状は、くしゃみ・鼻水・鼻づまり・ぜんそく・アトピー性皮膚炎。重症になると、アナフィラキシーショックで呼吸困難、死に至るケースもある。どうしてダニアレルギーはこんなに多いのだろうか?

国立環境研究所 五箇公一さん:
基本的にはやっぱりダニに暴露する機会が増えているからです。住宅環境が変わってきていて、昔以上に家庭内でダニが増えやすくなっており、そういったものに人間が接しやすくなっていて、ダニアレルギーの人が増えていると考えられます

ダニアレルギーはどんな人がなりやすいのだろうか。

国立環境研究所 五箇公一さん:
誰がなってもおかしくないです。花粉症など他のアレルギーになっている人がなりやすいわけでもなく、逆にそういったアレルギーがない人でもダニアレルギーになりうるので、十分注意していただきたいです

ほこりはダニの温床 

・掃除機をかけるのは週1回未満。
・ソファには掃除機をかけていない。
・ベッドにぬいぐるみが置いてある。
・シーツの洗濯は週1回未満。
・マットレスは上面だけ掃除機をかける。つまり下の面まで掃除機をかけない。

こうした項目に多くあてはまるほど、ダニアレルギーに警戒が必要だ。

国立環境研究所 五箇公一さん:
そうですね。裏を返せば、こういった項目が当てはまる方は、ダニが増えやすい環境を家の中に作ってしまっているので、ダニアレルギーになりやすいです。これら全ての項目に通じるのは、ホコリをためているということです。ホコリがたまると、その中にダニが発生します。大体1グラムのホコリの中に約3,000匹のダニがいます。 あとは食べかす。例えばお菓子の粉がソファやベッドにあるとダニの餌になってしまいます。

ペットにダニがついてアレルギーになることもあるのだろうか?

国立環境研究所 五箇公一さん:
ペットにつくダニは、いわゆるホコリを食べるダニとは別です、マダニですね。 そういったものが付いてくる恐れがあります。このケースで怖いのは、アレルギーではなく感染症です。ダニが持っているウイルスが人間に感染する恐れがありますので、ペットについてるダニも十分注意してください。 あと、家の中にペットがいると、ペットの食べかすにも注意が必要です。ペットを飼っている方は管理を心がけてください

注意すべきところを伺ってきたが、ほかにも意外な落とし穴があるそうだ。ますは、布団を天日干しすれば大丈夫だと思いこむこと。天日干しだけでは不十分だそうだ。

天日干しだけではなく、布団に乾燥機と掃除機をかけるのが理想だということだ。

国立環境研究所 五箇公一さん:
天日干しも効果がないわけではありませんが、日本は日照量がそれほどありません。昔のように毎日布団を干して手入れすることができればいいですが、1週間に1回とかその程度の天日干しだと、布団の奥のダニは殺しきれません。 なので、布団乾燥機とか熱で布団を乾燥させる機械がありますので、そういったもので布団の奥まで熱をかけることで、ダニの発生を抑えるのが理想です。 なおかつ、布団乾燥機をかけた後に、掃除機で布団の表面に浮いているダニの死体を吸い取ることが大事になります

もう1つの落とし穴は、お好み焼きの粉や小麦粉。キッチンの収納棚に置いていないだろうか?これらは冷蔵庫に入れないとダメだそうだ。

国立環境研究所 五箇公一さん:
お好み焼き粉には、小麦粉に加えてエビのエキスとかアミノ酸とか、そういったものもたくさん入っていてダニの格好の餌です。こういったところにダニが少しでも入ると大発生します。 ただ、ダニは温度が低くなると動きが止まって卵が産めなくなりますから、そういった意味で、冷蔵庫に入れておくとダニの増殖を抑えることができます

お好み焼き粉や小麦粉は冷蔵庫で保管しないとは、布団や小麦粉の注意点は意外な盲点だ。

秋はダニに警戒が必要ということだが、日頃からダニを増やさない地道な対策を心掛けたい。

視聴者からはこんな質問が届いた。

ーーダニはいったいどこから来るのでしょうか?

国立環境研究所 五箇公一さん:
ダニは元々、自然界にたくさんいます。森林などでいろんな有機物を食べて分解する…という生態系の中で大事な役割を果たしています。ただ、家の中に入ってくると、人間の食べカスであったり、ホコリの中の有機物を餌にして増えてしまいます。 特に家の中は、自然界と異なり天敵もいませんし温度が一定なので、ダニにとって非常に住みやすい環境です。自然界にはいないと困るダニですが、その点を除くと害虫になってしまいますね

ーー「ダニシート」を布団の隅に入れています、大丈夫ですか?

国立環境研究所 五箇公一さん:
ダニを寄せ付けない、あるいはダニを寄せ付けてトラップにする…というシートが市販されています。ですが、布団の表面にいるダニを防ぐことはできますが、布団の奥底にいるダニを抑えるのは難しいと思います。 やはり家全体でホコリをためない、ダニが住みにくい環境にする。あとは先ほど言ったように粉物ですね。お好み焼き粉・小麦粉などは冷蔵庫での保管を万全にしておくことが大事だと思います

強烈なかゆみを引き起こす「トコジラミ」

ーー家庭菜園にもダニは来る?防ぐ方法は?

国立環境研究所 五箇公一さん:
ダニは“種”がたくさんいます。家庭菜園に出てくるダニは葉っぱにつく“ハダニ”でいわゆる農業害虫です。そういったものは家庭菜園でもたくさん出てきますので、農業用殺虫剤を使って駆除していく必要があります

続いて、海外に目を転じると、いまフランスでは1cmにも満たない小さな虫が社会問題を引き起こしている。その虫は「トコジラミ」だ。 トコジラミはナンキンムシとして知られ、刺されると赤い斑点になり、痛みやかゆみを伴うほか睡眠障害を引き起こす場合もある。 このトコジラミが、首都パリの地下鉄や高速鉄道などの公共交通機関をはじめ映画館や病院などで確認されていて、南部マルセイユではトコジラミの発生が原因で中学校が閉鎖された。

トコジラミは夏から秋が活動のピークで、日本でも9月以降、SNSで被害の声が相次いでいる。フランスでトコジラミが大きな社会問題になっているということだが、トコジラミはそんなにかゆいのだろうか?

国立環境研究所 五箇公一さん:
私自身は刺された経験はありませんが、刺されたことある人から言わせると、夜も寝れないほどかゆいそうです

日本国内でのトコジラミ被害相談件数は、ご覧のように右肩上がりの傾向だ。

インバウンドの増加とともに、荷物にひっついてトコジラミが移動してくることが心配されている。

国立環境研究所 五箇公一さん:
コロナ前にも、海外から日本に入ってきていることが報告されていました。コロナ禍で海外との交流がなくなり下火になっていましたが、今アフターコロナでたくさんの旅行客の皆さまが日本に来られる中で、再びトコジラミが海外から入ってきているようです。ホテル等の宿泊施設で被害報告される件数が増えてきています

ーー海外に行くときに気を付けないといけないことはありますか?

国立環境研究所 五箇公一さん:
基本的には宿泊施設に入った時に、ベッドの周辺や布団の下、そういったところを見て、トコジラミが隠れていないか、あるいはトコジラミのいた形跡がないかを確認することが大事です

さらに、トコジラミは繁殖力が驚異的だそう。1匹見つけたら 3カ月で4,000匹に増えるそうだ。ベッド回り、カーテン、畳の隙間、押し入れの隅、このような場所で増えるということだ。

殺虫剤が効かない「スーパートコジラミ」も

国立環境研究所 五箇公一さん:
住宅やホテルの部屋の中は彼らにとって居心地がいいです、天敵もいませんから。卵を産み増え続けるので、絶対に家には入れないようにすることが大事です

繁殖力がすごい上に駆除も難しい。先ほどもお伝えしたが、目印はこの“血のフン”と書いて「血フン」というものだ。 さらに、殺虫剤が効かない「スーパートコジラミ」も増えていると…。 万が一、家で見つけたらどうしたらいいのだろうか?

国立環境研究所 五箇公一さん:
スーパートコジラミは、海外で殺虫剤で駆除され続けた結果、殺虫剤に対して抵抗できる種が生まれてしまったんです。日本に侵入してきているということで、従来の殺虫剤処理では追いつかないことから、冷却処理で駆除します。個人の力ではどうにもならないので、できるだけ早く専門業者に相談いただくことが大事です。

ーー犬にもトコジラミはつくのですか?

国立環境研究所 五箇公一さん:
基本的にわれわれ人間を含め、ダニというのは動物の血を吸う虫ですから、そういった意味では犬の血も吸われる恐れがあります。ペットの管理も注意していただきたいです。

(関西テレビ「newsランナー」 2023年10月5日放送)

関西テレビ
関西テレビ

滋賀・京都・大阪・兵庫・奈良・和歌山・徳島の最新ニュース、身近な話題、災害や事故の速報などを発信します。